訪問看護のオンライン資格確認とは?手続きや補助金などについて解説

2025.07.20

2024年12月から原則義務化されたオンライン資格確認ですが、日々の業務に追われる中で、新たなシステムの導入や複雑な行政手続きに対応するのは大きな負担です。
実は導入する訪問看護ステーションが利用できる補助金があります。

しかし、申請の手順や必要な書類などがわからないと感じる方もいるのではないでしょうか。

本記事では、訪問看護ステーションが利用できるオンライン資格確認の導入補助金について解説します。
補助金制度を賢く活用し、ステーションの業務効率化と経営基盤の強化につなげるため、ぜひ参考にしてください。

訪問看護ステーションのオンライン資格確認とは

訪問看護ステーションにおけるオンライン資格確認は、利用者の健康保険資格をオンラインでリアルタイムに確認する重要な仕組みです。
従来、保険証を目視で確認し手作業でシステムに入力していましたが、この方法では転記ミスが発生したり、資格喪失に気づかずレセプトが返戻されたりするリスクがありました。

オンライン資格確認の導入により、常に最新の正確な資格情報を取得でき、これらの問題の防止が可能です。

具体的には、利用者のマイナンバーカードまたは健康保険証を専用端末で読み取ることで、オンラインで資格情報を確認します。
これにより、保険資格の有効期限や変更、自己負担割合などの情報を瞬時に把握できます。

このシステムは、医療DXの一環として国が推進しており、訪問看護ステーションの業務効率化と質の向上に貢献します。
正確な資格確認は、適切な医療費請求につながり、ステーションの経営安定にも寄与します。

また、資格喪失後の医療費請求を減らすことで、医療保険制度の健全性の保持にもつながります。

さらに、オンライン資格確認は利用者にとってもメリットがあります。
例えば、転職や引っ越しなどで保険証が変わった場合でも、最新の情報がすぐに反映されるため、安心してサービスを受けられます。

オンライン資格確認は訪問看護ステーションがより安全で質の高いサービスを提供し、地域医療に貢献していくことを実現するうえで重要な施策です。

参照:オンライン資格確認について|厚生労働省

オンライン資格確認の義務化

政府の方針に基づき、2024年12月2日より、原則としてすべての保険医療機関と薬局に対し、オンライン資格確認の導入が義務付けられました。
この義務化は、医療機関だけでなく、訪問看護ステーションも対象に含まれます。

これは、医療サービスの効率化と質の向上を図るための重要な施策です。

しかし、導入にあたっては、各医療機関や薬局の状況によって困難な場合も想定されます。
そのため、やむを得ない事情により期限までに導入が難しい事業者に対しては、特定の条件を満たすことで導入を猶予する経過措置が設けられました。

ただし、経過措置の適用を受けるためには、事前に猶予届を提出する必要があります。
この猶予届の受付はすでに終了しています。

現在、各訪問看護ステーションがどの経過措置に該当するかについては、厚生労働省が提供する医療機関等向け総合ポータルサイトで確認できます。
自身のステーションがどの区分に該当するかを確認し、必要な対応を進めることが重要です。

ポータルサイトでは詳細な情報が提供されており、導入に関する疑問や不明点を解消するためのサポートも用意されています。

参照:オンライン資格確認について|厚生労働省

オンライン資格確認に必要な設備

オンライン資格確認を導入するためには、いくつかの専用設備を準備する必要があります。
訪問看護ステーションの環境によって必要なものは異なりますが、主に以下の機器や環境整備が求められます。

機器/システム説明
資格確認端末利用者のマイナンバーカードを読み取るための機器です。顔認証付きカードリーダーや、ICカードリーダーなどがあります。
パソコン等の電子計算機資格確認端末を接続し、情報を表示・管理するためのパソコンが必要です。既に業務で使用しているパソコンを活用できる場合もあります。
オンライン請求が可能なネットワーク環境安全に通信を行うため、原則としてIP-VPN接続方式に対応した光回線の整備が推奨されています。
レセプトコンピューター(レセコン)などの改修現在使用しているレセコンがオンライン資格確認に対応していない場合、システムの改修やソフトウェアの更新が必要です。

上記の設備投資が負担にならないよう、国は補助金制度を設けています。

オンライン資格確認導入の補助金

訪問看護ステーションがオンライン資格確認を導入するにあたり、大きな助けとなるのが国からの補助金です。
本章では、オンライン資格確認の補助金の概要について以下のように解説します。

  • 補助金の上限と対象
  • 補助金の申請期限

実際に補助金を申請するうえで重要な情報になるため、必ず把握しておきましょう。

補助金の上限と対象

補助金の交付額は、1ステーションあたり42.9万円を上限として、導入にかかった実費が支援されます。
この補助金は、幅広い費用をカバーしており、事業者の負担を大幅に軽減することを目的としています。

補助金の対象となる主な費用項目は以下のとおりです。

No.補助対象項目具体例
1資格確認端末の購入費用・顔認証付きカードリーダー
・ICカードリーダー
・電子証明書の発行手数料
2ソフトウェア購入・改修費用・レセプトコンピューター(レセコン)のシステム改修費
・オンライン資格確認対応のパッケージソフト購入費
3ネットワーク関連費用・光回線などのネットワーク初期導入費用
・ルーターなど、必要なネットワーク機器の購入費・既存回線の帯域増強(スピードアップ)費用
4モバイル関連費用・訪問先で資格確認を行うためのスマートフォンやタブレット端末の購入費用
5その他導入経費・導入支援事業者による実地指導やセキュリティ研修にかかる費用

上記のように、ハードウェアの購入だけでなく、システムの改修や訪問先で利用するモバイル端末まで幅広く補助対象となっているのが特徴です。
これにより、ステーションの実情に合わせた柔軟なシステム構築が可能になります。 

参照:保険医療機関等向け医療提供体制設備整備交付金実施要領|医療機関等向け総合ポータルサイト

補助金の申請期限

補助金の申請期限は、事業者の状況によって異なります。
特に、期限までに導入が間に合わない事業者向けに設けられた「経過措置」の猶予届を提出したかどうかが重要なポイントです。

なお、経過措置は以下の事情に該当する場合に認められます。

やむを得ない事情交付対象事業完了期限補助金申請期限
(1)令和 6 年 10 月末までにシステム事業者と契約締結したが、導入に必要なシステム整備が未完了の訪問看護ステーション (システム整備中)令和7年6月30日令和7年9月30日
(2)オンライン資格確認に接続可能な光回線のネットワーク環境が整備されていない訪問看護ステーション(ネットワーク環境事情)令和7年12月31日令和8年3月31日
(3)改築工事中の訪問看護ステーション令和7年6月30日令和7年9月30日
(4)休止に関する計画を定めている訪問看護ステーション令和7年6月30日令和7年9月30日
(5)その他特に困難な事情がある訪問看護ステーション
※常勤の看護職員その他の従業者の年齢が平成30 年3月31日において、いずれも65歳以上である場合(介護保険におけるオンライン請求の経過措置と同じ)
※(1)~(4)の類型と同視できるか個別判断
令和7年6月30日令和7年9月30日

参照:保険医療機関等向け医療提供体制設備整備交付金実施要領|医療機関等向け総合ポータルサイト

2025年6月7日現在、通常の申請期間は終了していますが、猶予届が受理されている場合は、以下の期限まで申請が可能です。

猶予届の提出状況導入完了期限補助金申請期限
猶予届を提出していない令和6年11月30日令和7年5月31日
猶予類型2・4・5・ 6 で受理済み令和7年6月30日令和7年9月30日
猶予類型3 で受理済み令和7年12月31日令和8年3月31日

自ステーションがどの類型に該当し、いつまでに申請が必要なのかを正確に把握することが非常に重要です。
猶予届の提出状況は、医療機関等向け総合ポータルサイトにログインすることで確認できます。 

参照:保険医療機関等向け医療提供体制設備整備交付金実施要領|医療機関等向け総合ポータルサイト

補助金申請の必要書類一覧

補助金の申請手続きはオンラインで行いますが、事前にいくつかの書類を準備しておく必要があります。
不備なくスムーズに申請を完了させるため、以下のリストを確認し、計画的に準備を進めましょう。

No.書類名入手方法備考
1領収書(写)システムベンダーから発行導入費用の支払いを証明する書類。原本をスキャンまたは撮影したもの。
2領収書内訳書システムベンダーから発行領収書の金額の内訳が記載されたもの。領収書との合計金額が一致している必要があります。
3補助金交付申請書ポータルサイトからダウンロード必要事項を記入し、ステーションの代表者印を押印したもの。
4オンライン資格確認等事業完了報告書ポータルサイトからダウンロード導入完了後に、システムの稼働状況などを報告するための書類です。

上記の書類は、申請時にポータルサイトへアップロードして提出します。
特に、システムベンダーから受け取る領収書と領収書内訳書は、申請の根幹となる重要な書類ですので、発行されたら大切に保管してください。

オンライン資格確認の補助金申請の流れ

オンライン資格確認の補助金申請は「手続きが煩雑で難しそう」と感じる方もいるかと思いますが、全体の流れを把握すれば、落ち着いて対応できます。
補助金が交付されるまでのプロセスは、大きく分けて以下の5つのステップです。

ステップ詳細
システム導入と支払いまず、システムベンダーと契約し、オンライン資格確認に必要な機器の設置やシステムの改修を完了させます。導入完了後、ベンダーから発行された請求書に基づき、費用の支払いを精算します。
領収書と内訳書の受領支払い完了後、ベンダーから必ず領収書と領収書内訳書を受け取ります。これらは補助金申請に必須の書類です。
ポータルサイトでのアカウント登録申請は医療機関等向け総合ポータルサイトから行います。事前にサイトでアカウントを作成しておく必要があります。
必要書類の準備とアップロード前のセクションで解説した必要書類をすべて準備します。領収書などの紙の書類はスキャンしてデータ化し、ポータルサイトの申請フォームにアップロードします。
申請と審査・交付すべての情報の入力と書類のアップロードが完了したら、申請内容を送信します。その後、支払基金による審査が行われ、承認されると指定した口座に補助金が振り込まれます。 

上記の流れを把握したうえで、各ステップで必要な作業を一つずつ着実に進めていきましょう。

オンライン資格確認の補助金申請の注意点

補助金を確実に受給するためには、いくつか注意すべきポイントがあります。
申請で失敗しないために、以下の点を必ず押さえておきましょう。

  • 分割申請や複数回申請はできない
  • 書類の電子化を進める

それぞれについて、順番に解説します。

分割申請や複数回申請はできない

補助金の申請は、1つの訪問看護ステーションにつき1回限りです。
例えば、「先にカードリーダーの分だけ申請して、後からレセコン改修の分を申請する」といった分割申請はできません。

システム導入にかかったすべての費用が確定し、関連する領収書がすべて揃ってから、一度にまとめて申請する必要があります。
申請漏れがないよう、導入にかかる費用の全体像を事前にしっかりと把握しておきましょう。

つまり、補助金申請を行う際は、補助金対象となるものの費用をすべて洗い出す必要があります。
それぞれの見積もりを取り、最終的な導入費用を確定させてから申請手続きを進めることが重要です。

また、領収書の保管も非常に重要です。
申請時には、各費用の明細が記載された領収書原本(またはそのコピー)を提出する必要があります。

紛失したり、内容が不鮮明な場合は、補助金が支給されない可能性もありますので、しっかりと管理しましょう。

申請期限も設けられていますので、余裕を持って準備を進めることが大切です。
期限を過ぎてしまうと、補助金を受け取れなくなります。

補助金事務局のWebサイトなどで、最新の情報を確認するようにしてください。

書類の電子化を進める

補助金を申請する際は、各種書類の電子化を進めましょう。

補助金の申請は、オンライン上の医療機関等向け総合ポータルサイトで完結することもあり、紙媒体での申請は受け付けられません。
そのため、システムベンダーから提供される領収書や内訳書などの書類は、事前に電子データ化しておく必要があります。

もし紙媒体で書類を受け取った際は、スキャナやスマートフォンのカメラを用いて、PDFまたはJPEG形式のファイルに変換してください。

申請期間が開始される直前になって慌てることがないよう、書類を受け取った時点で速やかにデータ化しましょう。
データ化されたファイルは、アップロード前に必ず内容を確認しましょう。

特に、文字が鮮明に読み取れるかどうかは重要なポイントです。
不鮮明な画像では、審査に時間がかかったり、最悪の場合、申請が却下されたりする可能性があります。

ファイル名も重要な要素です。
ファイル名には、内容を正確に表す名前を付けるように心がけましょう。

例えば、「〇〇システム_領収書_2024年4月」のように、システム名・書類の種類・日付などを組み合わせて命名することで、後から見返しやすくなります。
また、ファイルサイズが大きすぎると、アップロードに時間がかかったり、システムによってはアップロードできなかったりする場合があります。

必要に応じて、画像の解像度を調整するなどして、ファイルサイズを小さくするようにしてください。

梅沢 佳裕 氏
梅沢 佳裕 氏

訪問看護におけるオンライン資格確認の義務化は、2024年12月2日から原則開始され、利用者の健康保険資格をリアルタイムで確認する重要な仕組みです。従来の目視・手作業によるミスやレセプト返戻のリスクを解消し、業務効率化、請求の正確性向上、質の高いサービス提供に繋がります。導入には専用端末、PC、ネットワーク環境、レセコン改修などが必要ですが、国は1ステーションあたり上限42.9万円の補助金を設けており、ハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク費用などを幅広くカバーします。このシステム導入は、単に義務への対応だけでなく、医療DX推進と長期的な経営基盤強化に不可欠な第一歩です。自事業所の状況をポータルサイトで確認し、計画的な導入と補助金活用で、質の高い訪問看護サービス提供と働きやすい環境づくりを実現することが期待されます。

補助金を賢く活用し、訪問看護のオンライン資格確認を推進しよう

今回は、訪問看護ステーションにおけるオンライン資格確認の導入と、その費用負担を軽減する補助金制度について詳しく解説しました。
オンライン資格確認の導入にはさまざまなコストが発生しますが、補助金制度を活用すれば訪問看護ステーションの負担を削減できます。

なお、オンライン資格確認の導入は、単に義務に対応するためだけではありません。
日々の請求業務を効率化し、スタッフの事務負担を軽減することで、本来の業務である利用者へのケアにより多くの時間をあてられるようになります。

これは、訪問看護ステーション全体のDX化を推進し、長期的な経営基盤を強化するための重要な第一歩です。
ぜひこの機会に補助金制度を最大限に活用し、質の高い訪問看護サービスの提供と、働きやすい環境づくりを実現してください。

監修:梅沢 佳裕

人材開発アドバイザー

介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

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