ADL維持等加算とは?単位数や算定要件・利得計算方法について解説
2025.04.27
「ADL維持等加算とは?」「ADL維持等加算はどうやって計算すればよい?」
上記のような疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
介護現場で重要となるADL維持等加算を理解して適切に利用すれば、利用者の生活の質を保つための支援ができるだけでなく、収益の向上にもつながります。
本記事では、ADL維持等加算の概要や算定要件を紹介します。
介護の質を高めるための重要な要素とも言えるADL維持等加算の理解を深め、日々のサービスに活かしましょう。
なお、株式会社ワイズマンでは収益率改善・人材不足解消・業務効率化につながる「ICT導入による介護DX完全ガイド」を無料で配布中です。
介護業界で導入されるICTや導入の進め方などについて解説していますので、ぜひご覧ください。
目次
【令和8年最新】ADL維持等加算とは

ADL維持等加算とは、介護サービスにおける利用者の日常生活動作(ADL)の維持・改善を目的とした介護報酬の加算制度です。
利用者の自立支援と重度化防止を促進し、介護サービスの質向上を図ることを目指しています。
ADL維持等加算の目的
ADL維持等加算の主な目的は、以下のとおりです。
- 利用者のADL(日常生活動作)の維持・向上を図り、可能な限り自立した生活を支援すること
- 介護サービスの質の向上を促進し、根拠に基づいた介護の実践を推進すること
- 介護事業所における自立支援への取り組みを評価し、インセンティブを与えること
- 高齢者のQOL(生活の質)の向上に貢献すること
ADL維持等加算は利用者のADLを維持または改善することで重度化を予防し、自立した生活を支援することを目的としています。
また、介護事業所が自立支援への取り組みを可視化できるため、介護サービスの質の向上にもつながります。
参照:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
ADL維持等加算の対象となるサービスと施設
2026年現在、ADL維持等加算の対象となる主なサービスと施設は以下のとおりです。
| サービスの種類 | ・通所介護 ・地域密着型通所介護 ・認知症対応型通所介護 |
| 施設の種類 | ・介護老人福祉施設 ・特定施設入居者生活介護 ・介護老人保健施設 |
上記以外にも、保険者が所管するサービスについては各自治体への確認が必要です。
ADL維持等加算の算定対象となる利用者
ADL維持等加算の算定対象となる利用者は、主に要介護認定を受けている方です。ただし、以下の条件を満たす必要があります。
- 評価対象となる利用期間が6カ月を超える者
- ADLの評価を適切に行える者
ADLの評価は、一定の研修を受けた者がバーセルインデックス(BI)を用いて行う必要があります。
なお、ADL維持等加算を算定すると介護サービスの質を利用者やケアマネジャーに示せるため、事業所の営業活動にもつながります。
参照:科学的介護情報システム(LIFE)について|厚生労働省
ADL維持等加算の算定要件

ADL維持等加算を算定するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。これらの要件は、利用者のADLを適切に評価し、維持・改善するための取り組みを促進することが目的です。
ここでは、ADL維持等加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の算定要件の違いやバーセルインデックス(BI)の活用、LIFEへのデータ提出、PDCAサイクルの重要性について解説します。
ADL維持等加算(Ⅰ)・(Ⅱ)の算定要件の違い
ADL維持等加算には(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類があり、それぞれ算定要件と単位数が異なります。
算定を行うには、バーセルインデックスでADL値を適切に評価し、LIFEでデータ提出しなければいけません。
| 加算の種類 | ADL維持等加算(Ⅰ) | ADL維持等加算(Ⅱ) |
| 単位数 | 30単位/月 | 60単位/月 |
| ADLの評価 | バーセルインデックスを用いてADL値を測定 | バーセルインデックスを用いてADL値を測定 |
| LIFEへのデータ提出 | 必要 | 必要 |
| 算定要件 | ・イ 利用者等(当該施設等の評価対象利用期間6月を超える者)の総数が10人以上であること。 ・ロ 利用者等全員について、利用開始月と、当該月の翌月から起算して6月目(6月目にサービスの利用がない場合はサービスの利用があった最終月)において、Barthel Indexを適切に評価できる者がADL値を測定し、測定した日が属する月ごとに厚生労働省に提出していること。 ・ハ 利用開始月の翌月から起算して6月目の月に測定したADL値から利用開始月に測定したADL値を控除し、初月のADL値や要介護認定の状況等に応じた値を加えて得た値(調整済ADL利得)について、利用者等から調整済ADL利得の上位および下位それぞれ1割の者を除いた者を評価対象利用者等とし、評価対象利用者等の調整済ADL利得を平均して得た値が1以上であること | ・ ADL維持等加算(Ⅰ)のイとロの要件を満たすこと。 ・ 評価対象利用者等の調整済ADL利得を平均して得た値が3以上 |
ADL維持等加算におけるバーセルインデックス(BI)
ADL維持等加算を算定する上で、バーセルインデックス(BI)は非常に重要な役割を果たします。
BIは利用者の日常生活動作(ADL)を評価するための指標であり、以下の10項目で構成されています。
- 食事
- 更衣
- 整容
- 排便
- 排尿
- トイレ動作
- 移乗
- 移動
- 階段昇降
- 入浴
上記の項目を評価することで利用者のADLの状態を客観的に把握し、適切な介護計画の作成や効果測定に役立てられます。
ADL維持等加算の算定は、評価対象期間中の初回と6カ月後(7カ月目)の合計2回の結果をもとに、バーセルインデックスを用いて利用者(要介護者)のADL値を測定し、LIFEに情報を提出します。
LIFE(科学的介護情報システム)へのデータ提出とフィードバック
ADL維持等加算を算定するためには、LIFEへのデータ提出が必須です。
LIFEは、介護サービス利用者の状態やサービス内容に関するデータを収集・分析し、科学的根拠に基づいた介護の実現を支援するシステムです。
LIFEへのデータ提出を通じて、事業者は利用者のADLに関する情報を国に提供します。
国は提出されたデータを分析し、各事業者の取り組み状況や効果をフィードバックします。
このフィードバックを参考にPDCAサイクルを回し、介護サービスの質の向上につなげることが重要です。
ADL維持等加算の申請・届出を行う場合、介護給付費算定に係る体制等状況一覧表の「ADL維持等加算〔申出〕の有無」を「2 あり」として届け出る必要があります。
参照:科学的介護情報システム(LIFE)について|厚生労働省
ADL維持等加算におけるPDCAサイクル
ADL維持等加算の算定においては、PDCAサイクルを回すことが重要です。
PDCAサイクルとは以下の4つの段階を経て、継続的に改善を図るためのフレームワークです。
| Plan(計画) | 利用者のADLの状態を評価し、目標を設定する |
| Do(実行) | 目標達成のために、具体的な介護計画を実行する |
| Check(評価) | 定期的にADLを評価し、計画の進捗状況や効果を検証する |
| Act(改善) | 評価結果に基づき、計画や実施方法を改善する |
PDCAサイクルを回しながら改善を進めれば、ADL維持等加算の効果を最大限に引き出し、利用者の生活の質を向上させることができます。
ADL維持等加算の利得計算方法

ADL維持等加算を算定するためには単位数や計算方法、LIFEへのデータ提出といった一連の流れを理解しておく必要があります。ここでは、それぞれの項目について詳しく解説します。
ADL維持等加算の単位数と介護報酬
ADL維持等加算は、利用者のADLの維持・改善度合いに応じて、以下の2種類に区分されています。それぞれの単位数と算定要件は以下のとおりです。
| 加算の種類 | 単位数(月額) | 主な算定要件 |
| ADL維持等加算(Ⅰ) | 30単位 | ADL利得が1以上であること |
| ADL維持等加算(Ⅱ) | 60単位 | ADL利得が3以上であること |
ADL利得とは、利用者のADLがどれだけ改善したかを示す指標であり、バーセルインデックス(BI)を用いて測定します。ADL維持等加算(Ⅰ)は現状維持、ADL維持等加算(Ⅱ)は改善に対して支給される加算といった点が大きな違いです。
ADL維持等加算の計算シートと活用方法
ADL維持等加算の利得計算は以下のように行います。
【7カ月目のBIの合計値】-【初回のBIの合計値】+【下記利得表の該当する数値】
| ADL値が0以上25以下 | 1 |
| ADL値が30以上50以下 | 1 |
| ADL値が55以上75以下 | 2 |
| ADL値が80以上100以下 | 3 |
ADL維持等加算の計算には、厚生労働省が提供する計算シートや、介護ソフトに搭載されている計算機能を利用すると便利です。
これらのツールを活用すると、煩雑な計算を効率的に行えます。
計算シートは、以下の項目を入力すると自動的にADL利得を算出できます。
- 利用者の基本情報(氏名、年齢、要介護度など)
- バーセルインデックス(BI)の測定結果(利用開始時と6カ月後)
- 調整係数
調整係数は利用者の状態に応じて設定されるもので、計算シートの説明書に詳細が記載されています。
LIFEにADL値を入力することで、ADL利得の計算ができます。
計算シートや介護ソフトを活用すると、ADL維持等加算の算定に必要な情報を簡単に把握できるため、適切な介護報酬の請求が可能です。
LIFEへのデータ提出の流れと注意点
LIFEへのデータ提出は、以下の流れで行います。
- LIFEのID・パスワードを取得する
- LIFEにログインし、利用者の基本情報を登録する
- バーセルインデックス(BI)の測定結果を入力する
- データを提出する
データ提出の際には、以下の点に注意が必要です。
- 提出期限を守る(既存の利用者については、加算の算定を始める月の翌月10日までとなっており、2回目以降の情報提供は、6カ月後の翌月10日までの合計2回と提出頻度が少なくて済む)
- 入力内容に誤りがないか確認する
- BIの項目ごとに提出する必要がある
LIFEへのデータ提出はADL維持等加算の算定だけでなく、介護サービスの質向上にもつながる重要な取り組みです。
正確なデータを提出し、フィードバックを参考にすると、より効果的な介護サービスを提供できます。
LIFEへのデータ入力手順は以下のとおりです。
- 管理ユーザーまたは操作職員のアカウントでログイン
- トップメニューから「令和〇年度ADL維持等加算算定」をクリック
- 「対象サービス」の右にある「▼」をクリックし、加算算定の判断を行うサービスを選択すると利用者一覧が表示される
- 各介護サービス利用者のADL維持等加算情報を入力(「初月」「6月後」「初月ADL」「6月後ADL」)
- 全対象者の入力完了後、計算ボタンをクリック
データ提出においては、バーセルインデックス以外からの読み替えデータの使用も可能です。
ただし、測定者がバーセルインデックスに係る研修を受けたうえで、必要に応じて別途評価するなどの対応を行ってから提出する必要があります。
ADL維持等加算が算定できないケース

本章では、ADL維持等加算が算定できないケースについて解説します。
ミスを防止するうえでも、算定できないケースは正確に把握しておきましょう。
ADL維持等加算が算定不可になる理由
ADL維持等加算は、原則として要介護認定を受けている方が対象です。
以下のようなケースでは対象外となる場合があります。
| 除外条件 | 理由 |
| 要支援の方 | ADL維持等加算は、要介護者の方を対象としている |
| 評価対象期間が6カ月に満たない利用者 | ADLの維持・改善を評価するため、一定期間のサービス利用が必要 |
| LIFEへのデータ提出を行っていない場合 | LIFEへのデータ提出は算定要件に含まれている |
| ADL利得が一定の基準に満たない場合 | ADL維持等加算(Ⅰ)と(Ⅱ)では、それぞれADL利得の基準が設けられている |
ADL維持等加算を算定する際は、上記に該当しないかを必ず確認しましょう。
LIFE未提出・評価漏れによる返還リスク
ADL維持等加算ではLIFEへのデータ提出やADL評価が必須ですが、万が一これらの作業が漏れている、あるいは不備が発生したことが確認されると、加算の返還が必要です。
加算の返還は当該年度を遡及して行われるため、場合によっては多額の収益を失うことになります。
特に体調不良などで除外対象者が発生した場合、注意が必要です。
除外対象者が発生したタイミングによっては、誤って算定してしまうリスクが高まります。
また、意図的な評価の改ざんや不正請求などが認められた場合は加算金の支払いに加え、効力の停止や指定取消の対象となる恐れがあります。
ADL維持等加算の算定は、リスクを踏まえ、正確に実施することが重要です。
ミスを防ぐためにも数人体制でチェックし、介護ソフトを活用して効率的にデータを管理できる体制を整えましょう。
実地指導で指摘されやすいポイント
ADL維持等加算の算定のミスは、実地指導でも指摘されるリスクがあります。
特に以下のミスには注意しましょう。
| 介護記録との矛盾 | バーセルインデックスで「食事自立」と評価しているにもかかわらず、日々の介護記録に「全介助」「見守りが必要」などの記載がある場合、評価の妥当性が疑われます。 |
| 評価日の厳守 | 評価期間の開始月と終了月に、正しくバーセルインデックスが測定されているか、利得計算方法が適切かが確認されます。遡って数値を記入した疑いがないよう、測定日当日の日付が入った評価票の保管が必須です。 |
| 除外対象者の処理 | 入院・退所・著しい状態悪化により計算から除外すべき利用者が正しく処理されているかが確認されます。除外対象者が適切に扱われていないと平均利得の数値が変動するため、計算過程が厳格に追及されます。 |
ADL評価のポイントと研修情報

ADL(日常生活動作)の評価は利用者の状態を把握し、適切な介護計画を立てるうえで非常に重要です。
客観的な評価を行うことで、利用者の自立支援に向けた具体的な目標設定を実現できます。
ここでは、ADL評価に用いられる主要な指標であるバーセルインデックス(BI)について詳しく解説するとともに、評価のポイントや研修情報を紹介します。
バーセルインデックス(BI)とは
バーセルインデックス(Barthel Index:BI)は、日常生活動作(ADL)を評価するための代表的な指標の一つです。
BIは以下の10項目で構成されており、それぞれの項目について利用者の自立度を評価します。
具体的な評価は、以下のとおりです。
| 項目 | 評価 | 点数 |
| 食事 | 自立・部分介助・全介助 | 0~10点 |
| 車椅子からベッドへの移動 | 自立・一部介助・ほとんど介助・不可能 | 0~15点 |
| 整容 | 自立・介助 | 0~5点 |
| トイレ動作 | 自立・一部介助・全介助 | 0~10点 |
| 入浴 | 自立・介助 | 0~5点 |
| 歩行 | 自立・一部介助・不可能 | 0~15点 |
| 階段昇降 | 自立・一部介助・不可能 | 0~10点 |
| 着替え | 自立・一部介助 | 0~10点 |
| 排便コントロール | 失禁なし・時々失禁・失禁 | 0~10点 |
| 排尿コントロール | 失禁なし・時々失禁・失禁 | 0~10点 |
各項目の点数を合計することで、総合的なADLの自立度の評価が可能です。
なお、合計点が高いほど自立度が高いことを示します。
ADL評価におけるバーセルインデックス
バーセルインデックスは、ADL維持等加算の算定においても重要な役割を果たします。
加算の算定要件として利用者のADLを定期的に評価し、その結果をLIFEに提出することが求められるからです。
BIを活用することで、以下のメリットが期待できます。
| 客観的な評価 | ・BIは明確な評価基準に基づいている ・評価者による主観的な判断を排除できる |
| 変化の把握 | ・定期的な評価により、利用者のADLの変化を客観的に把握できる ・改善が見られれば介護方法が適切であることを示し、悪化が見られれば、介護計画の見直しが必要となる |
| 情報共有の円滑化 | ・BIの結果は多職種間で共有しやすい ・チーム全体で利用者の状態を把握し、共通の目標に向かって取り組める |
利用者の自立支援に向けた介護サービスを提供するうえで、バーセルインデックスは非常に有効なツールです。
バーセルインデックスに関する研修情報
バーセルインデックスを正確に評価するためには、適切な知識と技術が必要です。
スキル習得のため、BIに関する研修を受講しておきましょう。
研修では、以下のような内容を学べます。
- バーセルインデックスの概要と目的
- 各項目の評価基準と評価方法
- 評価の実践(事例検討など)
- 評価結果の解釈と活用
研修の種類としては各都道府県や市区町村が主催するものや、介護関連団体が主催するものなどがあり、その種類は多様です。
また、参考資料として、各学会や研究機関が作成したバーセルインデックスに関するガイドラインやマニュアルなども活用できます。
適切な研修を受講し、バーセルインデックスの知識と技術を習得すれば、より質の高い介護サービスを提供できます。
正確なADL評価は、利用者の状態を正しく理解し、適切な支援を提供するための第一歩です。
バーセルインデックスを有効活用し、利用者の自立支援に貢献しましょう。
なお、株式会社ワイズマンでは収益率改善・人材不足解消・業務効率化につながる「ICT導入による介護DX完全ガイド」を無料で配布中です。
介護業界で導入されるICTや導入の進め方などについて解説していますので、ぜひご覧ください。
ADL維持のための方法と事例

ADL(日常生活動作)の維持・向上は、利用者が可能な限り自立した生活を送るために非常に重要です。
本章では、ADLの維持・向上に役立つ具体的な方法を紹介します。
ADL維持のためのリハビリテーション:専門職の役割
ADL維持のためのリハビリテーションは理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などの専門職が中心となって行われます。
それぞれの専門性を活かし、利用者の状態に合わせたプログラムを提供することが重要です。
| 専門職 | 役割 |
| 理学療法士(PT) | ・基本的な動作能力の改善を目指す ・歩行訓練や筋力トレーニングなどを通して、移動能力の向上を図る |
| 作業療法士(OT) | ・日常生活における具体的な動作の練習を行う ・食事や更衣、入浴など、個々の利用者が困難と感じる動作の改善をサポートする |
| 言語聴覚士(ST) | ・嚥下機能の改善やコミュニケーション能力の維持・向上を目指す ・食事の際の誤嚥防止や、円滑なコミュニケーションを支援する |
上記の専門職が連携し、多角的な視点からリハビリテーションを提供すれば、より効果的なADL維持が可能です。
日常生活動作(ADL)訓練の具体的な方法
ADL訓練は、利用者が日常生活で行うさまざまな動作を練習し、維持・向上させるための訓練です。
以下で具体的な方法を紹介します。
| ADL項目 | 訓練方法 | ポイント |
| 食事 | 箸やスプーンの持ち方、食事姿勢の練習 | 安全に食事ができるよう、姿勢や嚥下(えんげ)の状態に注意する |
| 更衣 | 着脱しやすい衣服の選択、ボタンやファスナーの練習 | できるだけ自分でできるよう、段階的にサポートを減らす |
| 入浴 | 浴槽への出入り、身体の洗い方の練習 | 転倒防止のため、手すりの設置や滑り止めマットの使用を検討する |
| 排泄 | トイレへの移動、衣服の着脱、排泄後の処理の練習 | ポータブルトイレの利用や夜間のトイレ誘導など、状況に応じた支援を行う |
| 移動 | 歩行訓練、車椅子操作の練習 | 安全な歩行をサポートするため、歩行器や杖の利用を検討する |
上記の訓練は、利用者の身体機能や認知機能に合わせて個別に計画しなければいけません。
また、訓練を行う際は利用者の意欲を高めることが重要です。
ADL維持を促進する介護環境の整備
ADL維持のためには、適切な介護環境の整備も不可欠です。
安全で快適な環境を提供すると、利用者が積極的にADLに取り組めます。
介護環境を整備する際には、以下の対策が有効です。
| 対策 | 詳細 |
| バリアフリー化 | 段差の解消や手すりの設置、滑り止めマットの使用など、転倒のリスクを減らすための対策を行う |
| 適切な福祉用具の活用 | 歩行器や車椅子、入浴補助具など、利用者の状態に合わせた福祉用具を選定し、適切に使用する |
| 明るく開放的な空間 | 日光が入りやすく風通しの良い空間は、利用者の気分を高め、活動意欲を促進する |
| コミュニケーションの促進 | スタッフやほかの利用者との交流を促すと社会的孤立を防ぎ、精神的な健康を維持できる |
上記の環境整備に加えて、利用者のADL能力を適切に評価することも重要です。
バーセルインデックスを用いて食事や入浴、歩行などの項目をチェックし、ADLの状態を正確に把握しましょう。
ADL維持は利用者の生活の質を向上させるだけでなく、介護者の負担軽減にもつながります。
専門職との連携や適切な訓練、介護環境の整備を通じて、ADL維持を積極的に支援しましょう。
ADL維持等加算活用のコツとこれから

ADL維持等加算は、介護サービスの質を向上させるための重要な指標です。
この加算を適切に活用すれば利用者の自立支援を促進し、より質の高い介護サービスを提供できます。
本章では、ADL維持等加算を介護サービスの質向上につなげるためのポイントや多職種連携によるADL維持の取り組み、ADL維持等加算に関する最新情報と今後の展望について解説します。
ADL維持等加算をサービスの向上につなげるポイント
ADL維持等加算を介護サービスの質向上につなげるためには、以下のポイントが重要です。
| 強調ポイント | ADL維持・改善のためのポイント |
| 適切なADL評価の実施 | ・バーセルインデックス(BI)などを用いて、利用者のADLを正確に評価することが基本 ・ADL評価は、一定の研修を受けた者が行う |
| 個別ケア計画の作成 | ADL評価の結果に基づき、利用者一人一人の状態に合わせた個別ケア計画を作成する |
| 目標設定とモニタリング | ケア計画にはADL維持・改善の具体的な目標を設定し、定期的に進捗状況をモニタリングする |
| LIFEへのデータ提出と活用 | LIFEへデータを提出し、フィードバック情報を活用してケアの質を継続的に改善する |
| 多職種連携の推進 | 医師・看護師・リハビリ専門職・介護職など、多職種が連携してADL維持・改善に取り組む |
上記のポイントを実践することで、ADL維持等加算は単なる加算算定のためのツールではなく、介護サービスの質を向上させるための有効な手段としても活用できます。
多職種連携によるADL維持の取り組み
ADL維持は、多職種がそれぞれの専門性を活かしながら取り組むことがポイントです。
以下に、具体的な取り組み事例を紹介します。
| 職種 | 役割 | 具体的な取り組み |
| 医師 | 医学的な管理・指示 | ・利用者の基礎疾患やADLに影響を与える可能性のある疾患の管理 ・リハビリテーション計画への医学的な指示 |
| 看護師 | ・健康状態の観察 ・医療ケア | ・バイタルチェック ・服薬管理 ・褥瘡予防 ・創傷ケア ・感染症対策 |
| 理学療法士 (PT) | ・運動機能の評価 ・リハビリ計画の立案・実施 | ・歩行訓練 ・筋力トレーニング ・バランス訓練 ・関節可動域訓練 |
| 作業療法士 (OT) | ・日常生活動作の評価 ・リハビリ計画の立案・実施 | ・食事、更衣、排泄、入浴などの日常生活動作訓練 ・福祉用具の選定 ・使用指導 |
| 言語聴覚士 (ST) | ・摂食や嚥下機能の評価 ・訓練 | ・嚥下訓練 ・発声訓練 ・コミュニケーション支援 |
| 介護職 | ・日常生活の支援 ・ADL訓練のサポート | ・食事介助 ・排泄介助 ・入浴介助 ・更衣介助 ・移動介助 ・レクリエーションの実施 |
| 管理栄養士 | ・栄養状態の評価 ・栄養指導 | ・食事内容の改善 ・栄養補助食品の提案 |
| ケアマネジャー | ・ケアプランの作成 ・多職種連携の調整 | ・利用者のニーズに基づいたケアプランの作成 ・サービス担当者会議の開催 ・関係機関との連携 |
上記の職種がそれぞれの専門知識や技術を共有し、利用者のADL維持・改善に向けて協力することで、より効果的なケアを提供できます。
ADL維持等加算に関する最新情報と今後の展望
ADL維持等加算は介護報酬改定のたびに、算定要件や単位数が見直されています。
2024年の介護報酬改定では、ADL維持等加算(Ⅱ)におけるADL利得の要件が「2以上」から「3以上」に見直されました。これにより、より高いADL改善効果が求められるようになったと判断できます。
また、今後はADL維持等加算の対象サービスが拡大される可能性や、LIFEへのデータ提出の義務化が進むことも予想されます。
さらに、AIやICTを活用したADL評価やリハビリテーション技術の開発が進めば、より効果的かつ効率的なADL維持・改善が可能です。
ただし、介護報酬は定期的に改定されるため、今後の厚生労働省の方針によっては、ADL維持等加算の算定要件などが変更される可能性があります。
実際、2024年の介護報酬改定では、アウトカム評価の強化などが実施されました。
2027年の介護報酬改定でさらなる変更が加えられる可能性もあるため、厚生労働省から提示される最新情報は逐一チェックしましょう。
もし、ADL維持等加算の算定要件が変更されれば、業務のプロセスを見直す必要があります。
加えて、単位数などが変更されるような事態になれば、収益にも影響がおよぶので注意しましょう。
ADL維持等加算は、介護サービスの質の向上を促進するための重要な制度です。
最新情報を常に把握し、適切に活用すれば利用者の自立支援を推進し、より質の高い介護サービスを提供できます。
参照:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
Q&A:ADL維持等加算に関するよくある質問

最後に、ADL維持等加算に関する質問をまとめました。
それぞれの回答を参考に、算定に活かしてください。
Q. ADL維持等加算の算定は途中で終了できますか
A. ADL維持等加算の算定を途中で終了する場合、速やかにその旨を保険者に届け出る必要があります。
具体的な手続きは以下のとおりです。
- 介護給付費算定に係る体制等状況一覧表の変更:ADL維持等加算の算定状況を「なし」に変更する
- 保険者への届け出:変更後の介護給付費算定に係る体制等状況一覧表を保険者に提出する
また、算定を終了する理由(例:利用者の状態変化、事業所の体制変更など)を明確に伝えることが重要です。
Q. ADLが改善しない場合でも加算は算定できますか
A. ADL維持等加算は、ADLの維持または改善が見られた場合に算定できる加算です。
そのため、利用者のADLが改善しない場合でも、現状維持ができていればADL維持等加算(Ⅰ)の算定対象となる場合があります。
ただし、ADL利得が基準に満たない場合は、加算の対象外となる点には注意しましょう。
利用者の体調不良などで加算の対象外になった利用者が出てきた際は、平均利得の計算をやり直す必要があります。
Q.LIFE入力は外部委託できますか
A.LIFE入力の外部委託自体は可能ですが、一定のリスクが伴う点に注意しましょう。
LIFE入力はアウトソーシングしたくなる作業ですが、ADL維持等加算で扱う情報は非常に専門的なうえ、高度な個人情報でもあります。
そのため、外部の業者に委託することは情報漏洩や内容の正確性の低下といったリスクを招きます。
特に、バーセルインデックスを用いたADL評価は、現場で実際に利用者と接している介護職員だからこそ正確性が担保されるものです。
介護の専門性を担保できない業者への外部委託は、かえってミスを増発するリスクを高めるだけでなく、介護事業所側による確認作業が必須になるなど、結果的に二度手間になってしまう恐れがあります。
もし、LIFE入力の効率性向上を図るなら、介護ソフトを活用しましょう。
近年の介護ソフトは介護記録を入力すれば自動的にバーセルインデックスを算出してくれるなど、業務負担を大幅に軽減してくれるものがあります。
ICTツールを利用して内製化することで、外部委託よりも効率的に作業を完了できます。
ADL維持等加算は、利用者のADL(日常生活動作)の維持・改善に向けた取組を、介護報酬で評価する制度です。バーセルインデックス(BI:食事・更衣・排泄・移乗・歩行・入浴など10項目)で初月と6か月後(7か月目)のADLを測定し、月ごとにLIFEへ提出してデータを蓄積します。
対象は通所介護(地密・認知症通所含む)や特養・特定施設等で、評価対象利用期間が6か月を超える利用者が前提。加算は(Ⅰ)30単位/月、(Ⅱ)60単位/月で、評価対象者の調整済ADL利得を平均した値が(Ⅰ)1以上、(Ⅱ)3以上が目安です。算定開始時は体制等状況一覧表で「申出あり」として届出し、途中終了時も保険者へ速やかに手続きを行います。
運用の要点は、研修を受けた測定者の確保、提出期限(翌月10日等)の管理、介護記録とBI評価の矛盾防止、入院・退所等の除外処理、未提出による返還リスクへの二重チェック。LIFEのフィードバックをPDCAに落とし込み、ケアの質向上に結び付ける姿勢が肝心です。
なお、株式会社ワイズマンでは収益率改善・人材不足解消・業務効率化につながる「ICT導入による介護DX完全ガイド」を無料で配布中です。
介護業界で導入されるICTや導入の進め方などについて解説していますので、ぜひご覧ください。
まとめ:ADL維持等加算の理解を深めてより良いサービスを提供しよう

ADL維持等加算は、利用者のADL(日常生活動作)の維持・向上を支援する介護サービス事業所を評価する制度です。
加算を適切に活用することで利用者の生活の質を高め、自立した生活をサポートできます。
ADL維持等加算の算定は、介護サービスの質を利用者やケアマネジャーに示す指標です。
また、事業所にとっては営業活動の一環として、自社の介護サービスの質をアピールできるチャンスにもなります。
制度についてより深く理解し、実際の業務と運営に反映していきましょう。
監修:梅沢 佳裕
人材開発アドバイザー
介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

