【医療業界動向コラム】第167回 重症度、医療・看護必要度の見直しと令和7年度補正予算のポイント
2025.12.09
令和7年11月26日に開催された第630回中央社会保険医療協議会では重症度、医療・看護必要度に関する見直しに関する議論がおこなわれている。高齢者救急の増加もあり、内科系症例の評価を見直し、重症者割合を底上げする見直しが行われる予定だ。また、11月28日に令和7年度補正予算案が閣議決定された。医療機関に対する主な支援について確認しよう。
目次
高齢者救急などの内科系症例の受入実績を重症割合の底上げに
全人口に占める高齢者割合の増加に伴い、高齢患者の救急搬送が必然的に増えてきている。そこで課題となっているのが、現行の重症度、医療・看護必要度では外科領域の患者が重症者として判定されやすくなっており、高齢者の救急搬送で多い内科系症例などでは重症者割合が不利になっていることだ。
そこで、これまでの入院・外来医療等の調査・評価分科会等で内科系症例を精緻に評価し、救急搬送受入を通じて地域医療に貢献する急性期病院の重症者割合を底上げして経営を安定化させる方向性で議論が進んできた。今回、その実際のシミュレーション結果が公表された。具体的には、A・C項目に新たな項目を追加、救急受入の実績を加味する、というもの(図1)。

シミュレーション結果からは、A・C項目の追加と救急受入の実績を加味することで、手術はないものの救急受入を積極的に行う病院では重症者割合が増加する事がわかる。今後、詳細を詰め、重症度、医療・看護必要度の重症者割合を底上げする加算などが検討されることとなる。ただ一方で懸念されるのは、大規模病院等が積極的に受け入れを行っていくことで地域医療に影響が出てしまわないかということだ。急性期充実体制加算と総合入院体制加算は統合する方針になっているが、こうした高度急性期入院においては一定の歯止め(加算の対象患者数割合の設定など?)もセットで考えられそうだ。
令和7年度補正予算より、病院に関する主な支援内容を確認
令和7年11月28日、令和7年度補正予算が閣議決定された。病院に直接的に関連する主なポイントをピックアップして紹介する。
医療分野における賃上げ・物価上昇に対する支援
病院に対しては、1病床あたり19.5万円の支援が行われるが、19.5万円のうち処遇改善支援に8.4万円、必要経費の物価上昇対策として11.1万円という内訳になる。無床診療所、薬局に対しては施設単位での支援となるが、薬局については店舗数によって異なる。
なお、救急受入件数に応じた支援となる救急加算額も用意されており、1,000件未満の病院では500万円が、三次救急病院であれば件数に関係なく1億円(下限)が支援される。なお、救急受入件数3,000件未満の病院に対しては、分娩取扱数や全身麻酔手術件数に応じた加算も用意されているが、救急加算との併給は不可となっている(図2)。

施設整備促進支援事業
地域医療構想の推進、救急医療・周産期医療の確保となる新築、増改築等を行う医療機関(医療提供体制施設整備交付金、医療施設等施設整備費及び地域医療介護総合確保基金(Ⅰー1)の交付対象)に対して、㎡数に応じた建築資材高騰分等の補助を行うもの(図3)。

医療分野における生産性向上に対する支援
業務効率化・職場環境改善に資する ICT機器等の導入等の取組を行う病院に対して必要経費を支援し、医療分野の生産性向上を図る。1病院あたり1億円を上限とする。なお、業務効率化・職場環境改善に関する目標値を設定し、進捗管理を行う「業務効率化推進委員会(仮称)」を設置することが求められる(図4)。

病床数の適正化に対する支援
病床数の適正化(削減)を進める医療機関を対象とした財政支援。 交付対象・交付額は以下の通り。
一般・療養・精神病床、有床診:4,104千円/床 (ただし、休床の場合は、2,052千円/床)

