【医療業界動向コラム】第93回 令和7年度から始まる「かかりつけ医機能報告制度」の具体案が明らかに

2024.06.04

※このコラムは2024年5月31日時点の情報をもとにしております。

 令和6年5月24日、厚生労働省にて「第5回 かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」が開催された。来年度からスタートする「かかりつけ医機能報告制度」の具体的な内容案が示されており、本年夏までに結論を出すことになっている。

かかりつけ医機能報告制度は、新たにかかりつけ医の認定や資格を設けるというものではなく、地域住民に「選んでもらう」ために必要な情報を整理・発信することが主たる目的だ。また、単に情報発信をするだけではなく住民参加も視野に、地域を挙げてかかりつけ医機能を整備するための協議の場の設置、患者への必要な説明についても検討をしていく。

〇かかりつけ医機能となる1号機能、そして2号機能について

かかりつけ医機能そのものの考えについてだが、「1号機能」と呼ばれる「継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能」を有する医療機関の有無について報告を求め、その1号機能に該当する医療機関が「2号機能」の有無について報告することとなる。

1号機能の報告については、現段階では3つの案が示されている(図1)。1つ目の案では、一定以上の診療(35項目の症状ごとの対応可能の有無)に対して一次診療が可能かどうか。2つ目の案では、日本医師会等によるかかりつけ医機能に関する研修の修了者がいること又は全日本病院協会による総合診療専門医がいること、及び17の診療領域ごとの一次診療対応可能の有無と1つ目の案にある一次診療対応の他、17の診療領域における患者からの相談対応等を満たすこと。3つ目の案は、日本医師会等によるかかりつけ医機能に関する研修の修了者又は受講者がいること又は全日本病院協会による総合診療専門医がいること。

図1_1号機能(※画像クリックで拡大表示)

 2号機能とは、時間外対応・入退院の支援機能・在宅医療の提供・介護サービス等との連携による医療の提供状況に関すること。かかりつけ医機能の中でも、どういった領域に強みがあるのかを明確にすることが目的だ(図2)。

図2-1_2号機能①(※画像クリックで拡大表示)
図2-2_2号機能②(※画像クリックで拡大表示)

これからの機能の報告対象となるのは、特定機能病院・歯科医療機関を除くすべての医療機関となる。ゆえに、地域医療支援病院や紹介受診重点医療機関なども対象となる。基幹病院と診療所と二人主治医体制で診ていくことなどをイメージしているようだ。診療情報提供料及び連携強化診療情報提供料の実績などに注目していきたい。

〇報告時期と報告テーマごとに設定される「協議の場」の地域の範囲

 そして、これらの報告については、1-3月の期間で行う。今年度より公開スタートとなっている医療情報ネット<ナビイ>と歩調を合わせることで、医療機関の負担軽減を図る。なお、ナビイではすでにかかりつけ医機能の有無については項目が設定されており、地域包括診療料等の届出の有無などが分かるようになっている。地域住民にどのようにわかりやすく伝えるかが大切だ。

 ところで、気になるのは実際にかかりつけ医機能に関する報告を受けて、住民も含めた協議の場を設定するにあたっての地域の範囲だ。かかりつけ医機能であれば身近に感じる市区町村の範囲内での検討でよいように思われるが、希少疾病の患者や入退院支援のことを考えると、二次医療圏単位で考えていくことも必要となる。その点について、今回の審議会では「協議するテーマに応じて、時間外診療、在宅医療、介護等との連携等は市町村単位で協議を実施、入退院支援等は二次医療圏単位等で協議を行い、全体を都道府県単位で統合・調整するなど、「協議の場」を重層的に設定することを考慮することとしてはどうか」とされている。最終的には都道府県と市町村による協議で決めることになる。また、協議するテーマごとの進め方についても本審議会では案が示されている(図3)。

図3-1_協議の場のイメージ①
図3-2_協議の場のイメージ②(※画像クリックで拡大表示)

なお、患者へのかかりつけ医機能に関する説明(努力義務になっている)についての説明の内容案、また治療に支障が生じる可能性がある場合などを考慮した説明免除の例、書面以外にもEメールや患者サマリー(電子カルテ情報共有サービスの機能の一つ)を利用する案などが具体的に示されている。

  令和6年度診療報酬改定では、かかりつけ医機能を発揮できる環境を作るために、生活習慣病管理料による慢性疾患管理の厳格化や医療DXの積極的な推進が評価されている。かかりつけ医機能とは、医療機関単独で患者を支援するという発想ではなく、医療資源を含めて連携を通じて地域全体で住民を支えるための指揮機能ともいえるものをイメージしている。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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