【医療業界動向コラム】第157回 医師事務作業補助者の業務省力化にICT活用の支援を。高齢患者が増えている透析医療の評価の方向性。

2025.09.30

 令和7年9月18日、令和7年度第12回入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催されている。急性期入院医療の指標・働き方改革・診療科偏在といったこれまで議論されてきたことに加えて、透析医療・小児、周産期医療・災害医療・業務効率化といったテーマが取り上げられている。ここでは、働き方改革に関する議論として取り上げられた医師事務作業補助体制加算に関する議論と透析医療に関する議論を確認する。

医師事務作業補助者の定着と業務の省力化に対する支援を

 急性期入院医療の集約化・役割分担と合わせて、医師の働き方改革についても考えていくこととなっている。その中で、非常に評判がよいのが医師事務作業補助者の活躍だ。しかしながら、医師や看護師といった専門職ではないため、他産業との採用・処遇等で競争状態になっている。今回の議論では、多くの病院ではICT等を活用した医師事務作業補助者の業務省力化の取り組みが進んでいないという調査結果をベースに、ICTを活用できる場面の可視化、実践事例を紹介している(図1、図2)。

図1 医師事務作業補助者が実施している業務とICT活用のイメージ(クリックして拡大表示)

図2 生成AI等の活用による医師事務作業の負担軽減について(クリックして拡大表示)

 医師事務作業補助者の生産性を上げ、定着化を図ることは、医師の負担を軽減し地域の入院医療の持続可能性をあげることにつながる。既存の医師事務作業補助体制加算に対して、医療ICTサービスの利用を促進するような要件(業務時間の短縮化計画やキャリアプランの設定など?)とICTサービス利用を前提とした点数など新たな区分を設けていくことなど今後期待されるのではないだろうか。

腹膜透析の推進、そして腎不全患者の終末期医療への対応に注目

 骨太の方針2025では、慢性腎臓病対策への取り組みとして、腎不全患者に対する緩和ケアが盛り込まれている。緩和ケア病棟での対応や終末期における血液透析から腹膜透析への切り替え、いわゆるPDラストに対する評価の可能性に注目が集まる。

 まず、透析医療の現状についてだが、2022年度から患者数が減少し、新規透析導入患者の高齢化が課題になってきている。改革工程表2023では、2028年度までに新規透析導入患者を年間3.5万人以下にする、という目標が設定されているが、現状では3.9万人となっている。目標達成に向け、糖尿病や高血圧患者の重症化対策となる生活習慣病管理料等における継続受診の評価の検討なども合わせて注目したい。

 患者によっては通院回数も少なくでき、日常生活のリズムを大きく変えること無く過ごすことができる腎代替療法の一つである腹膜透析についてみると、増加傾向から横ばいという状況(図3)。人工透析を実施している医療機関において、腹膜透析を提供できる医療機関の割合は19.5%(n=205)という状況で、環境整備に大きな課題があることがわかる。

図3 腹膜透析患者数と透析・移植患者の推移(クリックして拡大表示)

 この腹膜透析については、PDファーストだけではなく、PDラストが話題になっている。終末期となり、通院が困難となった場合などに腹膜透析を実施する、というものだ。先にお伝えしたが新規導入患者数は減少傾向にあり、高齢患者の新規導入と維持透析が課題となってきており、終末期への対応が急務になっている。透析医療においては、終末期に対する診療報酬上の評価は明確ではないこともあり、実施状況は少ないと言える(図4)。

図4 緩和ケアにかかる取組状況(クリックして拡大表示)

 令和8年度診療報酬改定では、従来のPDファーストと新たにPDラストを視野に入れた腹膜透析の推進、高齢の透析患者の増加に伴い増えてくる終末期の対応に対する新たな評価の新設、または導入期加算に終末期対応に対する環境整備などを要件に盛り込んでくることなども考えられるのではないだろうか。

 また、透析医療は患者の命に直結するもの。過去に大きな自然災害を経験してきたことから、国や地方自治体と日本透析医会が連携して取組を進めているところだが、取組状況にはばらつきがあることが今回指摘されている(図5)。

図5 透析医療の災害対策の取組(クリックして拡大表示)

 患者の命に直結する医療を行っている透析医療を行う医療機関や、外来感染対策向上加算を届出る医療機関、在宅医療を提供する診療所においてはBCPの対応が既存の診療報酬項目(人工腎臓や外来感染対策向上加算、在宅療養支援診療所など?)に盛り込まれる可能性が高いと言えるだろう。

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