【医療業界動向コラム】第181回 生産性向上と身体的拘束最小化に関する項目を確認する
2026.03.31
令和8年度診療報酬改定では、業務効率化に有用なICT機器等の組織的な利活用を推進することで、病棟の看護要員の配置基準を柔軟化する。また、ICT機器等を活用した医師事務作業の業務効率化・負担軽減に取り組む医療機関については、医師事務作業補助者の人員配置基準を緩和する。直接的に診療報酬で経済的に評価するものではないが、導入・利活用することで従来よりも少ない人員でも従来業務ができることが期待されている。医師事務作業補助者の場合、ICT機器等を利用することで1.2~1.3人換算できるとなっているが、見方を変えると、1.2~1.3人分の業務ができるようにならなければならないともいえる。
なお、いずれにおいても年1回程度、定量的又は定性的な評価を実施することが求められ、ICT機器の利活用状況を確認・報告することが求められる。
こうしたICT機器等の導入を積極的に導入を促す一方で、看護師をはじめとするスタッフの負担軽減を図る見直しも同時におこなわれている。
身体的拘束最小化の見直しと負担軽減の観点は?
ICT機器等の利活用の観点から、身体的拘束最小化に対する取り組みも大きく見直されている。ポイントは大きく3つある。
まずは、以下のように身体的拘束から除外するものが明らかにされている。
〇衣服に触れるものの、患者の動作により容易に外れ、患者の自発的な運動を制限することはない状況で用いられる、見守りや職員を呼ぶためのセンサー等のみを使用している場合
〇処置時や移動時に、患者本人又はその家族の同意を得た上で、安全確保のために短時間固定ベルトやミトンを使用する場合であって、職員が介助等のために当該患者の側に付き添っており、処置や移動の終了時に確実に解除している場合
〇患者が訓練のために自由に車椅子を操作することのできる状態であって、患者本人又はその家族の同意を得た上で、車椅子操作による訓練の時間中のみ安全確保のために固定ベルトを使用する場合(車椅子の前にオーバーテーブルを設置する、車椅子をロックする等の方法により、患者本人の活動を制限している場合は該当しない。)
看護師をはじめとする病棟スタッフの負担軽減につながる。ただし、患者及び家屋に説明と同意をいただく必要な場面もあることに注意が必要だ。
2つ目としては、身体的拘束をやむなく実施した場合の減算を緩和する要件が設定されたことだ(図1)。例えば、身体的拘束最小化に関する研修を年に2回以上実施することで、減算は1/2に緩和される。

3つ目は、身体的拘束最小化推進体制加算の新設だ。対象となるのは、地域包括ケア病棟入院料、療養病棟入院基本料、障害者施設等入院基本料などとなっている。病院として身体的拘束最小化に取り組むことを表明しスタッフに周知していることや、委員会活動を3か月に一回実施することとなっており、40点/日となる(図2)。長期入院や高齢患者の受け入れ割合が高い病棟においては、ポジティブな見直しになったと言えるだろう。

医療分野における生産性向上に対する支援の活用を
生産性向上及びICT機器等の利活用は、これまでも夜間看護体制加算等で望ましい取り組みとして、診療報酬上でも推進されてきた。令和8年度診療報酬改定では、こうした取り組みをさらに拡充していることがわかる。そこで改めて確認しておきたいのが、令和7年度補正予算による「医療分野における生産性向上に対する支援(図3)」だ。

1病院あたり8,000万円を上限に支援が受けられる。支援を受けるためには、「業務効率化推進委員会」を設置し、3年後に実績報告をしなければならない。補助金や助成金は後払いが基本で、実績が伴わなければ交付を受けられないこともある。ICT機器等の導入後もスタッフの超過勤務時間の削減や日々の業務の生産性向上にどれだけ役立っているかを定期的に確認し、適宜利用方法を見直していくことが必要だ。
なお、医療分野における生産性向上に対する支援については、本年5月より申請の受付がはじまり、7月以降に補助対象が決定される予定となっている。
(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_70522.html)
山口 聡 氏
HCナレッジ合同会社 代表社員
1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。https://www.hckn.work

