【介護ソフト向け】ICT補助金の概要まとめ|申請の流れ・IT補助金も解説

2024.04.08

介護請求業務の効率化や業務負担の軽減を目的に、ICTの導入をお考えの方も多いでしょう。
ICT化の代表的な例が介護ソフトですが、導入コストが大きな懸念点となっています。

介護施設のICT化では「ICT補助金」と「IT導入補助金」を受けられる可能性があります。
将来的にICT化をお考えであれば、導入費用を抑えられるよう、補助金を活用しましょう。

本記事では、令和5年度ICT導入支援事業の概要を解説します。
後半では、申請の手順も紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

介護ソフトのICT補助金とは?

ICT補助金とは、介護のサービス向上や介護現場の生産性向上を目的として、介護事業所のICT化にかかる費用を補助するためのものです。
補助対象は、介護ソフトの導入やタブレット端末・スマートフォンの購入、Wi-FI環境の整備にかかるネットワーク構築経費などが対象です。

また、介護施設のICT化を進めることで、業務の効率化を目指せるほか、ペーパーレス化やスムーズな情報共有が可能になります。
さらにはスタッフの働きやすさや、施設の運営にもプラスに作用するでしょう。

ICT補助金は「地域医療介護総合確保基金」として各都道府県ごとに設置された財源を活用し、交付に充てています。
交付を受けるには介護事業所からの申請が必要で、自治体ごとに受け付けされています。

【令和5年度】ICT導入支援事業の概要

令和5年度は、令和4年度よりも介護分野へのICT導入支援事業が拡充されました。
これは、令和2年度に稼働が開始されたLIFEの普及や、令和7年度までの構築をめざす地域包括ケアシステムへ向けた取り組みを推進する動きと見られます。

ICT導入支援事業の実施状況は、以下のとおりです。

実績令和1年令和2年令和3年
実施都道府県数154047
補助事業所数19525605371
引用:「令和6年度概算要求の概要(老健局)の参考資料

令和3年にはすべての都道府県で実施され、5,000以上の事業所が補助金を受け取っています。
ICT化が遅れていると言われる介護業界において、実施状況の伸び率は飛躍的とも言えるでしょう。

それでは、令和5年度のICT導入支援事業の概要を、各項目ごとに見ていきましょう。
なお、ここでの内容は、厚生労働省の「令和5 年 度予算案の主要事項」を参照しています。

ICT導入支援事業の補助対象となる機器・ソフト

ICT導入支援事業の補助対象は以下のとおりです。

  • 介護ソフト
  • タブレット端末、スマートフォン、インカムの購入費
  • Wi-Fi機器の購入設置
  • 運用経費:クラウド利用料やサポート費用など

参照:厚生労働省資料

介護ソフト・電子端末・通信環境の整備によって、業務の効率化を図ることが狙いです。
そのため、自治体によっては、タブレット端末やスマートフォンなどの購入・使用に介護ソフトのインストールを義務付け、私用しないことと定められている場合もあります。

私物と混同しないために、マークを付ける、セキュリティを強化するといった対策が必要です。

また、補助対象となる介護ソフトには、下記の条件が定められています。
以下いずれかを満たすものが対象です。

  • 記録、情報共有、請求業務で転記が不要
  • ケアプラン連携標準仕様
  • 入退院時情報標準仕様
  • 看護情報標準仕様
  • 財務諸表のCSV出力機能を有するもの

介護報酬の請求のみに特化したタイプでは、上記の機能が搭載されていない場合があります。
介護ソフトの導入で申請を検討している場合は、上記の条件を介護ソフト選定の項目に入れましょう。

ICT補助金の要件

ICT補助金の受給には以下の要件が定められています。

  • 導入計画の作成及び導入効果の報告
  • 「SECURITY ACTION」の「★(一つ星)」又は「★★(二つ星)」のいずれかを宣言

導入計画は、介護ソフト提供元のシステム会社に見積もりをとり、実際の導入計画を立てます。

「SECURITY ACTION」とは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する、中小企業が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。
「★(一つ星)」又は「★★(二つ星)」の宣言内容は、以下のとおりです。

  • ★(一つ星):情報セキュリティ対策ガイドライン付録の「情報セキュリティ5か条」に取組むこと
  • ★★(二つ星):情報セキュリティ基本方針を定め、外部に公開したこと
引用:よくある質問|IPA

ICT補助金の上限額

ICT導入支援事業の補助金の上限額は、介護施設の職員数によって設定されています。

規模基準額
1~10名以下100万円
11~20名以下160万円
21~30名以下200万円
31名以上260万円

補助割合は、1/2又は、3/4を下限に地方自治体の裁量によって設定されます。

【3/4へ拡充】補助金の割合を拡充する3つの要件

補助割合は、下記いずれかの要件を満たすことで、1/2から3/4への拡充が可能です。

  • ICT導入計画で文書量の半減が実現されていること
  • LIFEのCSV連携使用を実装した介護ソフトを使用し、LIFEへデータ提供していること
  • 「ケアプランデータ連携システム」を利用し、外部とのデータ連携をとっていること

上記の要件を満たした場合には、補助割合3/4を下限として、都道府県の裁量で補助割合を設定します。
より具体的な補助額については、各都道府県で定められている内容をホームページなどで確認してみましょう。

ICT導入支援事業の流れ

ICT導入補助金の一般的な流れは、下記のとおりです。

  1. 業務分析
  2. 導入計画の策定 / 交付申請
  3. ICT導入・活用
  4. 導入効果の報告

まず「1. 業務分析」では、自施設の課題を洗い出します。
介護施設におけるICTにはスタッフの協力が不可欠です。
業務分析は、現場のスタッフにヒアリングを行い、ICT化導入の目標を設定していきましょう。

ICT補助金への申請には「2. 導入計画の策定」が必須です。
またこの時点で、文書量を半減できる計画を作成して、補助額の割合の拡充を目指しましょう

さらに「4. 導入効果の報告」については、各都道府県が定める様式によって厚生労働省へ報告します。
交付を受けた事業者には、2年間の報告義務が定められています。

実際の補助金の交付は「4. 導入効果の報告」の後です。
補助金をもとにICT導入ができるわけでなく、ICT導入による支出を後から補填してもらえるという流れです。

機器等と連携し、生産性向上に資する取り組みである事」の要件を満たしている場合には、上限1,000万円とします。

介護ソフトに活用できるIT導入補助金とは?

「IT導入補助金」も、介護事業のICT化(IT化)に利用できる補助金です。
中小企業や小規模の事業者の業務効率化やセキュリティ対策の向上、生産性向上などを目的としたIT導入にかかる費用のサポートを受けることができます。

IT導入補助金を活用して、介護保険料の請求機能や経営データ出力機能の入ったソフトや、シフト管理機能が搭載されているシステムなどの導入が可能です。

ここでは、より詳しい補助対象や補助額を見てみましょう。
なお、IT導入補助金の対象となる介護ソフトについては下記の記事で解説しています。

関連記事:【介護ソフト向け】IT導入補助金2023年|スケジュールや概要をわかりやすく解説

IT導入補助金の種類と補助対象

IT導入補助金の対象は、介護事業者だけではありません。
中小企業・小規模事業者が補助対象となっているため、飲食、宿泊、小売り、運輸、保育等のサービス業、製造業なども含まれます。

ここでは、介護施設が対象となる5種類の補助枠を表にまとめています。

種類補助額・補助率対象機能要件
通常枠(A類型)5万~150万円(補助率1/2以内)ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年)・導入関連費1プロセス以上
通常枠(B類型)150万~450万円(補助率1/2以内)4プロセス以上
セキュリティ対策推進枠5万~100万円
(補助率1/2以内)
サービス利用料(最大2年)「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているもの
デジタル化基盤導入型(ソフト)補助率3/4以内:(下限なし)~50万円 ソフトウェア購入・クラウド利用料(最大2年)・導入関連費会計、受発注、決済、ECのうち1機能以上
補助率2/3以内:50万~350万円会計、受発注、決済、ECのうち2機能以上
デジタル化基盤導入型(ハード)~10万円パソコン・タブレット・プリンター・スキャナーなどの購入デジタル化基盤導入型(ソフト)の使用に活用されるもの
~20万円レジ・券売機などの購入

なお、介護ソフトが対象となるのは、通常枠(A類型)と通常枠(B類型)です。
ただ、IT導入補助金を受けるには、ソフトの提供会社が「IT導入支援事業者」を申請しており、なおかつ導入企業が審査に通過することが前提です。

IT導入補助金の適用をお考えの方は、IT導入支援事業者の介護ソフトなどを選びましょう。

IT導入補助金の申請手順

IT導入補助金の申請は以下の流れです。

  1. 事前準備
  2. 申請ページ開設
  3. 交付申請開始
  4. SMS認証・提出
  5. 審査・採択

なお、事前準備では、以下の手続きが必要です。

  • gBizIDプライムアカウント取得
  • みらデジ経営チェック実施
  • SECURITY ACTION実施
  • 履歴事項全部証明書
  • 納税証明書の準備

また、IT導入後にはIT導入支援事業者へ実施効果報告を行います。
IT導入支援事業者には、事業実施効果報告をとりまとめ、事務局へ提出義務があります。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

労働人口が減っていく中で、ものすごい勢いで高齢者が増えている日本に於いて、労働生産性の向上は至上命題なのは間違いありません。スーパーやコンビニでも着実にセルフレジが増え、ファミレスでロボットが食事を運ぶ光景も珍しいものではなくなりました。介護業界もこの流れを汲んでいると言いたいところですが、残念ながら現状はなかなかそのような流れになっていません。その理由には色々複雑なものがあるのですが、導入コストもその一つであることは間違いありません。「介護ロボット導入支援事業」と「ICT導入支援事業」が統合され「介護テクノロジー導入支援事業(仮称)」として内容も拡充されるのは明るいニュースでしょう。伴走型支援と成果を職員に還元することも要件となり、より現場職員を巻き込みやすい建付けとなりそうです。

まとめ

厚生労働省は今後のさらなる人材不足や要介護者の増加を見越して、ICT化を推進した整備を行っています。

自施設の業務改善や、さらなるサービス向上のためにICT化の導入を検討しているのであれば、補助金をうまく活用して、できるだけコストを抑えて導入してみるのをおすすめします。

また介護ソフト導入によるICT化は、スタッフの業務負担の軽減が可能で、スムーズな運営にも好影響を与えてくれるでしょう。

本記事を参考に、補助金を活用したICT化を検討してみてください。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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