【介護業界動向コラム】第10回 ICT導入における補助金の活用
2025.04.30

「ICT化が必要だとわかっていても、費用の高さに二の足を踏んでいる――」
そんな声を、現場でよく耳にします。これまでのコラムでは、業務効率化に役立つ様々なICT機器をご紹介してきました。しかし、機器によっては数百万円から数千万円単位の費用がかかることもあり、導入は簡単な決断ではありません。そこで第10回目となる今回は、ICT導入に欠かせない「補助金活用」について、わかりやすくお伝えします。
介護事業所がICT導入に活用できる代表的な補助金が、各自治体で実施されている介護テクノロジー導入支援事業です。交付額は年々増加傾向にあり、今後も継続が見込まれています。
具体的な実施内容、補助率、補助上限額などは自治体によって異なりますが、一般的に補助率は3/4、補助対象は大きく分けて介護ロボット、ICT、パッケージ型導入の3種類です。厚生労働省の資料に基づき、令和7年度からの変更点を踏まえて説明します。
まず、全体的なところでは、従来は補助対象に含まれなかった養護老人ホーム等が対象に追加され、より多くの事業所で補助金を活用できるようになります。また、共通要件として第三者による業務改善支援を受けることが必須となります。ここでいう第三者とは、弊社のような外部コンサルティング会社や、各自治体の介護生産性向上総合相談センターなどが該当します。
介護ロボットの補助対象となるのは、「介護テクノロジー利用の重点分野」に該当するロボットです。見守り機器はこちらに分類されます。令和7年度から重点分野が改訂されていますが、資料には「カタログ方式を導入」するとあります。従来はどの機器が補助金対象となるのか判断しづらく、自治体によっても判断にバラつきがあったことの改善が期待されます。
ICTの補助対象となるのは、主に介護記録ソフトの導入で、加えてタブレットやスマートフォンなどの端末、インカムなどが含まれます。申請にあたって要件がいくつかありますが、変更点として在宅系事業所では「ケアプランデータ連携システムを利用し、かつデータ連携を行う相手となる事業所が決定していること」が新たに加わっています。
パッケージ型導入では、複数のテクノロジーを連動することで導入する場合に必要な経費が補助対象となり、介護ロボット・ICTの両方の要件を満たすことで、補助上限額が400~1,000万円となります。
補助金の交付要綱が公開される時期は自治体によって異なりますが、多くは毎年同時期にWebサイトなどで告知されます。申請を検討している介護事業者は、前年度の情報を参考に、要綱の公開時期や申請期間を事前に確認しておきましょう。
要綱が公開されてから申請締め切りまでの期間は、長くても1~2か月、短い場合は2週間程度ということもあります。申請には、導入する製品の見積書などの提出も求められるため、要綱の内容を確認してから準備を始めると間に合わない可能性があります。したがって、介護事業者側としては、遅くとも3か月前から申請準備を始めるのが安全です。また、できれば中長期的なICT導入計画を策定しておき、補助金が利用可能になったタイミングでスムーズに動ける体制を整えておくことが重要です。
とはいえ、製品選定や導入後の業務改善を、介護事業者だけで進めるのは大変です。実際、補助金の要件には「第三者による業務改善支援」が盛り込まれており、国としても外部の専門家の力を借りながら進めることを推奨しています。もし「何から始めたらいいか分からない」というときは、小さなご相談からでも大歓迎です。どうぞお気軽にお声がけください。

竹下 康平(たけした こうへい)氏
株式会社ビーブリッド 代表取締役
2007 年より介護事業における ICT 戦略立案・遂行業務に従事。2010 年株式会社ビーブリッドを創業。介護・福祉事業者向け DX 支援サービス『ほむさぽ』を軸に、介護現場での ICT 利活用と DX 普及促進に幅広く努めている。行政や事業者団体、学校等での講演活動および多くのメディアでの寄稿等の情報発信を通じ、ケアテックの普及推進中。