【2025年版】訪問看護の夜間加算とは?時間帯・料金・算定要件をわかりやすく解説
2025.08.23

訪問看護の現場では、日中だけでなく夜間や深夜にも対応が求められるケースが少なくありません。
こうした時間帯の訪問には「夜間加算」が適用され、スタッフの時間外労働を正当に評価する仕組みが設けられています。
しかし、制度の内容や算定要件は複雑で、誤解や運用ミスが起きやすいのも実情です。
特に、夜間・深夜・早朝の違いや、緊急訪問との区別、介護保険と医療保険それぞれのルールを正確に理解しておく必要があります。
本記事では、「訪問看護 夜間加算」に関する基礎知識から、算定要件、ICTによる業務効率化の方法、介護ソフトの選び方までをわかりやすく整理しています。
訪問看護の夜間加算を理解するためにも、加算の取りこぼしや返戻を防ぐためにもぜひ参考にしてください。
目次
訪問看護における夜間加算の基本

訪問看護の報酬には、夜間や深夜といった時間帯によって加算される仕組みがあります。
これは、通常の訪問よりもスタッフの負担が大きくなることを考慮し、時間外労働に対して正当な評価を行う制度です。
訪問看護ステーションの安定した運営や、スタッフの働き方の適正化にも関わる、重要な加算でもあります。
夜間の訪問を評価する加算には、大きく分けて以下の2種類があります。
- 夜間・早朝訪問看護加算
- 深夜訪問看護加算
それぞれの対象時間帯や加算率は、介護保険と医療保険で異なるため、正確な理解が必要です。
ここでは、これらの加算の違いや対象時間、算定要件についてわかりやすく整理していきます。
夜間・早朝加算と深夜加算の2種類がある
介護保険における訪問看護では、午後6時〜翌午前8時までの時間帯にサービスを提供した場合、時間帯に応じた加算が適用されます。
加算には以下の2種類があり、それぞれ所定単位数に対して加算される割合が異なります。
加算の種類 | 時間帯 | 加算率 |
夜間・早朝加算 | 午後6時〜午後10時/午前6時〜午前8時 | 所定単位数の25% |
深夜加算 | 午後10時〜翌午前6時 | 所定単位数の50% |
加算の対象となるのは、訪問看護を受けている利用者で、その訪問があらかじめ居宅介護サービス計画または訪問看護計画に位置づけられた時間帯に行われている必要があります。
サービス提供時間が長時間にわたる場合には、加算対象の時間帯に占める割合が極端に少ないと、加算が認められないこともあるため注意が必要です。
緊急時訪問看護加算との役割の違い
夜間に行われる訪問には、いくつかの加算制度があり、なかでも「夜間加算」と「緊急時訪問看護加算」は混同されやすい項目です。
どちらも夜に訪問する点は共通していますが、評価の対象はまったく異なります。
夜間加算は、計画された訪問に対して適用される加算です。
例えば「午後6時〜翌朝8時」の時間帯に、あらかじめ訪問看護計画に記載された内容に沿ってサービスを提供する場合が該当します。
スタッフの時間外労働に対する正当な評価として、報酬に上乗せされる形です。
一方、緊急時訪問看護加算(介護保険)は、24時間体制で緊急対応ができる体制を整えていることが前提です。
利用者や家族からの連絡に応じて、計画外に訪問が発生した場合に適用される加算で、夜間・深夜に限らず、急な対応が求められる場面が対象になります。
医療保険ではこれに対応する形で「緊急訪問看護加算」の加算があり、こちらは主治医の指示のもと、病状の急変などにより緊急訪問を行ったときに算定されます。
まとめると、加算の評価対象は、以下のとおりです。
夜間加算 | 計画された時間帯に訪問した場合の評価 |
緊急時訪問看護加算(介護保険) | 24時間対応体制+計画外の訪問に対する評価 |
緊急訪問看護加算(医療保険) | 主治医の指示による計画外の医療的緊急訪問の評価 |
同じ夜間訪問でも、目的や訪問の成り立ちによって適用される加算は変わります。
実務では、この違いをしっかり理解しておくことで、加算漏れや誤請求を防ぐことができます。
訪問看護の夜間加算を算定するための条件

夜間加算は、時間外に訪問したからといって自動的に算定できるものではありません。
正しく加算するには、いくつかの算定条件を満たしている必要があります。
特に誤解されやすいのが、「24時間対応体制加算の届出が必要かどうか」や、「訪問が複数の時間帯をまたいだ場合の扱い」についてです。
レセプトの返戻を防ぐためにも、これらの注意点を正確に把握しておきましょう。
24時間対応体制加算の届出は不要
深夜帯(午後10時〜翌朝6時)に訪問看護を実施する場合でも、24時間対応体制加算の届出は原則として不要です。
夜間や深夜の訪問看護に対しては、「夜間・早朝加算」や「深夜加算」などの時間帯別の加算制度があり、それらは訪問の実施そのものに対する評価であるため、24時間対応体制の届出とは直接関係がありません。
一方、24時間対応体制加算は、訪問の実施にかかわらず「常時対応できる体制そのもの」を評価する加算であり、目的が異なります。
例えば、午後11時に計画訪問を実施した場合、深夜訪問看護加算の算定はできます。
この際、24時間対応体制加算の届出がなくても深夜加算は算定可能です。
ただし、24時間対応体制加算そのものを算定したい場合には、
- 24時間体制の確保
- 緊急時の対応体制の整備
など、別途所定の要件を満たし、届出が必要になります。
深夜帯の訪問看護と、24時間対応体制加算は別のものです。
深夜訪問そのものは届出なしで実施・算定可能ですが、24時間体制加算を算定するには、体制整備と届出が必要であることを区別しておきましょう。
計画的な時間帯訪問のみが対象
夜間・早朝・深夜加算は、計画に基づいた時間帯訪問でなければ算定できません。
これらの加算は「通常のサービス提供時間帯以外に訪問」に対する評価であり、訪問のタイミングが事前に訪問看護計画や居宅介護サービス計画に組み込まれていることが前提となります。
あくまで「予定されたサービス」であることが条件です。
例えば、午後10時に深夜の訪問看護を実施する場合、その訪問が訪問看護計画に記載され、利用者の同意が得られていれば、所定単位数の50%を加算できます。
一方で、急な容態変化などで計画外に深夜訪問した場合は、深夜加算ではなく「緊急加算」が適用される可能性があります。
深夜加算や夜間加算は、「深夜に行ったから加算できる」わけではなく、計画されていたかどうかが重要です。
算定ルールを正しく理解し、加算漏れや誤請求を防ぎましょう。
サービス提供が時間帯をまたぐ場合の計算
訪問看護や訪問介護で時間帯加算を算定する際は、サービス開始時刻が基本の判断基準になります。
ただし、提供時間が長く複数の加算時間帯にまたがる場合は、注意が必要です。
介護保険では、夜間・早朝・深夜に提供されるサービスに対して、それぞれ加算が設定されています。
原則として「サービス開始時間」が該当時間帯に含まれているかどうかで判断されますが、訪問が長時間に及ぶ場合は、提供時間の配分(割合)によって柔軟に算定が認められることがあります。
よくあるケースの計算例は、以下のとおりです。
ケース1:午後9時〜午前1時の訪問 |
開始時間:午後9時→夜間加算(25%)が適用 →提供時間内に深夜帯(午後10時〜翌6時)が含まれるため、深夜加算(50%)も併用して算定可能 |
ケース2:午前5時半〜午前7時の訪問 |
開始時間は早朝時間帯外(5:30)でも、6:00以降もサービス提供して →早朝加算(25%)の対象となる場合がある |
ケース3:午後5時半〜午後7時の訪問 |
開始時間が夜間加算の適用外(18:00前)で、夜間時間帯の割合が少ない → 加算対象外となる可能性が高い |
時間帯をまたぐ訪問では、「開始時間だけでなく、提供時間の構成」にも注意が必要です。
長時間訪問や複数時間帯にまたがるケースでは、加算の対象割合が十分あるかを確認し、適切な加算を漏れなく算定できるようにしましょう。
【医療保険】夜間・早朝・深夜加算の算定要件と料金

医療保険における夜間・早朝・深夜加算は、時間外の診療や訪問看護に対する正当な評価制度です。
通常の診療報酬に上乗せされるかたちで、診療時間や提供内容に応じて加算されます。
この仕組みは、緊急の医療対応やスタッフの負担に見合う報酬体系を支える重要な制度です。
なお、病院・診療所での外来と、訪問看護では加算要件や金額に違いがあるため、正確な理解が求められます。
外来診療における夜間等の加算は、以下の条件を満たす場合に算定可能です。
【加算の算定要件】 | ・平日:午前8時前または午後6時以降の診療 ・土曜日:正午以降の時間帯に受診した場合 ・日曜・祝日:終日加算の対象 ・深夜加算:午後10時〜翌朝6時に診療を実施 ・患者の要請に基づき緊急性の高い診療を行った場合・救急指定病院など、所定の医療機関で受診したケース |
【診療加算の点数】(※点数×10円が自己負担額) | ・時間外加算(初診):6歳未満200点/6歳以上85点 ・時間外加算(再診):6歳未満135点/6歳以上65点 ・休日加算(初診):6歳未満365点/6歳以上250点 ・休日加算(再診):6歳未満260点/6歳以上190点 ・深夜加算(初診):6歳未満695点/6歳以上480点 ・深夜加算(再診):6歳未満590点/6歳以上420点 |
年齢や診療時間帯によって点数は細かく設定されています。
制度の仕組みを理解しておくことで、患者への説明や算定判断にも役立ちます。
訪問看護でも、時間帯によって加算が設けられています。時間外にサービスを提供した場合、以下の条件を満たすと加算対象となります。
【訪問看護加算の算定要件】 | ・夜間(18:00〜22:00)、早朝(6:00〜8:00)、深夜(22:00〜翌6:00)に訪問を実施 ・訪問看護計画に記載された内容に基づいて提供されたサービスであること ・緊急訪問の場合、月2回目以降が加算対象(1回目は除外) |
【訪問看護加算の金額】 | ・夜間・早朝訪問看護加算:1回2,100円 ・深夜訪問看護加算:1回4,200円 ・緊急訪問看護加算:1回2,650円 |
なお、介護保険を利用している場合は、上記の金額ではなく「所定単位数に対する割合加算(夜間・早朝=25%、深夜=50%)」となります。
夜間訪問の管理・請求業務を効率化するICT活用

夜間訪問における管理や請求業務の精度を高めるには、ICTの活用が必要です。
手作業による記録や確認作業では、ヒューマンエラーや加算漏れが発生しやすく、運営側の大きな負担となってしまいます。
特に夜間や深夜の訪問では、訪問開始・終了時間の記録、加算対象かどうかの判定、訪問看護計画との照合など、通常の訪問よりも複雑な対応が求められます。
これをスタッフ個々の経験や記憶に頼っていると、記録ミス・算定ミス・返戻といったリスクを避けられません。
このような課題を解決するには、誰が・いつ・どの時間帯に訪問したかを正確に記録し、加算要件を確実に判定できる仕組みが求められます。
勤怠管理と加算対象を正確に記録する
夜間訪問の算定ミスを防ぐには、勤怠と訪問実績の正確な記録が必要です。
夜間や深夜の訪問看護では、加算の有無が「いつ誰がどこに訪問したか」「計画に沿っていたか」によって決まります。
紙の記録や口頭報告に頼っていると、記入漏れや記憶違いが生じやすく、加算漏れや返戻のリスクが高まってしまいます。
こうしたミスを防ぐためには、以下のような仕組みを備えたICTシステムの導入が有効です。
ICTを導入すれば以下のようなポイントがあります。
- 訪問開始・終了時間をリアルタイムで記録
- GPSやアプリで訪問場所・時間の自動記録
- 訪問看護計画と実績の照合を自動化
- 該当する加算項目を自動で表示
上記の機能を活用すれば、事務担当者が一つずつチェックする手間が省け、算定ミスや漏れを未然に防ぐことができます。
加えて、現場スタッフの負担も軽減され、記録にかかる負担も減るでしょう。
正確な勤怠と訪問実績の記録は、加算を確実に算定するための「土台」です。
ICTの力を借りて、制度に即した運用を実現していきましょう。
算定漏れや請求ミスを防ぐシステムを導入する
夜間訪問の請求業務で最も避けたいのは、加算の算定漏れや誤請求です。
訪問時間帯が複数にまたがる場合や、訪問看護計画と実績の整合性に問題がある場合、加算の判断が曖昧になりやすくなります。
人手での処理では確認漏れや集計ミスが発生しやすく、返戻や修正請求といった二次対応が発生するリスクも高まります。
このようなトラブルを防ぐには、次のようなシステム導入が有効です。
- 加算対象時間帯を自動で判定
- 訪問看護計画との突合チェック機能
- レセプト作成時に加算候補を自動表示
- 計画外訪問の警告・確認機能
仕組みを備えたICTツールを導入すれば、加算の取りこぼしや誤請求をシステムが先回りして防いでくれます。
結果として、請求業務の質が安定し、スタッフの負担も軽減されるでしょう。
加算制度を正しく理解していても、仕組みがなければ活かしきれません。
だからこそ、現場の実務に合ったシステムを活用し、ミスのない運用体制を整えていくことが必要です。
失敗しない介護ソフトの選び方を知る
ICT導入による業務改善の効果を最大化するには、自事業所に合った介護ソフトの選定が欠かせません。
導入しても現場に合わなければ、かえって負担が増えることもあります。
特に夜間加算や緊急訪問など、制度に関する機能が不十分なソフトでは、期待していた「ミスの防止」や「効率化」が実現しにくくなります。
操作が複雑だったり、帳票出力が非対応だったりするケースもあるため、導入前の見極めが大切です。
以下のポイントを押さえることで、現場で本当に役立つソフトを選ぶことができます。
- 夜間・深夜加算の自動判定機能があるか
- 訪問看護計画と実績の突合せ機能が搭載されているか
- 請求処理まで一貫して対応できる設計か
- 現場スタッフが直感的に使える操作画面か
- サポート体制や導入支援が充実しているか
特に、加算判定やレセプトへの反映がシームレスに行えるソフトは、算定ミスの防止に直結します。
導入前には必ずデモ操作や試用期間を活用し、現場の視点で使い勝手を確認しましょう。
介護ソフトは、制度に沿った運営を支えるための「しくみ」です。
だからこそ、加算の正確な算定や請求業務に役立つ機能を備えたものを選び、現場の負担を減らせる体制を整えていくことが大切です。
訪問看護における夜間加算は、通常のサービス提供時間外に行われる訪問を正当に評価するための仕組みです。
夜間・深夜・早朝といった時間帯別に加算率が定められており、その内容や算定要件の把握が大切です。
特に介護保険と医療保険では加算体系やルールが異なるため、制度ごとの違いを理解したうえで適切に対応しなければなりません。
加算漏れや誤請求は、収益への影響だけではなく、運営リスクを高める要因にもなります。
事務的なミスを防ぐには、訪問時間帯や勤怠を正確に記録し、訪問看護計画との整合性をシステム的での管理が有効です。
ICTを活用した介護ソフトを導入すれば、日々の記録・判定・請求までを一貫してサポートできます。
まずは自事業所での夜間訪問の管理体制を振り返り、制度に則った運用ができているかを確認してみましょう。

訪問看護における「夜間加算」は、スタッフの時間外労働に対して正当な評価を行う重要な仕組みです。特に「夜間・早朝加算」と「深夜加算」は、サービスの提供時間帯に応じて報酬が加算されるもので、訪問看護計画などに基づいた計画的な訪問であることが算定の前提となります。また、「緊急加算」との違いを明確に理解することも、実務上極めて重要です。訪問が複数の時間帯にまたがる場合には、開始時間だけでなく提供時間全体の構成も確認し、加算漏れや誤請求を防ぎましょう。制度の細かなルールを理解し、適切な運用を行うことで、スタッフの負担軽減と経営の安定、そして利用者への質の高いサービス提供につながります。実務担当者は最新情報を常に確認し、加算算定のポイントを押さえておくことが求められます。
まとめ|夜間加算の正確な理解で、ステーション経営を賢く運用しよう
訪問看護における夜間加算は、通常のサービス提供時間外に行われる訪問を正当に評価するための仕組みです。
夜間・深夜・早朝といった時間帯別に加算率が定められており、その内容や算定要件の把握が大切です。
特に介護保険と医療保険では加算体系やルールが異なるため、制度ごとの違いを理解したうえで適切に対応しなければなりません。
加算漏れや誤請求は、収益への影響だけではなく、運営リスクを高める要因にもなります。
事務的なミスを防ぐには、訪問時間帯や勤怠を正確に記録し、訪問看護計画との整合性をシステム的での管理が有効です。
ICTを活用した介護ソフトを導入すれば、日々の記録・判定・請求までを一貫してサポートできます。
まずは自事業所での夜間訪問の管理体制を振り返り、制度に則った運用ができているかを確認してみましょう。

監修:斉藤 圭一
主任介護支援専門員、MBA(経営学修士)
神奈川県藤沢市出身。1988年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、第一生命保険相互会社(現・第一生命保険株式会社)に入社。その後、1999年に在宅介護業界大手の株式会社やさしい手へ転職。2007年には立教大学大学院(MBA)を卒業。 以降、高齢者や障がい者向けのさまざまなサービスの立ち上げや運営に携わる。具体的には、訪問介護・居宅介護支援・通所介護・訪問入浴などの在宅サービスや、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅といった居住系サービス、さらには障がい者向けの生活介護・居宅介護・入所施設の運営を手がける。 また、本社事業部長、有料老人ホーム支配人、介護事業本部長、障害サービス事業部長、経営企画部長など、経営やマネジメントの要職を歴任。現在は、株式会社スターフィッシュを起業し、介護・福祉分野の専門家として活動する傍ら、雑誌や書籍の執筆、講演会なども多数行っている。