【介護業界動向コラム】第3回 介護記録のICT化について
2024.09.25
介護のICT化において、介護記録ソフトとはパソコン等のデバイスを利用し、介護サービス利用者へのケアやバイタル等のデータを共有する目的で利用されるツールであり、介護事業者にとって最も身近なICTツールです。
介護事業者にとって身近で且つ事業の肝となるツールである為、多くのメーカが製品を市場投入し機能も多様化しています。非常に多くの製品、機能があるため、介護事業者にとっては、特に導入選定のシーンにおいて、どれが自法人・自事業所に適しているか頭を悩ます事が多いという現状です。
今回はパソコン以外とも連携することが基本となってきている介護記録ソフトについて、選定ポイントを解説していきます。
選定ポイント1
●入力のしやすさと効率性
幾つかの画面で何度も同様のデータを入力するのではなく、一回の入力で記録されたデータが様々な画面で利用可能となる転記機能は、介護記録ソフトにおいて最も職員の負担軽減に繋がる機能です。今や多くの介護記録ソフトが基本機能として備えています。
また、よく使う表現をプルダウンメニューから選択し入力するような「定型入力」とフリーテキストで入力可能な「自由記述」が用途別に使い分けられるもの、利用者に同じ項目を一度に入力したい場合に「一括入力」が可能なものは入力時間の短縮に大きく貢献しますので、選定の際には考慮すると良いでしょう。
選定ポイント2
●他の機器と記録ソフトの連携
最近では見守りセンサー、バイタル機器、ナースコール等の機器で取得した情報を、職員が手入力することなく自動で反映することが可能となっている介護記録ソフトが多くなっています。
(例)
- 見守りセンサーで得た、時間を含む離床の情報
- 定時にベッドセンサーで取得したバイタル情報
- バイタル機器で測定した数値情報
例に示した情報が自動で連携し、職員の入力忘れや入力の手間を省き、生産性向上に繋がっています。
選定の際には既に利用されている見守り等機器が連携するか否かも確認しましょう。
例えば訪問介護においては、スマートフォンやタブレットを訪問介護員が持参することで、サービスの開始・終了時間や提供したサービス記録等を簡単に現地で入力を行う事で、事務所に戻った頃には訪問記録の殆どの情報入力が完了している様な運用も可能となり、訪問介護員はもちろんのことサービス提供責任者の生産性向上にも繋がります。
選定ポイント3
●音声入力機能の利用
「PCの入力が苦手だから紙がいい」「文書は苦手な外国人職員が多い」という話はよく耳にしますが、このようなケースでは音声入力が効果を発揮します。ワイヤレスイヤホンなどをスマートフォンやタブレットにBluetooth等で接続し、職員は入力したい内容を話すだけで記録ソフトに自動入力されます。記録ソフトに入力する為の話し方には一定の工夫が必要で、慣れるまでは訓練が必要ですが、介護業務を途切らせることなく記録の入力が行えることはとても効率的です。
3大介助中でも、また、訪問車で移動中でも、「何か別の事をしながらでも話したことが記録される」為、入力業務の大幅な削減が可能となります。
また、音声入力機能は介護記録ソフトが提供している場合もありますが、iPhoneやAndoroidの基本機能として装備されていますので、それらの活用の検討をしても良いでしょう。
選定ポイント4
●データ連携機能
科学的介護(LIFE)との連携やケアプランデータ連携システム等、今後行政等が提供するのシステムとデータを連携するケースが多くなることが見込まれます。
先日、厚生労働省から発表された(仮)介護事業財務情報データベースシステムについても運用開始当初は介護記録ソフトから出力したファイルを取り込む仕様となっている為、その様な機能が標準的に装備されるソフトを選ぶ事が重要です。
今や介護事業者にとって基本となった介護記録ソフトについて述べて来ましたが、記録の効率化は利用者に向き合う時間を確保する為の第一歩となる為、適した介護記録ソフトを選びしっかりと使いこなせるよう、取組を進めてみてください。
竹下 康平(たけした こうへい)氏
株式会社ビーブリッド 代表取締役
2007 年より介護事業における ICT 戦略立案・遂行業務に従事。2010 年株式会社ビーブリッドを創業。介護・福祉事業者向け DX 支援サービス『ほむさぽ』を軸に、介護現場での ICT 利活用と DX 普及促進に幅広く努めている。行政や事業者団体、学校等での講演活動および多くのメディアでの寄稿等の情報発信を通じ、ケアテックの普及推進中。