【医療業界動向コラム】第68回 負担軽減の促進をチーム医療、ICTの積極活用で。

2023.11.21

※このコラムは2023年11月21日時点の情報をもとにしております。

令和5年11月15日、第564回 中医協総会が開催された。診療報酬に関しては、入院(回復期領域)と働き方改革について議論されている。ここでは、働き方改革について確認していこう。

勤務医の働き方改革の本格的スタートを控え、先日その準備状況が報告されたところ。あくまでも、勤務医の働き方改革はいよいよスタートするということであって、そこがゴールではなく、例えば特例B水準は2035年には廃止されることになるため、2024年度から10年かけてA水準になるように絶えず時間外労働の短縮化に向けた取り組みを続けていかなければならない。また、今回の診療報酬改定の基本的視点の重点課題としても挙げられているのが、人材確保・働き方改革となっており、診療報酬でも勤務医の働き方改革の更なる後押しが期待される。

〇特定行為研修修了者、病院薬剤師等への期待と評価の拡充

タスクシフト・タスクシェアを推進していく上で、専門職者との連携強化、チーム医療の推進は欠かせない。今回の議論からわかるのは、近年増加傾向にある特定行為研修を修了した看護師と病院薬剤師に対する評価拡充が検討されているということ。なお、いずれも第8次医療計画において、各都道府県において就業者の目標値を設定することとなっていることから、診療報酬での後押しが期待される。今回の議論では、特定行為研修を修了した看護師の病院での配置状況について紹介されているが、急性期充実体制加算など救急対応の多い加算や特定集中治療室においてはやや手厚く配置されていることが分かった(図1)。

図1_特定行為研修修了看護師の配置状況

修了者も増えてきたことから、高度急性期の場面での活躍と医師の負担軽減を推進する観点からも新たな評価の創設や拡充には十分といえる時期を迎えているように思える。

また、勤務医による負担軽減の取組で評価が高いものとして、薬剤師による患者への説明などがあげられている(図2)。

図2_医師の負担軽減策の実施状況

第8次医療計画では薬剤師の偏在も都道府県の重要な取組となることから、病棟薬剤業務実施加算などの拡充・要件緩和が大きく期待される。また、医師をはじめとする他職種の負担軽減に資するべく、薬剤師の教育・研修の充実に取り組む病院もあることが紹介され、その取り組みの一環としての地域の病院等へ出向したりするなどして経験を積んだり、連携を促進すること、地域全体の薬物療法に関する質の向上、何よりも地域の医療機関の薬剤師不足への対応に貢献できる(図3)。

図3_薬剤の地域医療への経験によるメリット

近年の診療報酬では、基幹病院とのカンファレンスや研修などが評価される傾向にあることから、新たな評価の可能性として注目すると共に、薬剤師不足解消に大きな期待が寄せられる。

なお、こうした研修・学びを通じて、多職種連携を深化させたり、地域の病院でも自院での取組を周知・運用先を拡大していくことにつながる期待がある。そこで、第四期医療費適正化計画でもその取り組みが明記されているポリファーマシー対策の推進につながってくる。なお、ポリファーマシー対策についてはチーム医療でのアプローチをもっと強化すべく要件の緩和などの見直しが検討されている(図4)。

図4_ポリファーマシー対策について

〇医師事務作業補助者、看護補助者の業務拡大、定着化を

医師の負担軽減の取組で常に評価の高い医師事務作業補助体制加算。次回改定では、さらに貢献度を高めるべく、高度な業務内容への対応や効率化を進めるための院内教育体制や人事制度の整備が次なるテーマとなりそうだ(図5)。

図5_医師事務作業補助者の教育体制と効果

一方で、看護補助者については、近年減少傾向にあることなど課題がある。そこで、雇用形態の在り方や定着化に向けた取組について紹介されている。正規職員であることや給与や研修の充実などの取組が重要であるとのことだ。昨今の人件費の動向なども踏まえて、点数そのものの見直しなどは大いに考えられると共に、患者への直接ケアへの関わりなどより看護師の負担軽減に資する取組ができる研修体制の構築や実践の有無で評価にも差が設けられることが考えられそうだ(図6)。

図6_看護補助者の定着に向けた取組

〇ICTの積極的な活用で、場所に関係なく、専門性の発揮を

介護報酬では介護ロボットに対する評価の検証が進んでいる。診療報酬でも様々なアプリケーションなどがあり、評価を検討してもよいのでは、といったICTを用いた様々な負荷の軽減について議論された。チーム医療に関する評価にある常勤や専従の要件を緩和することや介護保険施設等での医療依存度の高い患者に対する指導を受けたり、研修を受けることなども提案されている。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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