【医療業界動向コラム】第55回 入院から外来へ移行できるものを積極的に 短期滞在手術等基本料、がん化学療法の次回改定での見直しの方向性を確認する

2023.08.15

※このコラムは2023年8月15日時点の情報をもとにしております。

令和5年7月20日、第4回 入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催され、外来医療に関する現状報告と論点整理が行われた。外来については、外来機能報告制度がはじまり、ようやく紹介受診重点医療機関の公表が各都道府県で始まってきたところ。医療費適正化の観点も含めて、外来診療に関する議論の現況の一部をご紹介する。

まず、改めて確認しておきたいのは来年度からの第四期医療費適正化計画にある入院から外来への移行について。具体的には白内障手術と化学療法とがあげられ、各都道府県で6年かけて外来への移行割合を高めることになる。当然ながら、診療報酬における外来移行の後押しがあることは容易に考えられるだろう。

〇白内障手術の外来移行について

令和4年度診療報酬報酬改定では、短期滞在手術等基本料の要件が見直されたところ。具体的には、全身麻酔手術以外では麻酔科医の勤務はなくとも評価される項目ができたこと(図1)、DPC対象病院及び対象外病院においては対象となる患者は平均在院日数の計算対象及び重症度、医療・看護必要度の対象から除外されることとなった(図2)。

図1_短期滞在手術等基本料の見直し
図2_短期滞在手術等基本料の入院での取り扱いの見直し

入院から外来への移行は前回改定からすでに始まっていた。その結果、昨年7月時点では診療所で短期滞在手術等基本料1の届出数が大幅に増えた(令和3年:302施設 → 令和4年:2,047施設)。

白内障手術を含む短期滞在手術等基本料に関する本格的な議論はまだこれからだが、現在の政策の流れから注意しておきたいのは、地域包括ケア病床を有する病院での院内転棟割合を意識した積極的な白内障手術等が対象である短期滞在手術等基本料対象者の受入れだ。地域包括ケア病床に期待されているのは、在宅や施設の医療的バックアップ機能であることが本来のあるべき姿と考えれば、次回改定では第四期医療費適正化計画の流れを受けて、短期滞在手術等基本料の対象となる患者については院内転棟割合などの対象から除外とされる可能性なども考えられるかもしれないことをおさえておきたい。

〇がん化学療法について

令和4年度診療報酬改定で外来化学療法加算から切り離され、外来腫瘍化学療法診療料へと格上げされたところ。今回の議論の中では外来腫瘍化学療法診療料を届ていながらも、入院で化学療法を実施するケースが少なからず存在していることが明らかにされた。また、気がかかりなのは、急性期充実体制加算及び総合入院体制加算といった外来腫瘍化学療法診療料の届出が要件化されている病院においても入院で実施されているケースが実は少なくないことだ(図3)。

図3_外来腫瘍化学療法診療料の実施状況

今後考えられるのは、実績を伴う要件が設けられることや、急性期充実体制加算等では届出を要件化するのではなく、実績を問う内容へと変更されることなどが考えられるだろう。

また、治療と仕事の両立を支援していくことも外来がん化学療法を継続していくには重要だ。特に人口減少が進む地方都市においては、労働力と労働量の減少は地域経済に与える影響も大きい。時間外対応の状況について確認されているが、診療所において外来腫瘍化学療法診療料を届出る医療機関では自院において速やかな対応ができる体制がある施設の割合が高くない。その一方で、連携している医療機関での対応ができる体制は取れている施設は多かった。また、療養・就労両立支援指導料の算定割合が高くないことも明らかにされている。なお、療養・就労両立支援指導料の対象は他にも糖尿病や心疾患、若年性認知症などもある(図4)。

図4_療養・就労両立支援指導料

また、オンライン診療による対応でも評価されることとなっている。時間外・夜間の対応であったり、職場との連携などについて、診療報酬における高い評価や、外来腫瘍化学療法診療料などと療養・就労両立支援指導料を一体的に行うことを高く評価することなども検討されていくことになるだろう。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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