【介護業界動向コラム】第16回 VUCAの時代の介護経営 「事業の大規模化をどのように考えるのか⑥」

2023.11.27

大規模ではない事業者にとっても業務提供方法の再編は重要課題になる。

介護業界に関連するM&Aのニュースが、様々な場面で目立つようになってきました。全国規模の巨大法人の統合や事業譲渡、あるいは地域単位での統合等がこの1年~2年の間に明らかに加速してきています。恐らく、2024年度の同時改定の内容も遠からずこの傾向を後押しするような要素が含まれていますから、業界再編の流れはいま以上に加速していくことになるでしょう。結果的に「大規模(従業員数、定員数、資金規模」を前提とした、大規模でなければ実質的に対応が困難な業界の仕組みになっていく可能性が高いものと推察しています。

例えば「専門的スタッフの雇用」「自立支援に向けた個別ケアの推進」「24時間の対応や看取りの強化」「スタッフ個々の教育/研修」「LIFEのデータ入力や、それを活用した要介護状態の改善の評価」「ICTの活用」「在宅復帰の促進」等、近年の介護報酬改定などで繰り返し発信されている内容ですが、実質的にこれらは事務作業の増加や職員確保、処遇面での評価、教育体制の充実・・・など、「一定の人員規模」や「経済的安定性」がある法人でなければ実現が容易ではありませんし、一時的に体制を構築したとしても、その状態を持続させていく事も、また、一定のハードルが伴います。

しかし、ここで申し上げたいのは、「大規模化以外に道はない」という事ではありません。「大規模化によって得られるメリットを代替する方法を全ての事業所が検討していく必要がある」という事です。 これだけですと抽象的でよく分からないので、もう少し具体的に見ていきましょう

非中核的業務のBPO(外部委託化)を考える

普段、介護・看護を提供されている中で、様々な業務があると思いますが、大別するとそれらは3種の業務に分けられるかと思います。

図:介護事業における3つの業務の分類

1つ目は、直接的ケア業務です。これは、利用者様へのサービス提供を指しています。2つ目は、間接的ケア業務で、これは直接的ケア業務に付随して発生する記録や情報連携、また環境整備(掃除や食事提供等も含む)等の業務が該当してきます。利用者様へのサービス提供をするうえで補助的に必要になって来るための業務です。

そして3つ目が、管理業務です。いわゆる請求業務や経理、総務、労務等が分類されます。

 さて、これらのうち、大規模化によって得られるメリットで特に影響が大きいのは「管理業務」の効率化/合理化と言えるのではないでしょうか。介護事業所にとっての「管理業務」は、一般的には「非中核的業務」であり「非生産部門」に分類されます。無論、この業務は小規模・中規模事業所であっても発生する訳ですが、例えば近年のインボイス制度のスタート、労働基準法の改正対応、道路交通法の改正(による車両管理等)、制度の変化に追いつく事や、管理の範囲・量は増加していくでしょう。大規模な事業所では一定の業務集約化により対応が出来ますが、小規模事業所にとってはますます状況は厳しくなります。

 そこで検討しておきたいのが、BPOとシステム化の2つです。BPOとは、Business Process Outsourcingの頭文字を取ったもので、仕事の一部のプロセスを外部委託化するといったような意味合いです。介護事業所などですと、「給与計算」「請求業務」「実績表の郵送/FAX」「伝票入力」等の委託化等が代表的ですが、近年では「採用窓口」「24時間対応のファーストコール(コールセンター)」等といった業務プロセスの委託、あるいはBTO(Business Transformation Outsourcing)と言われる経営企画業務の委託、業務改善の委託などといったものも増えてきました。

 上記のように自社のみの資源では十分な対応がしきれない領域、非中核的業務の領域についてはBPOを検討していく必要性が増してきているとも言えます。またそれにあたって合わせて検討しておきたいのが、管理業務のシステム化=DX化です。比較的安価かつスピーディな対応をBPO事業者に求める上では、経理、総務、労務といった業務自体がデジタル処理できる環境にあることが重要です。例えば紙打刻形式の勤怠管理と、スマホやタブレット経由等での勤怠管理では、データ化の手間が異なることは明白です。

 こうした管理業務=非中核的業務を外部委託により圧縮していく事により、本来の中核的業務である「直接的/間接的ケア」に、人的リソースや、財務的リソースを集中させていく、こうした展開はどの事業所にも求められてくる要素と言えるでしょう。

「大規模的要素」として是非ウォッチして頂ければと思います。

大日方 光明(おびなた みつあき)氏

株式会社日本経営 介護福祉コンサルティング部 参事

介護・在宅医療の経営コンサルティングを専門。直営訪問看護ステーションの運営本部を兼任。
東京都訪問看護ステーション管理者・指導者育成研修講師。その他看護協会、看護大学等における管理者研修(経営部門)の実績多数。

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