ケアプランの注意点とは?作成時や運用時に押さえておくべきポイントを徹底解説
2025.05.25

ケアプランは、利用者の生活を大きく左右する重要な書類です。しかし、ケアプランを作成する際に利用者の意向や組織内での共有を軽視すると、利用者満足度を下げてしまう可能性があります。
この記事では、ケアプラン作成時・運用時に押さえておくべき注意点を徹底的に解説します。ケアプランの目的や種類から、具体的な作成手順まであわせて解説します。
この記事を読めば、ケアプラン作成の質が向上し、利用者からの信頼も高められます。ケアプラン作成の注意点を押さえて、利用者満足度を高めましょう。
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目次
ケアプランとは

ケアプランとは、利用者が自立した日常生活を送れるよう、介護サービスを利用するための計画書です。介護保険サービスを提供するうえで、ケアプランは指針のような役割を果たします。
ケアプランは、利用者の心身における状態や生活環境・希望などを考慮した計画を立て、最適なサービスを組み合わせることで、その人らしい生活の実現を支援します。
ケアプランの目的
ケアプランの主な目的は以下の3点です。
自立支援 | 利用者が持っている能力を最大限に活かし、できる限り自立した生活を送れるように支援する |
QOLの向上 | 利用者が自分らしく、満足のいく生活を送れるように、心身の健康維持や社会参加を促進する |
適切なサービス利用 | 利用者の状況に合わせて、必要な介護サービスを適切に利用できるように調整する |
ケアプランは、上記の目的を達成するために、利用者やご家族との面談を通して、課題を明確にし、具体的な目標を設定することによって、目標を達成するためのサービス内容を記載します。
ケアプランの種類
ケアプランの主な種類と特徴は以下のとおりです。
種類 | 作成場所 | 対象者 | 特徴 |
居宅サービス計画 | 居宅介護支援事業所 | 在宅で介護サービスを利用する方 | 訪問介護、通所介護、福祉用具貸与など、在宅サービスを中心に利用する方のケアプラン |
施設サービス計画 | 介護保険施設(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院) | 施設に入所・入院して介護サービスを利用する方 | 施設での生活全般を支援するためのケアプラン |
介護予防サービス計画 | 地域包括支援センター | 要支援1・2の認定を受けた方 | 介護状態にならないように、介護予防を目的としたケアプラン |
ケアプラン作成の流れ

ケアプランを作成する流れは、以下のとおりです。
- インテーク
- アセスメント
- ケアプラン原案作成
- 利用者・家族に確認
- サービス担当者会議
- ケアプラン原案修正・再提出
- ケアプラン交付
- モニタリング
ケアプランがどのように作成されていくのか、その流れを段階的に見ていきましょう。
インテーク
インテークは、ケアプラン作成の第一歩です。利用者やご家族からの相談を受け、どのような支援が必要なのか、初期的な情報を収集します。
インテークの具体的な流れは、以下のとおりです。
- 相談受付
- 基本情報収集
- 相談内容の把握
- 今後の流れの説明
この段階で、利用者の抱える課題やニーズ、生活状況などを把握することが重要です。
アセスメント
アセスメントでは、インテークで得た情報をもとに、利用者の心身の状態や生活環境を詳しく分析します。利用者の強みや弱み、利用できる社会資源などを明確にすることで、より適切なケアプランの作成につながります。
アセスメントで評価する項目は、主に次のとおりです。
評価項目 | 詳細 |
心身機能 | 身体的な機能(運動能力、感覚機能など)や精神的な機能(認知機能、感情など)を評価 |
活動 | 日常生活における活動(食事、入浴、着替え、移動など)の状況を評価 |
参加 | 社会的な活動(仕事、趣味、地域活動など)への参加状況を評価 |
環境因子 | 住居環境、家族構成、経済状況、利用できる社会資源などを評価 |
ケアプラン原案作成
アセスメントの結果をふまえ、利用者のニーズに基づいたケアプランの原案を作成します。具体的なサービス内容・利用頻度・目標などを記載し、利用者がどのような生活を送りたいのか、目標達成のためにどのような支援が必要なのかを明確にします。
短期目標と長期目標を設定し、段階的に目標達成を目指す計画を立てましょう。
利用者・家族に確認
ケアプラン原案が作成されたら、まずは利用者ご本人とそのご家族に内容を丁寧に説明し、意向を確認します。この段階は、ケアプランが利用者の真のニーズや希望に沿ったものであるか、またご家族の状況や考えも反映されているかを確認するための重要なプロセスです。
サービス担当者会議
ケアプラン原案について、利用者・ご家族・サービス提供事業者・ケアマネジャーなどが集まり、サービス担当者会議を開催します。それぞれの専門的な視点から意見を出し合い、ケアプラン原案の問題点や改善点について検討しましょう。
利用者の意向を尊重しながら、最適なケアプランを作成するために、活発な意見交換を行うことが大切です。
ケアプラン原案修正・再提出
サービス担当者会議での意見をふまえ、ケアプラン原案を修正します。修正したケアプラン原案を再度サービス担当者会議に提出し、承認を得ましょう。
利用者・ご家族・サービス提供事業者など担当者会議に参加した全員が、納得できるケアプランを作成することが重要であり、必要に応じて再度修正してください。
ケアプラン交付
最終的なケアプランが完成したら、利用者とご家族に交付します。ケアプランの内容について詳しく説明し、同意を得てください。
利用者が安心してサービスを利用できるよう、丁寧な説明を心がけることが大切です。また、ケアプランの内容だけでなく、サービス利用に関する疑問や不安にも丁寧に答えましょう。
モニタリング
ケアプラン交付後も定期的にモニタリングを行い、ケアプランが適切に実施されているか、利用者の状況に変化はないかなどを確認します。下記の項目をモニタリングして、必要に応じてケアプランを見直しましょう。
- サービス利用状況
- 利用者の状況
- 目標達成状況
- 利用者・ご家族の満足度
利用者の状況は常に変化するため、柔軟に対応することが大切です。
ケアプランの誤った作り方

ケアプランは、利用者の自立支援を目的とした個別性の高い計画です。しかし、作成時に注意を怠ると、利用者の意向に沿わないプランになってしまいます。
ここでは、ケアプラン作成時に特に注意すべき4つのポイントを解説します。
利用者の意向を尊重しない
ケアプランは、利用者本人の「こうありたい」という希望を尊重し、その人らしい生活を送れるように作成しましょう。介護者は、専門的な知識や経験に基づいて助言を行いますが、利用者の意向をできる限り尊重するべきです。
【事例】
- ありがちなケース:家族が「危ないから」と、利用者の趣味である庭いじりを一律禁止するケアプランを希望。
- 注意点:庭いじりが利用者にとって生きがいである場合、安易に禁止するのではなく、安全に庭いじりを楽しめるような対策(手すりの設置、見守りなど)を検討する。
- 改善策:利用者本人とよく話し合い、庭いじりへの思いや、不安な点をヒアリングする。安全対策を講じたうえで庭いじりを継続できるプランを作成する。
利用者本人の意向を丁寧に聞き取り、可能な限り希望を叶えるプランを作成することが重要です。
サービス担当者会議を軽視する
サービス担当者会議は、ケアプランの原案について、利用者・家族・各サービスの担当者が意見交換を行う場です。この会議を軽視し、ケアマネジャーだけでプランを作成してしまうと、多角的な視点が欠け、利用者にとって最適なプランにならない可能性があります。
【事例】
- ありがちなケース:ケアマネジャーが多忙のため、サービス担当者会議を書面のみで済ませてしまう。
- 注意点:書面だけでは、各担当者の細かなニュアンスや、利用者・家族の表情を読み取ることが難しい。
- 改善策:可能な限り対面での会議を実施し、各担当者の専門的な視点からの意見を丁寧に聞き取る。会議で出た意見を踏まえ、プランを修正・改善する。
費用負担の説明不足
ケアプランに基づいてサービスを利用した場合の費用負担について、利用者や家族に十分な説明を行うことが大切です。説明が不足していると、後々トラブルに発展する可能性があるので注意しましょう。
【事例】
- ありがちなケース:ケアプラン作成時に、大まかな費用しか説明せず、実際にサービスを利用した際に予想以上の自己負担が発生してしまう。
- 注意点:利用者は、費用の詳細がわからず、不信感を抱いてしまう可能性がある。
- 改善策:ケアプラン作成時に、各サービスの費用、自己負担額、利用回数などを具体的に説明する。高額なサービスを利用する場合には、事前に同意を得る。
費用負担については、書面を用いてわかりやすく説明し、利用者・家族が納得した上でサービスを開始しましょう。
作成したケアプランを見直さない
ケアプランは、一度作成したら終わりではありません。利用者の状況は常に変化するため、定期的にモニタリングを行い、必要に応じてプランを見直す必要があります。
【事例】
- ありがちなケース:ケアプランを作成した後、定期的なモニタリングを行わず、プランが利用者の現状に合わなくなってしまう。
- 注意点:利用者のニーズに合わないプランでは、十分な効果が得られない。
- 改善策:定期的に利用者宅を訪問し、心身の状態、生活状況、サービス利用状況などを確認する。必要に応じて、サービス内容の変更や、目標の見直しを行う。
ケアプランは、利用者の状況に合わせて常に最適な状態に保つことが重要です。モニタリングを徹底し、柔軟にプランを修正していきましょう。
ケアプランの誤った運用方法

ケアプランは作成して終わりではありません。利用者の状況は常に変化するため、適切な運用が必要不可欠です。ここでは、ケアプラン運用時に特に注意すべき点について解説します。
モニタリングを軽視する
モニタリングを軽視すると、以下のような問題が生じる可能性があります。
- 利用者のニーズの変化に気づけない
- 提供されているサービスが適切かどうか判断できない
- ケアプランの見直しが遅れる
モニタリングは、少なくとも月に一度は実施し、利用者やご家族との面談・サービス提供者からの情報収集などを行いましょう。
自己負担額が高すぎる
介護保険サービスを利用する際には、原則として1割(所得によって2~3割)の自己負担が発生します。しかし、サービスを多く利用したり、高額なサービスを選択したりすると、自己負担額が高額になることがあります。
自己負担額が高すぎると、利用者やご家族の経済的な負担が大きくなり、サービス利用をためらってしまう可能性があります。
ケアプランを作成する際には、利用者の経済状況を考慮し、無理のない範囲でサービスを選択することが大切です。また、高額介護サービス費などの制度を活用することで、自己負担額を軽減できます。
場合によっては、介護保険サービス以外の選択肢(地域のボランティア団体やNPOなど)も検討し、総合的な支援体制を構築しましょう。
利用者や家族の不満を放置する
ケアプランに基づいてサービスを提供している中で、利用者やご家族から不満が出るケースがあります。例えば、「サービス内容が希望と違う」「ヘルパーの対応が悪い」「ケアマネジャーとのコミュニケーションが不足している」など、さまざまな不満が考えられます。
これらの不満を放置すると、利用者やご家族の満足度が低下し、信頼関係が損なわれてしまう可能性があります。不満が出た場合には、まずはしっかりと話を聞き、原因を究明することが大切です。
原因を追究したうえで、サービス内容の変更や担当者の交代・ケアマネジメント方法の見直しなど、具体的な改善策を実行しましょう。
利用者やご家族からのフィードバックは、ケアプランの質を向上させるための貴重な情報源なので、積極的に意見を収集し改善につなげる姿勢が大切です。
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ケアプランに関わる役割

ケアプランは、利用者を中心に、さまざまな人が関わって作成・運用されます。それぞれの役割を理解することで、より質の高いケアプラン作成、そして利用者の満足度向上につながります。
ケアマネジャーの役割
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、ケアプラン作成の中心的な役割を担います。主な役割は以下のとおりです。
- 利用者の状況把握(アセスメント)
- ケアプラン原案の作成
- サービス担当者会議の開催
- ケアプランの修正・確定
- ケアプランの交付
- モニタリングの実施
- 関係機関との連携
ケアマネジャーは、利用者のニーズを的確に捉え、さまざまなサービスを組み合わせて、自立した生活を支援しています。
本人・家族の役割
ケアプランは、利用者ご本人の意思を尊重して作成されるべきものです。ご本人やご家族も、ケアプラン作成に積極的に参加し、意見を伝えることが大切です。ご本人やご家族は、ケアプランに下記のような役割で関わっています。
- 希望や意向の伝達
- 情報提供
- サービス担当者会議への参加
- ケアプラン内容の確認
- ケアプランの実施状況の確認
- 意見や要望の伝達
ご本人やご家族が積極的にケアプラン作成に関わることで、よりご本人のニーズに合った、満足度の高いケアプランを作成できます。
ケアプランの確認ポイント

ケアプランを作成し運用するうえで、下記のポイントを確認しておくことが大切です。
- サービス内容
- 費用負担
- 目標設定
- 緊急連絡先
それぞれのポイントを確認して、適切にケアプランを運用しましょう。
サービス内容
ケアプランに記載されているサービス内容が、利用者のニーズに合っているかを確認しましょう。具体的には、以下の点を確認してください。
- サービスの種類
- サービスの時間
- サービスを提供する事業
ニーズに合っていない場合は、サービス内容の変更を検討しましょう。
費用負担
介護保険サービスは、原則として費用の1割から3割を利用者が負担します。ケアプランに記載されている費用負担額が、利用者の予算に合っているか確認しましょう。
具体的には、以下の点に注意して確認します。
- サービスごとの費用
- 自己負担割合
- 1カ月あたりの合計費用
高額介護サービス費制度などの助成制度や減免制度を利用することで、自己負担額を一定額抑えられる点も説明しておくと親切です。
目標設定
目標設定は、ケアプランの方向性を定めるうえで非常に重要な項目です。利用者ご自身が、目標設定に積極的に参加し、達成したいことを明確化しましょう。
具体的には、以下の点に注意して確認します。
- 目標の具体性
- 目標の実現可能性
- 目標達成のための具体的な方法
目標は、定期的に見直しを行い、必要に応じて修正することが大切です。
緊急連絡先
緊急時(体調不良、転倒、災害など)に連絡すべき連絡先が、ケアプランに記載されているかを確認しましょう。具体的には、以下の連絡先が記載されているかを確認してください。
- ケアマネジャーの連絡先
- 主治医の連絡先
- 家族の連絡先
- 緊急連絡先
連絡先に変更があった場合は、速やかにケアプランを修正しましょう。

ケアプランは、利用者の人生を支える重要な書類であり、その作成・運用には細心の注意が必要です。まず、最も重要なのは利用者様ご本人の意向と「こうありたい」という希望をできる限り尊重したプランを目指すことです。多忙でもまず利用者家族に確認し、担当者会議でも可能な限り多職種の意見を丁寧に聞き取ることです。サービス利用の費用負担については、各サービスの費用や自己負担額を具体的に十分に説明し、利用者の納得を得てから開始することがトラブル防止に繋がります。そして、ケアプランは作成したら終わりではなく、定期的なモニタリングを通じて状況変化を捉え、必要に応じて柔軟に見直すことが不可欠です。不満対応も重要です。これらの注意点を徹底することが、質の高いサービス提供と利用者の満足度アップと信頼関係の向上に繋がります。
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ケアプラン作成の注意点を押さえて利用者満足度を高めよう

ケアプラン作成における注意点を理解しておけば、質の高いケアサービスを提供し利用者満足度の向上につながります。利用者の意向や家族へ配慮したケアプランを作成・運用することが大切です。
またサービス担当者会議で、利用者やご家族に丁寧な説明を実施し、提供するケア内容について理解を得ることも重要です。利用者やご家族が納得できるサービスを提供し、モニタリングに基づいてケアプランを見直すことが、より優れたケアサービスの提供へとつながります。
ケアプランの作成・運用時の注意点を押さえて、利用者とご家族が安心してサービスを利用できる信頼関係を構築してください。

監修:梅沢 佳裕
人材開発アドバイザー
介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。