【医療業界動向コラム】第168回 専従要件の範囲の見直し、救急応需体制に対する前向きな適正化について議論される
2025.12.16
令和7年12月に入り、令和8年度診療報酬改定に関する議論は各論に入り、大詰めを迎えようとしている。第631回と第632回の中央社会保険医療協議会 総会の議論の中から、届出や算定方法の明確化の議論の一つとして専従要件の見直しと救急外来応需体制に関する議論をピックアップして確認する。
ところで、第632回中央社会保険医療協議会 総会では入院時食事療養費・生活療養費に関する議論が行われている。その中で厚生労働省から入院時の食費の基準額を40円引き上げること、入院時生活療養費の基準額(総額)を60円引き上げることが提案され、今後社会保障審議会 医療保険部会にて詳細を議論していくこととなる。
働き方改革や人材確保の観点から、専従要件の範囲の見直しが行われる
疾患別リハビリテーション料などにおいて、専従要件の見直しに関する議論が注目を集めていたが、その他の専従要件の範囲の見直しについて具体的な項目を確認しながらの議論となっている(図1、図2、図3)。



厚生労働省からは、医療安全対策加算や感染対策向上加算の専従者において、加算に係る業務のない時間に実施可能な業務が示されていないことから、他施設への助言業務に関する規定を参考に、月のうち一定の時間までは院内で他の業務に従事可能とすることについての議論と地域包括ケア病棟等における、専従の理学療法士等は、入院患者の退院支援等に係る業務であれば院外での活動に従事できることを明確化することについての議論が要請され、いずれにおいても専従要件の範囲を見直す方向で議論が今後進められていくこととなる。
近年の診療報酬改定では、地域の基幹病院が近隣の医療機関とのカンファレンスや研修の実施を通じて、地域全体の医療レベルの底上げを行うことや基幹病院からの転院・退院後の継続診療・療養のための連携を円滑にすることを目的の一つとした連携や専門領域の知見の共有が評価されるようになってきている。人材を地域の貴重な資源と考えた見直しといえ、地域医療連携につながる様々な評価も今後増えてくることだろう。具体的には、慢性心不全に関する連携の評価が議論される見通しだ。
下り搬送の推進、救急外来の人員確保と検査体制の確保に関する評価を
高齢者の救急搬送が増加している現状を踏まえて、令和6年度診療報酬改定ではいわゆる下り搬送となる「救急患者連携搬送料」が新たになり、地域包括医療病棟入院料が新設されるなど行われたところ。しかしながら、「救急患者連携搬送料」の届出は奮っていない。その原因として、搬送時に同乗するスタッフの確保が難しいことや自院で救急自動車を有していない、といったものが上げられている。また、必ずしも救急自動車での搬送が必要とは言えない患者もいること、搬送先が遠距離な場合なども課題とされている(図4)。

救急自動車に関しては「救急業務のあり⽅に関する検討会(総務省 消防庁)」の報告書に盛り込まれている民間の搬送事業者の活用を「救急患者連携搬送料」においても可能とすることとなりそうだ。また、搬送先が遠距離になる場合の長時間加算が期待される。今後はさらに、下り搬送を受け入れる医療機関についても平時の連携体制の確保などについても議論されていく予定だ。
救急外来応需体制についての議論では、夜間休日を含め医師・看護師等を配置し、検査・処方等が可能な体制を整備しているものの、そうした環境整備や人員配置に対する直接な評価がないことが課題としてとりあげられ、議論が要請された。平時からの連携体制などの間接業務も考えると負担は大きく、常に対応できるように人員配置に関する評価も必要といえる。こうした救急医療を担う医療機関は地域の最後の砦ともいえることから支援が必要だといえる。今後の議論に大きな期待が寄せられる。

