エイジテックとは?注目される背景・市場規模・介護業界での活用例などを解説

2026.03.12

近年はDXやICTへの注目度の高まりもあり、介護業界でも積極的に先進技術を導入するケースが増えています。
特に介護に直接的に役立つ技術は、人手不足などの課題を抱える介護施設にとって非常に魅力的です。

そのような環境の中、昨今は「エイジテック」にも注目が集まるようになりました。
エイジテックとは、先進技術を活用した高齢者向けの製品やサービスなどを指す用語です。

本記事では、エイジテックの定義や市場規模、活用例などについて解説します。
介護の仕事をよりスムーズにするため、ぜひ参考にしてください。

エイジテック(AgeTech)とは?

本章では、エイジテックの基本的な定義と、その対象となる幅広い領域について解説します。
導入を検討するうえでも、基本をしっかりと押さえていきましょう。

エイジテックの定義と対象領域

エイジテックとは、「Age(年齢)」と「Technology(技術)」を組み合わせた造語です。
一般的に、高齢者が直面する健康・生活・社会参加などの課題を、AI・IoT・ロボットといった先進技術を活用して解決する製品やサービスの総称を指します。

しかし、エイジテックの対象は高齢者本人だけにとどまりません。
エイジテックは高齢者を支える家族や介護従事者、さらには将来の高齢期に備える若年層(プレシニア層)まで、幅広い世代のウェルビーイング(幸福)に貢献するものです。

対象者具体的なニーズ・課題
高齢者本人健康維持・自立した生活の継続・社会的孤立の解消・生きがいづくり
家族遠隔での見守り・介護負担の軽減・円滑なコミュニケーション
介護従事者・施設業務効率化・人手不足の解消・ケアの質の向上
プレシニア層将来の健康不安の解消・資産形成・介護への備え

上記のように、エイジテックは多様なステークホルダーの課題に応える、非常に裾野の広い領域です。

エイジテックの市場規模

エイジテック市場は、世界的な高齢化の進展を背景に、驚異的なスピードで拡大しています。
野村資本市場研究所の報告によれば、世界のエイジテック市場は2025年には約2.7兆ドルに達すると予測されています。

また、高齢者の消費活動全体を指す「シルバーエコノミー」の視点で見ると、その経済的インパクトはさらに巨大です。
AARPの報告では、50歳以上の層が世界経済に与える影響は、2050年までに約118兆米ドルに達するとされています。

日本は世界で特に高齢化が進んでおり、エイジテックが解決すべき課題が山積している状況です。
こうした現状から、日本こそ積極的にエイジテックを導入すべき環境にあるといえるでしょう。

参照:Age Tech:エイジテック(高齢者×テクノロジー)|野村資本市場研究所

エイジテックが注目される背景

エイジテックが注目される背景には、日本が直面する「2025年問題」があります。

「2025年問題」は、日本国内において「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、国民の4人に1人が後期高齢者になる超高齢社会に突入することを指す言葉です。

「2025年問題」は、社会に以下のような深刻な影響をもたらします。

社会課題具体的な内容
医療・介護費の増大後期高齢者の増加に伴い、国の社会保障費が急増し、財政を圧迫する
生産年齢人口の減少働き手が減る一方で、介護を必要とする高齢者が増加し、介護現場の人材不足が深刻化する
介護離職の増加家族の介護のために働き盛りの世代が仕事を辞めるケースが増え、経済的な損失につながる
参照:我が国の人口について|厚生労働省
   ポスト2025年の医療・介護提供体制の姿(案)|厚生労働省

エイジテックは、これらの社会課題に対する有効な解決策として期待されています。
テクノロジーの力で介護現場の生産性を向上させたり、高齢者の健康寿命を延ばして医療費を抑制したりすることで、持続可能な社会の実現が期待できます。

介護現場におけるエイジテック

特に人手不足が深刻な介護現場では、エイジテックは非常に重要です。
テクノロジーは、これまで人の手に頼らざるを得なかった業務を代替・支援し、介護従事者の負担を大幅に軽減する可能性を秘めています。

特に高齢者の自立支援や健康管理などに役立つエイジテックは、介護職員の負担を減らすだけでなく、利用者自身の安全や身体機能の維持につながります。
また、先進技術の導入は介護サービスの質を向上させ、介護施設の評価を高めるきっかけにもなります。

エイジテックの具体的なサービス・商品事例

エイジテックの全体像を掴んだところで、次に具体的な製品やサービスを見ていきます。
本章では、事業領域を大きく以下の分野に分け、それぞれの代表的な事例を紹介します。

  • 医療・ヘルスケア分野
  • 介護支援・業務効率化分野
  • 生活支援・見守り分野
  • 金融・資産管理分野

それぞれの分野について、順番に解説します。

医療・ヘルスケア分野

医療・ヘルスケア分野のエイジテックは、高齢者の健康寿命を延ばし、QOL(生活の質)を維持するために不可欠な領域です。
ウェアラブルデバイスによる日々の健康管理からオンラインでの診療まで、多様なサービスが生まれています。

代表的なものは以下のとおりです。

製品・サービス例特徴・機能解決する課題
ウェアラブルデバイス心拍数・血中酸素濃度・睡眠・転倒検知などを常時モニタリングする日常生活における健康状態の把握・急な体調変化の早期発見
持続血糖測定器(CGM)センサーを腕などに装着し、血糖値の変動をリアルタイムで可視化する糖尿病患者の血糖管理の負担軽減・生活習慣病の予防
オンライン診療システムスマートフォンやパソコンを使い、自宅から医師の診察を受けられる通院が困難な高齢者の医療アクセス向上・感染症リスクの低減
減塩スプーン微弱な電流で塩味を疑似的に増強させ、減塩食でも満足感を得られる高血圧などの生活習慣病予防に向けた無理のない減塩の実現

介護支援・業務効率化分野

介護現場の人手不足を解消し、持続可能な介護サービスを実現するためのテクノロジーです。
記録や計画作成といった間接業務の効率化から、介助のような直接的な身体的負担の軽減まで、幅広いニーズに対応しています。

ソフトウェア開発やAI技術、ロボティクス技術などが中心となる分野です。

製品・サービス例特徴・機能解決する課題
介護記録ソフトスマホで簡単に介護記録を入力・共有。ケアプラン作成も支援記録業務の効率化・介護職員間のリアルタイムな情報共有
排泄予測デバイス超音波センサーで膀胱の変化を捉え、排尿のタイミングを通知トイレ誘導の最適化・おむつ交換の負担軽減・利用者の尊厳維持
AI送迎計画最適化システム利用者の住所や希望時間、車両情報を基に、AIが最適な送迎ルートを自動作成送迎計画作成にかかる時間の削減
移乗支援ロボット装着型ロボットが介護者の動きをアシストし、身体的負担を軽減腰痛などの職業病予防・安全な移乗介助の実現

生活支援・見守り分野

高齢者が住み慣れた自宅で、安全かつ自立した生活を続けられるように支援するテクノロジーです。
IoTセンサーによるさりげない見守りから、家族とのコミュニケーションを円滑にするサービスまで、多岐にわたります。

製品・サービス例特徴・機能解決する課題
スマートホーム(IoTセンサー)人感センサーや開閉センサーで生活リズムを把握し、異常があれば通知室内での転倒や体調不良の早期発見・プライバシーに配慮した見守り
見守りサービススマホで撮った写真や動画を、実家のテレビに直接送信・表示できるデジタル機器が苦手な高齢者との円滑なコミュニケーション・社会的孤立の解消
みまもり電池乾電池型のデバイス。テレビリモコンなどに入れると、使用状況をスマートフォンに通知遠隔で暮らす親のさりげない安否確認・生活リズムの把握
GPS搭載シューズ靴にGPS端末を内蔵。認知症の方の徘徊時に位置情報を特定できる徘徊による行方不明の防止・家族や介護者の精神的負担軽減

金融・資産管理分野

高齢期における特有の課題である、資産管理・相続・金融詐欺といった問題に対応する分野です。
金融(Finance)とテクノロジーを融合させた「フィンテック」の一領域であり、異業種からの参入も活発です。

製品・サービス例特徴・機能解決する課題
家族信託サービスデジタル技術を活用し、複雑な家族信託の手続きをオンラインで簡素化・効率化認知症による資産凍結リスクの防止・スムーズな資産承継の実現
金融機関向け見守りサービスATMでの高額な引き出しや不審な振り込みなどを検知し、家族に通知高齢者を狙った特殊詐欺の被害防止・財産の保護
相続手続き支援サービス煩雑な相続手続きをサポートするプラットフォームを提供遺族の事務的な負担軽減・相続トラブルの予防

介護業界でのエイジテックの活用例

本章では、以下の立場から見た具体的な活用例を整理します。

  • 利用者が活用できるエイジテック
  • 介護現場で活用できるエイジテック
  • 利用者の家族が活用できるエイジテック

誰の、どのような課題を解決したいのかを明確にすることが、適切な運用の第一歩です。

利用者が活用できるエイジテック

利用者本人が使うエイジテックは、生活を豊かにし、精神的な安定を得るうえで有用です。
テクノロジーが身体機能の低下を補い、社会とのつながりを維持する手助けをします。

代表的なものは以下のとおりです。

製品・サービス例活用例
コミュニケーションロボット会話やレクリエーションの相手となり、孤独感を和らげる
オンライン趣味講座自宅にいながら、全国の人々と共通の趣味(囲碁・カラオケなど)を楽しめる
スマートスピーカー声だけで家電を操作したり、ニュースを聞いたりでき、生活の利便性が向上する

介護現場で活用できるエイジテック

介護従事者の負担を軽減し、より質の高いケアに集中できる環境を整えます。
人手不足の解消や業務の効率化に役立つツールが多く、介護現場にとって非常に有用です。

代表的なものは以下のとおりです。

製品・サービス例活用例
インカムシステム介護職員同士がリアルタイムに情報共有でき、スムーズな連携が可能になる
睡眠センサー利用者の睡眠状態(眠りの深さ、呼吸など)をデータで把握し、個別に最適なケアを提供できる
リハビリ支援ロボットゲーム感覚で楽しくリハビリに取り組め、利用者の意欲向上と機能回復を支援する

利用者の家族が活用できるエイジテック

離れて暮らす親を想う家族に、安心と新たなコミュニケーションの形を提供します。
介護の負担を分かち合い、家族の絆を深めるきっかけにもなります。

代表的なものは以下のとおりです。

製品・サービス名活用例
服薬支援サービス設定した時間に薬ケースが光って知らせ、服用すると家族のスマートフォンに通知が届く
オンライン帰省ツール大画面の専用デバイスなどを通じて、まるで同じ空間にいるかのような臨場感で会話できる
介護相談プラットフォームケアマネージャーや専門家に、オンラインで気軽に介護の悩みを相談できる

医療現場で活用できるエイジテック

介護と医療の連携は、高齢者の健康を守るうえで非常に重要です。
エイジテックは介護と医療の間にある情報の壁を取り払い、シームレスなサポート体制の構築に貢献します。

代表的なものは以下のとおりです。

製品・サービス例活用例
多職種連携ツール医師・看護師・ケアマネージャーなどが、クラウド上で利用者の情報を安全に共有できる
バイタルデータ連携介護施設で測定した利用者の血圧や体温などのデータを、かかりつけ医と自動で共有する
退院支援システム病院から在宅や介護施設へスムーズに移行できるよう、関係者間の情報伝達や調整を支援する

エイジテックを導入する際にありがちな課題

エイジテックを実際に介護現場に取り入れる際は、以下の課題に注意しましょう。

  • 導入コストが発生する
  • 利用者が忌避するリスクがある
  • 現場が技術の全容を理解する必要がある

それぞれ順番に見ていきましょう。

導入コストが発生する

エイジテックに限らず、高性能な機器やシステム導入には初期投資とランニングコストが発生します。

エイジテックに該当する製品の導入コスト・ランニングコストの相場は以下のとおりです。

製品例初期費用(導入コスト)ランニングコスト(月額)
介護記録システム・ICT基盤百万円〜数百万円以上約1万円〜10万円
AI見守り・バイタルセンサー数十万円(1室あたり)約1千円〜5千円
(1室あたり)
移乗支援(装着型)数十万円〜数百万円
(1台あたり)
約1万円〜5万円
移乗・移動支援(非装着型)数十万円〜約100万円
(1台あたり)
約1万円〜5万円


業務削減時間や人件費抑制効果を具体的に算出し、費用対効果を可視化しましょう。

また、国や自治体によっては、関連の補助金・助成金制度が用意されていることもあります。
利用できる制度を活用し、初期投資の負担軽減を図ることも重要です。

さらに、初期費用を抑えたサブスクリプション型のビジネスモデルを検討することで、導入のハードルを下げられます。

コストを抑えつつ高性能な機器やシステムの導入を実現し、業務効率化や生産性向上につなげましょう。

利用者が忌避するリスクがある

利用者のなかには、新しいテクノロジーに対して心理的な抵抗感を持つ方も少なくありません。
「監視されているようで嫌だ」「操作が難しそう」といった理由で、利用を拒否されるケースも想定されます。

抵抗感を軽くするためには、多角的なアプローチが必要です。

例えば、誰でも直感的に使える・シンプルでわかりやすいUIのツールであれば、初めて先進技術に触れる利用者でも気軽に利用できます。
また、音声認識や音声ガイダンスの導入も有効です。

加えて、導入前に体験会などを実施し、便利さや楽しさを実感してもらう機会を設ける方法もおすすめです。
実際に触れてもらうことで不安を解消し、興味を持ってもらえます。

現場が技術の全容を理解する必要がある

高機能なシステムを導入しても、現場の介護職員がその価値を理解し使いこなせなければ放置されてしまいます。

エイジテックを導入する際は、定期的なフォローアップ体制を構築し、継続的なサポートを提供しましょう。

また、介護職員からの疑問や要望を積極的に吸い上げ、システムの改善に活かすための仕組みを作ることも重要です。
現場のニーズに合致した、使いやすいシステムへと進化させていきましょう。

なお、エイジテックの導入時は一部の部署で簡易的に取り入れ、様子を見てから全体に展開するのがおすすめです。
よりスムーズな導入のため、焦らず体制を整えてください。

梅沢 佳裕 氏
梅沢 佳裕 氏

エイジテック(AgeTech)は、高齢期の健康・暮らし・社会参加を支えるために、AI・IoT・ロボット等の技術を活用した製品やサービスの総称です。対象は高齢者本人だけでなく、家族の見守りや負担軽減、介護現場の業務効率化、将来に備える層まで広がります。市場は高齢化を背景に拡大が見込まれ、介護・医療の現場でも導入が進みつつあります。介護領域の例としては、記録ソフト、排泄予測、AI送迎計画、移乗支援、睡眠・見守りセンサー、インカムやリハビリ支援など。導入時はコスト(初期+月額)を試算し、補助金やサブスクも選択肢にします。あわせて①利用者の忌避(監視感・難しさ)への配慮、②職員が価値と使い方を理解する研修、③小規模に試して全体展開する手順、④定期フォローと改善の仕組みを整えることが要点です。また、生活支援(スマートホームやGPS)、家族の服薬支援、医療とのデータ連携、多職種連携、資産管理や詐欺対策まで含む“裾野の広い技術群”として捉えると、施設だけでなく在宅支援にも応用できます。

まとめ:エイジテックは介護業界にも役立つ注目の技術

エイジテックは、高齢化が進み介護需要が高まる日本において、大きな注目を集めています。
特に介護分野や医療分野で活用できる製品やサービスは、介護業界にとって重要なものです。

エイジテックを適切に活用すれば、介護サービスの質向上が期待できるでしょう。

一方、エイジテックをただ導入するだけでは利用されず、職員や利用者が混乱してしまう恐れがあります。
本記事の内容を参考に、ぜひ自施設にあったものを導入してください。

監修:梅沢 佳裕

人材開発アドバイザー

介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

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