2027年介護保険制度の改正による影響は?業界の動きを把握しよう

2026.08.25

「2027年の介護保険制度改正で、事業所は一体どうなってしまうのだろうか」
「ケアマネジャーとしての働き方は変わるのだろうか」
「2027年に向けて、今から何を準備すれば良いのかわからない」

このような漠然とした不安を抱える介護事業所の経営者や管理者、現場を支えるケアマネジャーの方は少なくないでしょう。

3年ごとに行われる介護保険制度の改正は、常に私たちの事業や業務に大きな影響を与えてきました。特に次期2027年の改正は、制度の根幹に関わる大改革になるといわれており、その動向から目が離せません。

この記事では、複雑で多岐にわたる2027年介護保険改正の情報を整理し、誰でも理解できるようにわかりやすく解説します。変化の波を正確に捉え、競合に先んじて次の一手を打つために役立ててください。

目次

2027年介護保険改正が大改革といわれる3つの理由

2027年の改正が、単なる3年ごとの見直しではなく、制度の存続そのものが問われる歴史的な転換点とされるのには、避けて通れない3つの大きな理由があります。それは日本の人口構造の変化がもたらす、構造的な課題です。

まずは、なぜ2027年の改正がこれほどまでに重要なのか、その背景を正しく理解しましょう。

1.後期高齢者増加と介護給付費の増大:2025年問題から2040年を見据えて

2027年の介護保険改正の議論の根底には、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となる2025年を経て、高齢者人口が2040年にピークを迎えるという人口動態の大きなうねりがあります。内閣府の「令和5年版高齢社会白書」によると、2025年には75歳以上人口が約2,180万人に達し、その後も増加を続け、日本の人口に占める割合は高まり続けます[1]。

後期高齢者は一般的に介護や医療のニーズが急増する傾向にあり、この人口動態の変化は、介護サービスの利用者を大幅に増加させ、結果として介護サービス費用である介護給付費の増大に直結します。

厚生労働省の資料によると、第8期介護保険事業計画期間(2021~2023年度)においても介護費用は増加を続けており、今後、高齢者人口がピークを迎える2040年に向けて、介護給付費はさらに増大していくことが確実視されています。

このままでは、必要な人に必要なサービスを提供し続けるという制度の基本理念そのものが揺らぎかねず、給付の重点化や効率化が不可避の課題となっています。

年代高齢化の状況予測予測される影響
2025年団塊の世代(約800万人)がすべて後期高齢者(75歳以上)に到達する医療・介護ニーズが急増し、社会保障給付費が大幅に増加する
2040年高齢者人口が約3,928万人でピークを迎える介護職員の不足がさらに深刻化し、現役世代の負担が限界に達する
2050年65歳以上の割合が37.7%に達し、国民の約2.6人に1人が高齢者となる制度そのものの維持が困難になる可能性も指摘されている
出典:内閣府「令和5年版高齢社会白書」[1]、厚生労働省「第8期計画期間における介護保険の第1号保険料について」[2] をもとに作成

2.深刻化する介護人材の不足

介護サービスの需要が増え続ける一方で、サービスの担い手である介護人材は慢性的に不足しています。少子化により生産年齢人口が減少しているため、介護業界への入職者は増加していません。需要と供給のアンバランスは年々深刻化しており、サービスの質を維持することさえ難しくなっています。

特に、経験豊富なベテラン介護職員の退職や、体力的な負担が大きい夜勤を敬遠する若年層の増加が人材不足に拍車をかけています。待遇改善や労働環境の見直しが急務であるものの、介護報酬の制約から十分な対策を講じることが難しいのが現状です。

結果として、既存の介護職員への負担が増加し、さらなる離職を招くという悪循環に陥っています。外国人介護人材の活用も進められていますが、言語や文化の違いから十分な戦力となるには時間がかかるでしょう。

3.現役世代の負担増と財源問題

介護保険制度の財源は、私たちが納める保険料と税金(公費)で成り立っています。高齢者が増え、現役世代が減るということは、一人一人の現役世代が支える高齢者の数が増えることを意味します。

このままでは保険料の負担は際限なく増え続け、制度そのものが成り立たなくなる恐れもあるでしょう。このような背景から、2027年の改正では給付と負担のバランスをどう取るか、極めて難しい舵取りが迫られています。

2027年介護保険改正の重要論点と想定される影響

2027年の改正に向けて、すでに議論が始まっています。

論点は多岐にわたりますが、ここでは特に介護事業者やケアマネジャーの経営・業務に直接的な影響を与える可能性が高い3つのテーマに絞って解説します。いずれも自分ごととして捉えるべき重要な内容です。

論点1.給付と負担の見直し:利用者負担増による事業収益への影響

事業収益に直接的な影響を及ぼすのが、給付と負担の見直しに関する議論です。特に以下の4点は、2024年度改正で見送られた経緯もあり、2027年度に向けて議論が本格化すると見られています。

論点主な内容事業者・ケアマネへの想定さ2026年8月現在
2割負担の対象拡大現在、一定以上の所得がある利用者の自己負担は2割。この対象範囲を拡大する案利用者の経済的負担増により、サービスの利用控えが発生し、事業所の減収につながるリスク議論中
(結論2026年年末予定)
ケアマネジメントの利用者負担導入現在無料であるケアプラン作成に、自己負担(有料化)を導入する案利用控えの懸念。費用徴収や説明といった新たな事務負担が発生し、ケアマネの業務がさらに煩雑化する可能性議論中
居宅介護支援(一般在宅)の原則無料維持」と「特定施設・サ高住等の登録型施設における1割負担の導入を検討
要介護1・2の総合事業への移行軽度者向けの訪問介護(生活援助)や通所介護を、市町村の地域支援事業へ移行する案(保険外し)報酬単価の低下や、市町村ごとのサービス内容の違いによる混乱。利用控えによる減収リスク議論中
多床室の室料負担介護老人保健施設や介護医療院などの多床室(相部屋)に、新たに室料負担を導入利用者の負担増。在宅との公平性を図る名目だが、施設の利用控えにつながる可能性も段階的に導入済
介護老人保健施設等の特定類型で先行導入済、全類への適用は議論中

上記の見直しは、制度の持続可能性を確保するという名目ですが、利用者の負担増につながるものがほとんどです。利用者負担が増えれば利用控えが起こり、事業所の稼働率低下、つまり減収に直結します。

特にケアマネジメントの有料化は、介護保険の入り口を狭めることになりかねず、結果として利用者の重度化を招くという本末転倒な事態も懸念されています。事業者としては、これらの動向が事業所の収益にどの程度影響を与えるか、今のうちからシミュレーションしておく必要があるでしょう。

論点2.処遇改善と生産性向上

事業運営の根幹である人と効率に関しても、大きな変革が求められます。経営者は、人件費の増加と業務効率化のための投資という、難しい判断を迫られることになります。これにより以下の点についてフォーカスを当て施策が検討されています。

加算の一本化と透明性の確保

2024年度改定で、処遇改善関連の各種加算が「介護職員等処遇改善加算」(新処遇改善加算)へ一本化されました。2027年に向けては、事業所内での透明性の高い賃金体系(キャリアパス)の構築と、職員への確実な還元が引き続き評価のポイントとなります。

他産業との賃金格差と自発的給与引き上げ

他産業の賃上げや物価高騰に対し、公的介護報酬による補填のみでは限界があります。そのため、業務効率化によって自発的な賃上げ原資(自主財源)を創出できる経営構造への転換が強く求められています。

「生産性向上推進体制加算」の普及と基準合理化

生産性向上推進体制加算をはじめとして見守りセンサー・インカム・介護記録ソフトなどICTの導入を促す加算(科学的介護推進体制加算(LIFE加算)、訪問看護医療DX情報活用加算など)が定着しつつあり、テクノロジー活用を要件とした夜間等の人員配置基準の合理化(緩和)が加速しています。

【関連記事】生産性向上推進体制加算とは?要件・単位数から事例、申請方法まで完全ガイド

論点3.地域包括ケアシステムの深化:医療連携と情報基盤の構築

単身高齢者の急増や認知症高齢者の増加が予測される「2040年問題」を見据え、地域包括ケアシステムのさらなる深化が進められています。

2027年改正では、医療・介護のシームレスな連携強化が重要テーマであり、施設・在宅問わず医療ニーズが高い高齢者を支えるための「協力医療機関」との連携体制や、訪問看護・在宅医療の拡充が推進されます。

また、「認知症基本法」に基づき、認知症の人が地域で自分らしく暮らし続けられるための共生社会づくりやバリアフリー化の取り組みも加速しています。

さらに、身寄りのない単身高齢者に対する身元保証や権利擁護支援、地域共生社会の実現に向けた多機関協働の包括的支援体制の構築など、自治体や事業所に求められる役割は多角化しており、地域インフラとしての介護機能の再編が議論されています。

論点4.ケアマネジャーの資格制度の変更:人材確保

2027年度の介護保険制度改正に向け、厚生労働省の審議会で示されたケアマネジャー(介護支援専門員)の資格制度の見直しは、深刻な人材不足の解消と現場の負担軽減を目的としています。

主な変更点として、まず5年ごとの研修受講が無ければ資格が失効する現行の「資格更新制の廃止」が挙げられます。取得後は生涯有効とし、定期研修もオンライン化や時間短縮で受講負担を抑えます。

また、受験に必要な実務経験年数を現行の5年から3年に短縮する「受験資格の緩和」を検討し、対象資格の拡充により新規参入を促進します。併せて主任ケアマネジャーの役割や評価・位置づけの明確化も進められます。離職の要因となっていた更新負担を解消し、参入のハードルを下げることで、人材の確保と定着を図る狙いがあります。

【関連記事】ケアマネジャー更新制度廃止の最新情報と実務への影響

論点5.特定地域サービスの創設:多様なサービス形態の模索

2027年4月施行予定の介護保険制度改正に向け、中山間地域や人口減少地域での介護体制を維持する「特定地域サービス」の創設が進められています。

現状、利用者の点在や深刻な人材不足から、全国一律の基準では事業撤退やサービス空白化のリスクが高まっており、地域特性に応じた持続可能な仕組みづくりが急務となっています。

主な方針として、75歳以上の人口密度が低い地域などを都道府県が指定し、管理者や専門職の常勤・専従要件、夜勤要件などを緩和する方向です。

また、経営の安定化を図るため従来の出来高払いに加え月単位の包括評価(定額払い)の導入や、市町村の直接関与を含む連携体制の構築も検討されています。全国一律の枠組みから地域実情に応じた柔軟な運用へと転換し、過疎地などでも必要な介護基盤を維持していく考えです。

2027年度の介護保険改正までのスケジュール

2027年4月の介護保険改正・報酬改定までの流れは以下の4ステップです。

  1. 制度改正の検討・法案成立 審議会で制度の骨組み(自己負担割合など)を議論し、法改正案を国会で成立させます。
  2. 介護報酬・改定率の決定(〜2026年末) サービスごとの詳細な基準や単位数を議論し、年末に改定率(引き上げ・引き下げ)を決定します。
  3. 詳細提示と現場の準備(2027年1月〜3月) 厚労省が詳細なルールを提示し、自治体(事業計画の確定)や事業者(システム改修・ケアプラン見直し)が実務準備を進めます。
  4. 施行(2027年4月1日) 新制度および新介護報酬が一斉にスタートします。

詳細は下記となります。

時期区分主な内容・手続き
2025年〜2026年中盤制度改正(法律)社会保障審議会・介護保険部会での論点審議と意見取りまとめ
厚生労働省による介護保険法改正案の作成、国会提出・成立
2026年春〜夏報酬改定(第1ラウンド)社会保障審議会・介護給付費分科会での主な課題整理
関係団体・事業者へのヒアリング実施
2026年秋〜冬報酬改定(第2ラウンド)サービスごとの具体的な単位数、加算要件、運営基準の検討
2026年12月改定率決定政府の予算編成プロセスに伴う介護報酬改定率の決定
2027年1月〜2月答申・告示介護給付費分科会からの審議結果答申
新たな単位数や算定要件を定める省令・告示・解釈通知の発出
2027年1月〜3月自治体・現場準備自治体:第10期介護保険事業計画の策定、条例制定・見直し、新保険料の決定
事業者:介護給付費請求システムの更新、ケアプランの見直し、説明会
2027年4月1日施行改正介護保険法および新介護報酬の施行(第10期介護保険事業計画の開始)

激動の時代を勝ち抜く|事業者が今から始めるべき3つの戦略

2027年改正の動向を見ていると、「具体的に何をすれば良いのか」という疑問が湧いてくるでしょう。制度改正という大きな外部環境の変化に対して、事業所の経営基盤を強化するための具体的なアクションプランが必要です。

ここでは、激動の時代を勝ち抜き、持続可能な事業運営を実現するために、今から着手すべき3つの戦略を紹介します。

戦略1.経営の見える化とデータに基づく意思決定

制度改正による収支への影響を正確に予測し、適切な経営判断を下すためには、事業所の経営状況を客観的なデータで把握することが不可欠です。これまでどんぶり勘定や長年の勘に頼ってきた経営から脱却し、データに基づいた意思決定へとシフトする必要があります。

具体的には、以下の経営指標(KPI)を常に把握し、分析できる体制を構築しましょう。

KPIの例重要性
サービス別稼働率利用控えなどの影響をいち早く察知し、対策を講じる
人件費率処遇改善によるコスト増を正確に把握し、適正な人員配置を検討する
利用者一人あたりの収益・費用どのサービスが収益に貢献しているか、またはコストを圧迫しているかを分析する
新規利用者獲得コスト効率的な営業・マーケティング戦略を立てる

上記のデータを正確に把握することで、「2割負担の対象者が増えた場合、収益は〇〇円減少する可能性がある」といった具体的なシミュレーションが実現します。まずは、事業所の足元を固めて見える化することで、より精度の高い予測や対策が可能になります。

戦略2.生産性向上とケアの質を両立するDX推進

人材不足とコスト増という二重の課題を克服する鍵は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進にあります。DXは単なる業務効率化に留まらず、職員の負担を軽減しながら本来の専門的なケアに集中する時間を生み出し、サービスの質の向上と利用者の安全確保に直結します。

さらに、DX推進によりデータに基づいた意思決定を実施し、より効果的なサービス提供を実現することが可能です。例えば、利用者の状態をリアルタイムで把握して早期の対応を促すことで、リスクを未然に防げます。

また、蓄積されたデータを分析するとサービスの改善点を発見でき、個々の利用者に最適化されたケアプランを作成することも可能です。2027年の大改革に向けてDXを推進することが、持続可能な経営基盤を築く上で確実な投資となるでしょう。

戦略3.人材確保と定着に向けた選ばれる職場作り

今後、介護業界における競争は利用者の獲得競争から人材の獲得競争へと、さらにシフトします。介護職員から選ばれる事業所になるためには、賃金といった処遇改善だけでは不十分です。

働きがいを感じられる職場環境や、将来のキャリアが見通せる仕組み作りといった、総合的な人事戦略が求められます。

  • 魅力的な職場環境の構築
    • 職員同士が互いを尊重し、感謝を伝え合う文化を築く
    • 経営理念やビジョンを共有し、仕事の社会的意義を実感できる機会を作る
  • キャリアパスの明確化
    • 資格取得支援や研修制度を充実させ、職員のスキルアップを後押しする
    • 経験や能力に応じた役職や役割を用意し、目標を持って働き続けられる環境を整える
  • ICT化による業務負担の軽減
    • DXの推進によって、職員の身体的・精神的負担を軽減する
    • 記録や報告書の作成といった間接業務の時間を削減し、利用者と向き合う直接的なケアの時間を増やすことは、職員の満足度向上に直結する

給与だけでなく「この職場で働き続けたい」と思えるような付加価値を提供できるかどうかが、人材定着の鍵を握ります。

斉藤 圭一氏
斉藤 圭一氏

2027年(令和9年度)の介護保険制度改正・報酬改定は、単なる3年ごとの見直しにとどまらず、制度の持続可能性と事業所経営のあり方を根本から問う大きな節目となります。
本記事は、団塊の世代がすべて85歳以上に達し始める「2040年問題」を見据えた構造課題を背景に、利用者負担の見直し、処遇改善とDX推進、地域包括ケアの深化、そしてケアマネジャーの資格制度変更まで、経営者や実務者が押さえるべき論点を包括的かつ分かりやすく整理しています。
特に、制度改正を単なる「負担増や減収のリスク」として恐れるのではなく、「経営データの見える化」「ICT・LIFEを活用したDX推進」「選ばれる職場づくり」という3つの具体的戦略へ落とし込み、組織変革の契機と捉える視点は極めて実践的です。
年末に向けた審議会の取りまとめを前に、自事業所の経営基盤を再点検し、次代を勝ち抜くためのロードマップを描く上で、経営層・ケアマネジャー双方に強く一読をお勧めしたいガイドラインです。

2027年の介護保険改正を乗り越えるための準備をしよう

2027年の介護保険制度改正は、介護事業者にとって多くの課題を伴う可能性があります。しかし、これを単なる危機と捉えるか、事業所の経営やサービス提供体制を見直し、より強く質の高い組織へと生まれ変わるための変革の好機と捉えるかで、未来は大きく変わります。

重要なのは、変化の波にただ流されるのではなく、その先を見据えて能動的に情報を収集し、少しでも早く対策に着手することです。今回ご紹介した3つの戦略である「経営の見える化」「DX推進」「選ばれる職場作り」は、いずれも一朝一夕に実現できるものではありません。

今から計画的に準備を進めることが、3年後の未来を左右します。この激動の時代を乗り越え、地域に必要とされ続ける事業所であり続けるために、今日からできる第一歩を踏み出しましょう。

介護保険改正2027に関するよくある質問(FAQ)

2027年の介護保険制度改正に関して、事業者やケアマネジャーの皆様から寄せられる可能性のある主要な疑問について、簡潔にお答えします。

2027年の介護保険改正で最も影響を受けるのは誰ですか?

2027年の改正は、制度に関わるすべての立場の人に大きな影響を及ぼしますが、影響の種類は異なります。事業者にとっては、利用者負担増による減収リスクや、介護報酬改定、人材確保・DX化への対応など、経営戦略の根本的な見直しを迫られます。ケアマネジャーは、居宅介護支援の利用者負担が導入されれば、業務の進め方や利用者との関係性が大きく変わる可能性があります。そして利用者は、自己負担割合の拡大や保険料の上昇など、経済的な負担が増加する可能性があります。

ケアマネジメントの利用者負担は本当に導入されますか?

居宅介護支援(ケアマネジメント)への利用者負担導入は、2024年度改正で見送られましたが、2027年改正に向けて再び最重要論点の一つとなっています。厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会では、制度の持続可能性の観点から賛成意見がある一方、利用控えによる重度化の懸念などから反対意見も根強く、結論は出ていません。導入される場合、利用者への説明や費用徴収といった新たな事務負担が発生し、ケアマネジャーの業務に大きな影響が出ることが予想されます。

小規模事業所でもDX化は必要ですか?

事業所の規模に関わらず、DX化はもはや必須の取り組みです。人材不足が深刻化する中、限られた人員で質の高いサービスを提供し続けるためには、業務効率化が不可欠だからです。大規模なシステム投資が難しい小規模事業所でも、導入しやすいクラウド型の介護ソフトや、スマートフォンアプリを活用した情報共有ツールなど、低コストで始められる選択肢は増えています。まずは記録業務の電子化など、着手しやすい部分から始めることをお勧めします。

2027年改正に向けて今からできる具体的な対策は何ですか?

今すぐ着手すべき対策は3つあります。第一に、介護ソフトなどを活用して事業所の経営状況をデータで正確に把握し、「見える化」することです。第二に、科学的介護(LIFE)への対応やICT機器の導入を計画的に進め、生産性向上に着手すること。第三に、賃金だけでなく、働きがいやキャリアアップ支援を含めた総合的な人事戦略で、人材の確保・定着を図ることです。これらに並行して、厚生労働省などの公的な情報源から最新の議論の動向を収集し続けることが重要です。2027年の改正内容は、2026年中に議論が大詰めを迎えると予測されます。

『科学的介護(LIFE)』の活用はどのように進めれば良いですか?

LIFEの活用は、まず、厚生労働省のWebサイトから利用申請を行うことから始まります。その後、利用者の状態やケア内容に関する定められた項目について、介護ソフト等を用いてデータを入力・提出します。提出したデータは全国のデータと比較・分析され、事業所にフィードバックとして提供されます。このフィードバック情報を活用し、ケアプランやサービス内容の見直し、職員研修などに役立てることで、ケアの質の向上(PDCAサイクル)につなげることが活用の目的です。LIFE関連の加算を算定するためにも、計画的なデータ提出と活用体制の構築が重要になります。

監修:斉藤 圭一

主任介護支援専門員、MBA(経営学修士)

神奈川県藤沢市出身。1988年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、第一生命保険相互会社(現・第一生命保険株式会社)に入社。その後、1999年に在宅介護業界大手の株式会社やさしい手へ転職。2007年には立教大学大学院(MBA)を卒業。 以降、高齢者や障がい者向けのさまざまなサービスの立ち上げや運営に携わる。具体的には、訪問介護・居宅介護支援・通所介護・訪問入浴などの在宅サービスや、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅といった居住系サービス、さらには障がい者向けの生活介護・居宅介護・入所施設の運営を手がける。 また、本社事業部長、有料老人ホーム支配人、介護事業本部長、障害サービス事業部長、経営企画部長など、経営やマネジメントの要職を歴任。現在は、株式会社スターフィッシュを起業し、介護・福祉分野の専門家として活動する傍ら、雑誌や書籍の執筆、講演会なども多数行っている。

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