【医療業界動向コラム】第183回 包括期・慢性期病院における外来医療〜後期高齢者医療制度の見直しから読み解く〜
2026.04.14
令和8年1月23日に招集された通常国会は、冒頭解散となり、そのまま選挙に突入した。その後、2月18日に特別国会が招集され内閣総理大臣が選出・指名された。本来は予算・法律案等については通常国会で審議されるものだが、こうした政治状況に伴い、特別国会を通常国会と同じように150日間開催し、予算・法律案について議論することとなっている。
今回の特別国会では、健康保険法等に関する法律案が審議される。OTC類似薬、高額療養費といった患者負担に関するもの、医療DXの推進といった医療機関における働き方改革のさらなる推進に関するものについて審議される(図1)が、患者、とりわけ後期高齢者の保険料率・窓口負担が今後見直される方向にあることが読み解ける。ここでは、後期高齢者医療制度の見直しに焦点をあてて確認し、今後の対応策について考えたい。

後期高齢者医療制度 ~5年後めどに金融所得に応じた負担を求めることに~
後期高齢者医療制度において、負担の公平性を高めるため、保険料の算定・窓口負担割合等の判定に金融所得(上場株式の配当等)をより適切に反映させるための措置が講じられる。具体的には、法定調書を保険者(後期高齢者医療広域連合)へオンライン提出する義務を課すというもの(図2)。

本改正案が成立すると、今後は以下のスケジュールで進んでいくことになる。金融所得が実際に保険料・窓口負担に反映するまでには、公布後4-5年度となる見通しだ。
1.公布後、2-3年間は法定調書の電子申請のためのシステム構築をする。
2.システム構築ができる見通しの公布2年後(最短)に法定調書の電子申請の義務化開始
3.法定調書の電子申請義務化から1年8ヶ月後に保険料・窓口負担割合が必要に合わせて変更
また、本年8月からは高額療養費制度が見直され、自己負担上限額の引上げと共に外来特例も見直される。今後も折を見て見直しは進められることを意識してか、長期療養者の家計への影響を考慮することを明確にすることとなっている。多数回該当においての配慮となることが想定されるだろう。
雇用延長や治療と仕事の両立支援などの社会的生産性の維持・向上に向けて、一般社会でも大きな変革が起きていることもあり、一定の所得を有する高齢者は増えてくることは考えられるが、現行の経済状況を考えると、安定した生活を維持できるか不安はある。そこで考えられるのは、比較的病状が安定している患者の場合は、長期処方・リフィル処方を選択し、受診頻度を見直すということだろう。
長期処方・リフィル処方に対応できる環境整備。包括期・慢性期病院での対応は?
令和6年度診療報酬改定では、生活習慣病管理料と地域包括診療料/地域包括診療加算において長期処方・リフィル処方への対応が可能であることを院内掲示することが要件として追加された。今回は、特定疾患療養管理料、皮膚科特定疾患指導管理料、婦人科特定疾患治療管理料、耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料、二次性骨折予防継続管理料及び小児科外来診療料にまでその対象が拡大されることとなった。経済情勢を考えると患者側からの相談が増えてくることも考えられる。また、後期高齢者医療制度の見直しに伴い、慢性疾患を有する患者で病状が安定している場合は、長期処方・リフィル処方に関する相談を行うことを前提とした対応の備えが必要になるだろう。なお、「対応可能」ということは、相談があれば必ず長期処方・リフィル処方をしなければならない、というわけではない。患者の検査データや服薬状況などを踏まえ、場合によっては長期処方・リフィル処方をしない、という選択を患者に伝えることも必要だ(図3)。

包括期及び慢性期を主体とする病院においては、地域包括診療料などのかかりつけ医機能を評価する届出を目指し、外来と病棟の一元化を目指していくことが求められていくことになるだろう。令和8年度診療報酬改定では、在宅や施設の後方支援機能を評価する「包括期充実体制加算」が新設されるなど、病床を地域の貴重な資源として有効活用することが期待されている。地域と病床のつながりを密接にしていく上で、包括期・慢性期の病院だからこそできるかかりつけ機能を発揮し、地域住民のために病床を有効活用していく取組が今後必要になるだろう。
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

