【医療業界動向コラム】第91回 本年10月からはじまる選定療養で対象となる”医薬品の取り扱い”を確認する

2024.05.21

※このコラムは2024年5月17日時点の情報をもとにしております。

保湿薬のヒルドイドが本年10月から患者の自己負担が上がる、この4月以降こうしたニュースを度々目にするようになった。これは、一部の後発医薬品のある長期収載品(特許の切れた先発医薬品)を希望する患者に対する選定療養(従来は認められていない混合診療について、患者本人が追加費用を負担することで医療保険適用外の治療を医療保険適用と併せて保険診療を受けることができる療養の種類の一つ)による一部自己負担を求める新たなルールのはじまりを伝えているものだ(図1)。なお、すべての長期収載品が対象となるのではなく、後発医薬品への置換が5割以上進んでいるなどの一部の長期収載品(1,095品目)が対象となっている。

図1_選定療養の対象となる長期収載品の保険給付について(※画像クリックで拡大表示)

対象となる施設、患者について

院内処方をする保険医療機関と保険薬局がその対象となる。ただし、入院中の患者については対象外だ。重要な視点としては、「医療上必要」があるかないか、ということ。端的にいえば、医療上必要があると判断される場合として、後発医薬品がある長期収載品で患者からの希望があっても全額保険給付となる。なお、後発医薬品の在庫状況等を踏まえ、当該保険医療機関・薬局において後発医薬品の提供が困難であり、長期収載品を調剤せざるを得ない場合には、患者が希望して長期収載品を選択したことにはならないため保険給付となる。

処方の段階で医師が後発医薬品可としても、保険薬局の薬剤師において、患者が服用しにくい剤形である、長期収載品と後発医薬品で効能・効果等の差異がある等、後発医薬品では適切な服用等が困難であり、長期収載品を服用すべきと判断した場合には、医療上必要がある場合に該当する。そのため、長期収載品を保険給付とすることを可能とする。また、当初患者が後発医薬品について希望していなかったものの、調剤時に選定療養について説明した結果、患者が後発医薬品を希望した場合に、後発医薬品を調剤し、保険給付とすることが可能だ。

患者の自己負担額について

当該長期収載品の薬価から、当該長期収載品の後発医薬品の薬価を控除して得た価格に4分の1を乗じた価格を用いて算定した点数に、10円を乗じて得た額となる(図2)。ここでいう当該長期収載品の後発医薬品の薬価とは、該当する後発医薬品のうち最も薬価が高いものとなる。なお、選定療養に係る費用として徴収する特別の料金は消費税の課税対象である。

図2_長期収載品を希望した場合の患者自己負担の変化

外来診療の場面では、対象となる患者に説明と意思確認が必要になると当時に、領収書の発行などの対応が必要になると考えられる。

後発医薬品使用体制加算に注意を

今回の新たなルールは、後発医薬品の使用促進を通じた医療費抑制策の一環ともいえる。ただその一方で、後発医薬品の安定供給についてはまだ課題もある。そうした現場の混乱に対する負担に対して、後発医薬品使用体制加算等の評価を引上げで対応している。しかしながら、本年4月の薬価改定が思わぬ影響を与えている。後発医薬品の使用について、数量割合で90%を達成しているものの、カットオフ値(全医薬品のうち、後発医薬品に置換可能な割合。後発医薬品+後発医薬品のある先発品/全医薬品で算出して、体制加算1であれば50%以上必要)の要件を満たすことが難しくなっている。薬価改定により先発医薬品の価格が下がってしまい、後発医薬品と同額または下回る薬価のものの場合は、カットオフ値の計算対象から除外することになるためだ。後発医薬品の使用促進は経営的側面でも重要性を増している。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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