【医療業界動向コラム】第170 診療報酬改定率の決定を受けて、備えておきたいことを確認する/医療DXの推進に関する診療報酬の評価が議論される
2025.12.30
診療報酬改定、本体部分を+3.09%に。今後気を付けておきたいことは?
12月19日の夕刻に令和8年度診療報酬の改定率について、本体部分を+3.09%とする方針が決まった。また同日には、日銀金融政策決定会合が開催され、金利が引き上げられた。金利が上がるということは、景気のムードが良くなったように見え、多くの産業で給与が引き上げられていくことになる。そうなると、医療業界は他の産業と比較されることとなり、非専門職者を中心に人材の確保・採用に苦労することが考えられる。対策としては、既知の課題を明確にして職場環境の課題を一つひとつ改善していくことだろう。積極的に採用をしても、人材が定着しなければ意味がない。令和7年度補正予算では生産性向上に対する支援が用意されている(図1)。人材の定着を目指した中長期的視点を持って、持続可能な経営に必要なものをしっかり見極め、戦略的に補正予算を使っていくことを意識しておきたい。

医療DXの推進を加速するために診療報酬でどのように支援していくか?
令和7年12月19日、第637回 中央社会保険医療協議会 総会が開催され、医療DXに関連する診療報酬について議論された(図2)。医療DXの推進は、改正医療法でもうたわれているが、2030年までに電子カルテの導入100%を目指すなど積極的に取り組んでいくことになる。補助金等を利用してDX関連サービスを導入し、医療DX推進体制整備加算をはじめとする診療報酬で運用・保守メンテナンスを賄う、といった構造になっている。

オンライン資格確認について、医療DX推進体制整備加算の算定施設数・算定回数は増加し、最も高い加算1は大きく増えていることがわかった(図3)。医療DX推進体制整備加算の役割を終えたのでは、といった意見もあるなど、今後の評価の在り方について議論されている。

医療DX推進体制整備加算は、オンライン資格確認だけではなく、電子処方箋と電子カルテ情報共有サービスに関する評価でもある。マイナ保険証の利用率が今後も上昇していくことで、医療DX推進体制整備加算の構成要件から外れて、いずれは基本診療料に包括され、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスに対する支援に絞り込まれていくこともとも考えられるだろう。その場合は、基本診療料の点数を引き上げつつ、利用率に応じた減算規定が設定されることになるのではないだろうか。加算は、算定すべき医療機関の7割以上が算定したら、廃止され、基本診療料に包括されていくもの、そういった前提に立ってみておきたい。
ところで、電子カルテ情報共有サービスについては、モデル事業が複数箇所で始まり、検証のフェーズに入っている。3文書6情報のうち臨床現場で支障なく運用が可能な文書・情報から、来年の冬頃をメドに全国で利用可能な状態にすることを目指すとしている。
そこで、課題となるのが電子カルテそのものの導入についてだ。中小規模病院(200床未満)と診療所では50%をようやく上回ってきたという状況だ(図4)。

厚生労働省・デジタル庁では、標準型電子カルテの開発を進めている。紙カルテでの運用ができるもので、なるべくボタン操作ではなくクリック操作で完結できるように開発を進めているということだ。令和8年度中の完成を目指すとし、電子処方箋を同時に導入していくことなどが求められると考えられる。
DXの推進と合わせて対応が求められるのが、サイバーセキュリティ対策だ。ICT技術・サービスの進展とともに、サイバー攻撃をする側も対応してくる。病院のサイバーセキュリティ対策の現況調査結果から、セキュリティ対策に一定のコストが発生することが示され、現行の診療録管理体制加算だけではなく、基本診療料も含めた他の項目での支援となる評価の新設が検討されそうだ。

