【医療業界動向コラム】第75回 看護必要度の見直し案、200床未満病院には厳しい内容に。

2024.01.17

※このコラムは2024年1月16日時点の情報をもとにしております。

令和6年1月10日、第577回 中医協総会が開催され、診療報酬改定に向けた議論が行われた。賃上げ、再製造単回使用医療機器、孤独孤立に関する精神疾患、重症度、医療・看護必要度について議論されている。ここでは、重症度、医療・看護必要度について確認する。

重症度、医療・看護必要度(看護必要度)については、昨年の中医協で新たなモデル案が提示され、シミュレーション結果を年明け早々に公表することとなっていた。注射薬剤については評価対象期間を7日とし静脈栄養を除外すること、抗悪性腫瘍剤については入院での使用率が一定水準以上であるなど見直されている。他にも、明らかに医療依存度が高いケースといえる「専門的な治療・処置」にある「麻薬の使用」「昇圧剤の使用」「抗不整脈薬の使用」「抗血栓塞栓薬の使用」及び「無菌治療室での治療」は従来よりも点数を引き上げ、呼吸ケアと創傷処置については看護必要度Ⅱの基準に統一されている。そうした見直しをベースにして、「救急搬送からの入院」の入院期間を短くした2パターンと抗悪性腫瘍剤(注射剤)のスコアを引き上げた内容で、B得点を除外した新たなスコアリングによるシミュレーションが行われた。さらに、急性期一般入院料1については、平均在院日数を14-17日のパターンで算出している(図1)。

図1_看護必要度のシミュレーションモデル

なお、看護必要度の項目が厳しく、さらにB得点が排除されているわけなので、該当患者割合を満たすのは当然困難になる病院が続出する。そこで、該当患者割合を以下のようにテスト的に設定している。

A案)A項目:3点以上またはC項目:1点以上 → 15%以上

   かつ、A項目:2点以上またはC項目:1点以上 → 24%以上

B案)A項目:3点以上またはC項目:1点以上 → 15%以上

   かつ、A項目:2点以上またはC項目:1点以上 → 28%以上

C案)A項目:3点以上またはC項目:1点以上 → 18%以上

   かつ、A項目:2点以上またはC項目:1点以上 → 24%以上

A案)A項目:3点以上またはC項目:1点以上 → 15%以上

   かつ、A項目:2点以上またはC項目:1点以上 → 28%以上

さらに、平均在院日数ごと、病床規模(200床を境)にシミューレションを加味した結果が以下になる(図2-5)。

図2_急性期入院料1のシミュレーション結果①
図3_急性期入院料1のシミュレーション結果②
図4_急性期入院料1のシミュレーション結果③
図5_急性期入院料1のシミュレーション結果④

ざっとみてわかるのは、一般病床200床未満の急性期一般入院料1で要件を満たせない病院が多く出てくる可能性があるということだ。あくまでも仮のスコアリング・該当患者割合ではあるが、今回の条件に近いものとなったとしても大きな影響を受けることになる。一般病床200床未満の病院にとっては、急性期一般入院料1を維持するために病床を削減(重症者割合を高める)して一部病床転換をおこなうか、他の入院料への転換(新たにできると言われる高齢者救急病棟など?)など検討が必要になってくるだろう。地域医療構想の進展で、在宅も重要な療養の場となっていること考えると、200床未満の病院にとっては、病床削減・転換の上で、訪問看護事業等の新たなチャレンジのきっかけとなるかもしれない。今後の議論を注視していきたい。なお、看護必要度Ⅱの対象拡大(200床未満の急性期一般入院料1、200床以上400床未満の急性期一般入院料2・3)についても検討される。

入院すること自体が難しくなっていく時代、在宅も療養の場と考えた入院医療・地域医療連携の発想が重要になってきていることを感じる見直しとみえる。自院だけで対応できること、近隣の医療機関・介護事業者との共同作業が必要なことを改めて考え、整理しておきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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