【医療業界動向コラム】第149回 令和8年度診療報酬改定でのDPC/PDPS、短期滞在手術等基本料に関する見直しの方向性が明らかに 

2025.07.29

令和7年7月3日、そして7月17日に 入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催され、これから本格化する中医協での入院医療に関する診療報酬改定に向けた議論のための整理が行われている。今回は、DPC/PDPS、短期滞在手術等基本料に関する見直しの方向性について確認したい。

DPC/PDPS、複雑性係数の評価の見直し、入院期間Ⅱのさらなる短縮化を検討へ

現在、DPC/PDPSについて、病院経営に直接的に影響してきそうなものとして「複雑性係数の評価方法の見直し」「入院期間Ⅱの短縮区の可能性」「再転棟ルール」「短期滞在手術の見直し」の4つで検討がすすめられている。

1)複雑性係数、入院初期により多くの医療資源を必要とする診断群分類を、十分に評価できていないのではないか

複雑性係数について、入院初期により多くの医療資源を必要とする診断群分類を、十分に評価できていないといった課題が指摘されている(図1)。すなわち、複雑性係数については平均在院日数が長いことが評価される診断群分類があるということだ。

図1 複雑性係数の課(※画像クリックで拡大表示)

入院初期を重視する意味で、入院日数の 25%tile 値までの包括範囲出来高点数に着目した分析を今後継続して行っていく方針とのことだ。より早期の退院を評価していくことが検討される。

2)入院期間Ⅱ、さらに前倒しへ

入院期間Ⅱについて、現状と実際の患者の在院日数の分布の乖離があるのではないか、といった意見があったことから、在院日数の分布等について確認を行ったところ、以下の結果が確認され、現状の平均在院日数は適切ではないといった指摘があった。

  • 診断群分類毎の平均在院日数について、ばらつきが小さく、標準化が進んでいる診断群分類がみられた。
  • 一方で、ばらつきが大きく、十分に標準化が進んでいない診断群分類もみられた。
  • 特定の在院日数の患者数が顕著に多い診断群分類がみられた。
  • 多くの診断群分類において、平均在院日数は在院日数の中央値を上回っていた。
  • 症例数が10,000件以上の診断群分類のうち、在院日数の中央値が平均在院日数を上回る診断群分類が2つあったが、いずれも左に歪んだ分布であった。

なお、クリニカルパスはDPC対象病院のうち約 93%(1,638 医療機関/1,761 医療機関)で導入されており、入院期間設定に関して主として参照しているものについては、「診断群分類点数表上の第Ⅱ日(平均在院日数)」と回答した医療機関が約 63%(1,028 医療機関/1,638 医療機関)あることも確認されている。入院期間Ⅱについては、さらなる短縮化と入院期間Ⅰに対するインセンティブの見直しに注目が集まりそうだ。

3)同一傷病の再転棟ルール、8日目の再転棟の件数が突出して多い

DPC対象病院のケアミックス化は進んでいることから、DPC対象病棟からの再転棟が起こりやすい状況になっている。現行のルールでは、DPC対象病棟から退院した日の翌日又は転棟した日から起算して7日以内にDPC対象病棟に再入院(再転棟)した場合、同一の傷病等である場合は、一連の入院とみなすこととなっている。改めて再転棟に関する分析を行ったところ、8日目の再転棟が多いことが確認された(図2)。ケアミックス型のDPC対象病院における再転棟ルール見直しの可能性について注視しておきたい。

図2 DPCにおける再転棟について(※画像クリックで拡大表示)

4)短期滞在手術等基本料について、外来での実施状況にばらつき

第四期医療費適正化計画において、入院から外来へ移行できるものを促進するということで、がん化学療法と白内障手術に関する外来移行の促進が明記されたところ。そうした方針もあり、前回の診療報酬改定ではDPC対象病院でのルールの見直しや重症度、医療・看護必要度では化学療法に関する重症度の判定が見直されるとともに短期滞在手術等基本料の患者も測定の対象に加えること、地域包括ケア病棟における在宅復帰率等の計算対象から除外するなど、外来への移行を促す見直しが行われたところだ。

しかしながら、DPC対象病院では対象となる内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術と水晶体再建術についてみると外来での実施状況にばらつきがあること(図3)がわかっている。

図3 短期滞在手術等基本料の外来での実施率(※画像クリックで拡大表示)

また、地域包括ケア病棟を有する病院においても短期滞在手術等基本料1ではなく、あえて点数が高い基本料3を選択しているように見えるデータもあることから、さらなる適正化が検討されようとしている。ただ、あえて4泊5日入院としているのは高齢患者で併存疾患の関連性や体力の問題などの事情も有るかもしれない。そのため、今後調査されていくことになると思うが、事前のスクリーニング(せん妄ハイリスク患者ケア加算などで使用するツールの利用など?)や重症度、医療・看護必要度のB項目の活用、2泊3日入院(空欄となっている短期滞在手術等基本料2の復活?)など今後ありうる可能性として注視しておきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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