ケアプラン有料化とは?|有料化する可能性が高い領域や実施時期などを解説
2026.02.14
介護業界にとって関連法令や介護報酬の改定は非常に重要であり、改定の内容によっては介護事業所の経営に大きな影響を与えることがあります。
特に注意すべきは、以前から厚生労働省で議論されているケアプランの有料化です。
ケアプラン有料化は介護報酬改定のたびに積極的に議論されており、まだ実現されていませんが、今後実施される可能性は否定できません。
もしケアプランの有料化が実施されると決定された場合、居宅介護支援を行っている介護事業所は経営面においてさまざまな見直しを求められることになります。
そこで本記事では、ケアプランの有料化について解説します。現在の進捗状況や有料化された際の対策などについて解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
ケアプラン有料化の背景

ケアプランの有料化は現在進行形で議論されている課題です。
現状、ケアマネジメントは介護保険が10割給付されるため、利用者は実質的に無料で利用できます。これは、介護保険制度創設時にケアマネジメントが導入された際、より多くの利用者が活用できるように配慮されたためです。
しかし、昨今は介護保険給付の増加に伴う制度の持続可能性の維持など、重大な課題が山積しています。加えて、ほかの介護サービスとの公平性の観点からも、ケアプランの有料化が検討されるようになりました。
ケアプラン有料化の進捗状況
現状、ケアプランの有料化は決定されていませんが、厚生労働省は社会保障審議会・介護保険部会で議論を進めています。
そして2025年11月に厚生労働省はケアプランの有料化について、初めて具体案を発表しました。この具体案はあくまでたたき台であり、厚生労働省は複数のパターンを作成したうえで、有料化の導入の是非も含めて検討すると強調しています。
なお、厚生労働省は有料化にあたって、「実費相当分の負担を利用者に求める」「住宅型有料老人ホームの入居者には利用者負担を求める」など複数の形を検討しています。
一方、ケアプランの有料化は社会保障審議会・介護保険部会だけでなく、現場で働くケアマネジャーからも反対の声が上がっています。そのため、厚生労働省も慎重に検討している状況です。
有料化されるならいつから?
ケアプランの有料化は未確定であるものの、厚生労働省は2027年度の第10期介護保険事業計画期間の開始までに検討することを明示しています。つまり、今後の議論の結果によっては、2027年までに有料化を決定すると想定されます。
具体的な開始時期については、厚生労働省からの発表をチェックしましょう。
有料化するならいくら?
ケアプランが有料化した際、利用者負担は1,000円台になると想定されます。
利用者の要介護度や介護報酬制度の改定結果にもよるため一概にはいえませんが、仮に1割負担となった場合は1,000~1,500円程度になる可能性が高いでしょう。大きな金額ではありませんが、利用者にとっては少なくない負担となります。
有料化は先送りされている?
現状ケアプランの有料化が確定せず、2027年度まで検討が続く理由は、利用者負担が増加することへの懸念があるだけでなく、審議会や現場で反対の声が大きいこともあります。
例えば、一般社団法人日本介護支援専門員協会はケアプラン有料化の議論が始まったことに際し、意見表明を実施しました。意見の中では、有料化はもちろん、厚生労働省が提示する有料化のメリットに対しても慎重な議論を求めています。
加えて、大阪市内で実施されたケアマネジャー向けアンケートでは、約88%が有料化に反対していることが確認されました。それだけ現場の反対の声が根強いことがうかがえます。
参照:居宅介護支援費の利用者負担導入論についての意見表明|一般社団法人日本介護支援専門員協会
ケアプラン有料化問題大阪市内居宅介護支援事業所緊急アンケート結果報告書|大阪社会保障推進協議会介護保険対策委員会
ケアプラン有料化が検討される理由

ケアプランの有料化が検討される背景には、以下の理由があります。
- 持続可能な介護保険制度の実現
- ほかの介護職との公平化
- ケアマネジャーの質向上
それぞれの理由について、順番に解説します。
持続可能な介護保険制度の実現
持続可能な介護保険制度を実現するうえで、ケアプランの有料化に賛同する声は少なくありません。そもそも、介護保険の利用者負担と国からの給付は以下の割合で設定されていました。

しかし、昨今は高齢化が進行し、介護需要が高まっています。以下のグラフを見てみましょう。

グラフより、要介護認定率は85歳を越えると急速に高まることが読み取れます。そして、加速する高齢化により、日本では85歳以上の人口が今後増加することが予測されています。
このような状況で介護サービスを安定的に利用してもらうためにも、介護保険制度の維持は不可欠です。
しかし、介護需要の高まりとともに、保険給付費が高まっている点は無視できません。以下のグラフを見ると明らかです。

保険給付費は高齢化の進行とともに向上しており、すでに9兆円を超えています。
厚生労働省が発表した「令和6年度 介護給付費等実態統計の概況」を見ると、ここ2年間の居宅介護支援の保険給付費と利用者負担の合計は以下のように変動したことがわかります。
| 年度 | 費用額 (保険給付額+利用者負担額) (単位:100万円) |
| 2023年度 | 46,322(介護予防サービス) 535,683(介護サービス) |
| 2024年度 | 49,550(介護予防サービス) 552,298(介護サービス) |
上記より、居宅介護支援の費用額も増加傾向にあることがわかります。
持続可能な介護保険制度を維持するため、厚生労働省はこの課題への対処を求められています。そのため、ケアプランの有料化は介護保険制度を維持するための施策として位置付けられました。
ほかの介護職との公平化
ほかの介護職との公平化も、ケアプランの有料化が議論される理由です。
居宅介護支援は現状10割給付で対応されていますが、「ほかの介護職との間の利用者負担を踏まえて公平化すべき」といった意見も少なくありません。
特に住宅型有料老人ホームは、施設型サービスや特定施設と同様のサービスとなっているケースが多く、ケアプランの利用者負担の導入を求めることで公平化を図る意見も散見されます。
ケアマネジャーの質向上
ケアプランの有料化が、ケアマネジャーの質向上につながるとする意見もあります。ケアプランの有料化によって、利用者がより質の高いケアプランを求めるようになれば、自然とケアマネジャーが業務をブラッシュアップすることが想定されます。
また利用者負担を付加することにより、ケアマネジャーの仕事の価値を理解してもらうことも、ケアプランの有料化に期待されている効果です。
ケアプラン有料化が反対される理由

ケアプラン有料化に対する反対の声が根強い背景には、以下のリスクへの懸念があります。
- 利用控えが増加する
- ケアマネジャーを経由しない利用が増加する
- 利用者が選別される恐れがある
- ケアプランの公平中立性が崩れる可能性がある
- 居宅介護支援事業所の競争が激化する
上記のリスクは、介護事業所だけでなく利用者にとっても無視できないものです。もし有料化された際は、居宅介護支援事業所がそれぞれのリスクへの対応を検討する必要があります。
利用控えが増加する
ケアプランの有料化によって、もっとも懸念されるのが利用控えです。
ケアプランが有料化されると、利用者の出費が増えます。特に経済的な不安を抱える利用者の場合、有料化によってケアマネジャーを経由せずに介護サービスを利用する傾向が強まると予測されます。
当然、ケアマネジャーを経由しないと、利用者が本来必要な介護サービスを受けられないリスクが高まります。適切な介護サービスを受けなかった結果、利用者の要支援度・要介護度が重度化する事態になりかねません。
ケアマネジャーを経由しない利用が増加する
ケアマネジャーを経由しない介護サービスの利用が増加すると、結果的に利用者が不利益を被ったり、トラブルに巻き込まれたりする事態につながります。
ケアマネジャーを利用せず、利用者個人がケアプランを作成する「セルフプラン」は、現行制度でも認められています。しかし、さまざまな介護サービスの内容や介護保険制度は非常に複雑であり、専門家でないと理解は困難です。
有料化によって利用控えが増加した結果、慣れないセルフプランを作成することで利用者と介護事業所の間でトラブルが多発する恐れがあります。
利用者が選別される恐れがある
有料化によって、利用者が選別される恐れがある点も無視できません。
有料化が実施されると、介護事業所や居宅介護支援事業所の経営方針が変わります。事業所が得られる報酬が変わるため、ケアプランの作成やモニタリングに際し、手間や時間がかかると判断された利用者への対応を避けるリスクが高まります。
その結果、介護サービスを必要とする利用者が取り残される可能性もあるでしょう。
ケアプランの公平中立性が崩れる可能性がある
ケアプランの公平中立性が崩れる可能性についても、注意すべきリスクといえます。
有料化で利用者が「報酬を支払う立場」になると、ケアマネジャーが要望を拒否しにくくなります。そのため、客観的に見て必要な介護サービスを提供するより、利用者の要望を優先したケアプランを作成するケースが増加しかねません。
本来、ケアプランはアセスメントに基づき、公平中立性を意識して作成するものです。しかし、有料化を理由に過剰に利用者のニーズを取り入れたことで公平中立性が崩れれば、ケアプランの質が低下する事態になります。
居宅介護支援事業所の競争が激化する
居宅介護支援事業所の競争の激化も、十分懸念される事態です。
ケアプランが有料化されると、利用者やその家族は報酬を支払うこともあって、今まで以上にサービスの質などに注目するようになります。利用者によっては、ケアプランの作成を依頼そのものを慎重に検討することも考えられます。
当然、「報酬に見合わない」と判断されれば、ケアプランの作成を依頼されることはありません。そのため、介護事業所や居宅介護支援事業所は利用者を確保するためにも、ほかの事業所との差別化やサービスの質向上に注力する必要があります。
しかし競争が激化すると利用者の取り合いが発生し、財務基盤が弱い小規模な居宅介護支援事業所が不利な状況に陥ることが懸念されます。
ケアプランが有料化された際にすべき対応

もし、将来的にケアプランが有料化された際は、以下の対応を実施しましょう。
- 利用者とその家族への丁寧な説明
- 提供するサービスの見直し
- ケアマネジャーへのサポートの強化
- 多職種連携の緊密化
ケアプランの有料化が実施された場合、介護事業所の経営方針だけでなく利用者との関係にも変化が生じます。利用者へのサービス提供体制を守りつつ、介護事業所の安定的な経営を実現できるように心がけましょう。
利用者とその家族への丁寧な説明
まず重要なのは、利用者とその家族への丁寧な説明です。
これまで無料だったケアプランの作成が有料化すれば、利用者やその家族が困惑する事態が想定されます。今後も安定的に利用者にサービスを提供するためにも、有料化された背景や具体的な負担額などについての丁寧な説明は欠かせません。
利用者やその家族によっては、有料化に対して強い不満を訴えることも想定されます。安定的なサービス提供のためにも、ケアプランの有料化を理解してもらう必要があります。
提供するサービスの見直し
ケアプラン有料化に際し、提供するサービスの見直しも重要です。報酬をもらう形になる以上、利用者やその家族が納得できるサービスでなければ、事業所を利用してもらえなくなります。
一方、ケアプランの公平中立性を損なうことは厳禁です。あくまで従来のケアプラン作成の方針を守りつつ、サービスの質を高め、有料化に合わせた内容になるように調整することを心がけましょう。
必要があれば、研修などを通じてケアマネジャーのスキルアップを図ることも重要です。
ケアマネジャーへのサポートの強化
ケアプランの有料化に際し、ケアマネジャーへのサポートの強化も必要です。
有料化が実施されれば、ケアマネジャーは利用者やその家族への説明をより丁寧に行う必要があります。場合によっては、有料化への不満や苦情を受けるケースが増加することも想定されます。
精神的な負担を軽減するためにも、ケアマネジャーの勤務体制の見直しなどが重要です。
また、ケアプランが有料化されると、費用の徴収などこれまでにない業務が発生します。スムーズに業務を遂行するため、利用者対応の手順などを見直しましょう。
多職種連携の緊密化
ケアプランの有料化に備えた、多職種連携の緊密化も不可欠です。多職種との連携を強化し、より良いケアプランを作成できるようになれば、有料化が実施されても利用者やその家族から理解を得やすくなります。
多職種連携の緊密化は、ただケアプランやサービスの質を向上させるだけでなく、利用控えを防ぐうえでも重要な取り組みです。地域包括支援センター・民生委員会・ほかの介護サービスの事業所などと連携し、相互的に情報交換しましょう。
ケアプラン有料化とは、現在は介護保険給付として原則自己負担なく提供されているケアマネジメント(居宅介護支援・介護予防支援)について、将来的に利用者負担を求めることを検討する議論を指します。背景には、介護給付費の増大や制度の持続可能性への懸念があります。国の審議会では、第10期介護保険事業計画(2027年度開始)を見据え、負担のあり方や対象範囲、低所得者への配慮などが論点として整理されています。現時点では導入の有無や時期、金額は決定しておらず、あくまで検討段階です。そのため、確定情報として受け取るのではなく、今後の制度動向を注視する姿勢が重要です。また、現場の相談支援体制や利用者理解への影響も含め、丁寧な議論が求められています。一方で、有料化が進めば利用控えやセルフプラン増加、ケアマネジャーの役割変化など、利用者・事業所双方への影響が懸念されています。制度の趣旨と影響を冷静に捉える視点が欠かせません。
まとめ:ケアプラン有料化がいつ実施されても良いように備えておこう

ケアプランの有料化は先送りされていた側面があるものの、今後はより積極的に議論されることが予想されます。実際、厚生労働省がたたき台を作成・公開するなど、以前より内容が具体化されるようになりました。
ケアプランの有料化の実施は未確定ではあるものの、状況によっては実行される可能性は十分にあります。そのため、介護事業所・居宅介護支援事業所はケアプランの有料化に備え、適切な対策を講じておく必要があります。
本記事を参考に、適切なサービス提供ができる体制を整えましょう。
監修:梅沢 佳裕
人材開発アドバイザー
介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

