【医療業界動向コラム】第58回 地域包括ケア病床、サブアキュート型とポストアキュート型で評価を新たにすることを検討

2023.09.05

※このコラムは2023年9月05日時点の情報をもとにしております。

高齢患者の入院医療について、急性期で受け入れた後にトリアージして地域包括ケア病床を有する病院への下り搬送を評価することなどが検討され、次回改定で一つの注目点になろうとしている。重症度、医療・看護必要度の見直しに関する議論の中でも、尿路感染や肺炎などの高齢患者で該当する割合が高いとされる項目「救急搬送後の入院」の評価点数を見直したり、入院期間を短くすることなどを検討し、下り搬送を促すような施策がとられることなど容易に考えられる。最近の地域包括ケア病床に関する診療報酬では、二次救急等を必須にしたり在宅医療の実績などを評価に反映させるなど見直しが続いている。下り搬送先の拡充を準備してきていたともいえる。また、地域包括ケア、と銘打っていることもあり地域の高齢者にとっての身近な入院・かかりつけ医機能を期待した改定内容が続き、患者の受入れルートも多様化していることがわかる(図1)。

図1_入棟経路

そうした中で、緊急入院などの直接入棟に対する評価を見直すことが検討されようとしている。

緊急入院等の場合は入院初期の段階から集中的な治療対応等が必要になるため医療資源投入量は多く、医療費も高くなる。そのため、看護師等の負担も高くなる。下り搬送、重症度、医療・看護必要度における「救急搬送後の入院」の見直しがすすめば、その結果として地域の状況によってはサブアキュート機能の強化を求められる地域包括ケア病床も出てくるだろう。医療資源投入量や医療従事者の負担にも差が出てくることが考えられることから、今後詳細な分析を通じて、サブアキュート型とポストアキュート型の評価に差を設けていくことなどが考えられる。

ただ、現状では予定入院及び外来受診後の入院がそのほとんどを占めている。特に注目したいのが、生活習慣病の重症化対応や教育入院、レスパイトケア入院といったものに関連してくる点だ。地域包括診療料の算定なども合わせて、こうした生活習慣病重症化対応に関する予定入院及び外来受診後の入院については、医療資源投入量というよりも、そのプロセスを重視した評価などの可能性もある。特に、慢性心不全と慢性腎臓病については高齢化に伴い増えてくる疾患であり、重症化が進めば医療費も高くなり、医療従事者の負担も重くなってくるところなので対応を検討したい。また、肺炎球菌ワクチンの接種状況なども確認することも意識し、防げる病は防ぎ、患者と医療従事者の負担を減らせるように日常から取り組むことなども必要だろう。

そして、地域包括ケア病床における「短期滞在手術等基本料」についても議論されている(図2)。

図2_短期滞在手術等基本料3を算定する患者割合と自宅等からの入棟患者割合

短期滞在術等基本料3を算定する患者割合が高い病院では、自宅等からの受入れ割合が高く平均在院日数も短く、在宅復帰率7割以上となるケースが高い、といった現況が報告されている。その現況はポジティブに見える一方で、第四期医療費適正化計画にもあるように、入院から外来へ移行できるものは促進する方針が明らかになっており、具体的には白内障手術については都道府県毎に移行に関する目標値も設定されることになることも忘れないようにしておきたい。特に病床規模が大きい病院に対しては、院内転棟割合や地域からの自宅等からの入棟割合などに影響が出るような見直し(短期滞在手術等基本料の対象患者は計算式等から除外など?)の可能性も引き続き注視しておく必要があるだろう。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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