【医療業界動向コラム】第9回 地域を挙げて取り組む働き方改革でポイントになる「宿日直許可基準」と「専門職の採用・確保」

2022.09.06

令和6年度から始まる勤務医の労働時間上限規制、いわゆる勤務医の働き方改革。その実施に向けて、令和4年10月から医療機関勤務環境評価センターによる評価受審がはじまる。医師の働き方改革について改めて整理すると、時間外労働の上限規制は、「年960時間以内」(A水準)を原則とするが、医師の診療業務の特殊性を踏まえ、「年1,860時間」まで上限を緩和する特例水準(B水準、C水準)が設けられている。医療機関勤務環境評価センターによる評価受審とは、それら特例水準の適用を受けるためのもので、評価受審の結果を判断材料の一つとして都道府県から特例水準の指定を受けることとなる。評価受審に際しては「医師労働時間短縮計画(図1)」の提出が必要となっている。作成については、医師労働時間短縮計画作成ガイドラインが公表されているのでそちらを参考にすることとなる。なお、この「医師労働時間短縮計画」について、令和4年度診療報改定で「地域医療体制確保加算」が見直され、「医師労働時間短縮計画」の作成が要件に追加されたところだが、評価受審のために提出する物とは異なる点に注意が必要だ。評価受審のために提出する場合は、令和6年度以降のものを作成しなければならない。「地域医療体制確保加算」の場合は現在についての作成となる。

地域医療の確保を図る観点から早急に対応が必要な救急医療体制などの確保-① 地域医療体制確保加算の見直し 医師労働時間短縮計画について
図1:地域医療体制確保加算の見直し

注意したい「宿日直許可基準」

特例水準の適用を受ける病院においては、派遣先や副業先での勤務時間も含めた勤務時間の把握が必要となる。そうした中で課題となっているのが「宿日直許可基準」だ。派遣先等で「宿日直許可基準」が取得されていれば、時間外労働時間の問題をクリアしやすくなるため、特例水準の適用を目指す病院からの確認の連絡が近隣の医療機関にも増えていることだろう。そのため、新たに取得を目指す病院が多くなっているものの、許可基準が全国的に統一されていないといった問題も指摘されていることや、以前取得したものの許可証を紛失してしまい、新たに取得をしなければならない病院がある。許可証は再発行できず、再度申請が必要だ。申請先となる労働基準監督署にしてみると、医療機関に対してはそもそも忙しくて労働時間を守っていないのではないか、という先入観が強くあると考えられるので、根気強い対応が求められることとなる。
なお、これからの申請に際してだが、いきなり病院全部の診療科で申請するのではなく、見込みのありそうな診療科から申請し、他の診療科に横展開していくとよいだろう。

働き方改革の推進でコメディカルスタッフの業務内容の拡大

働き方改革の一連の推進に伴って、昨年の医療法改正では臨床検査技師などコメディカルスタッフの業務範囲の拡大が図れたことは記憶に新しい(図2)。また、コロナワクチン接種の人員確保のため、診療放射線技師なども対象に加えられるなど。今後も緊急事態においてはさらなる拡大の場面も出てくることが想定される。そのため、今後様々なコメディカルスタッフの採用に、病院間だけではなく、診療所も含めて競争になっていくことが考えられる点に注意したい。今後の採用活動などで意識しておきたい点だ。

法令改正を行いタスク・シフト/シェアを推進するもの
図2:タスク・シフトシェア推進に関する検討会_議論の整理の公表について

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

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