【医療業界動向コラム】第166回 勤務医の負担軽減、療養病棟に入院する医療的ケア児に対する評価についての議論を確認する
2025.12.02
令和7年11月19日、第628回 中央社会保険医療協議会 総会が開催されている。今回は、特定機能病院の評価と勤務医の働き方改革、病院薬剤師、小児・周産期医療、感染症対策・災害医療についての議論となっている。ここでは、勤務医の働き方改革に関する議論と病院薬剤師、小児周産期医療から療養病棟における医療的ケア児の受入れに関する評価の見直しについて解説する。
勤務医の働き方改革に資する評価の動向は?
厚生労働省から「処置及び手術の休日・時間外・深夜加算1(図1)について、チーム制では、診療があった緊急呼び出し当番翌日を休日とすることとされているものの、当該緊急呼び出し当番における診療の有無が予見できないことや、令和6年度以降、医師の働き方改革により、原則、勤務間インターバルが確保されていること等を踏まえ、チーム制において緊急呼び出し当番翌日を休日とすることの必要性をどのように考えるか」といった議論が要請されている。

この点については、勤務医の働き方改革において勤務間インターバルを設けることとなっていることから、義務となっているA水準以外の病院では要件を緩和する方向で議論が進められていきそうだ。
なお、勤務医の負担軽減となる「地域医療体制確保加算」については、休日・時間外労働時間の平均値と最大値が減少傾向にあることから(図2)、年度毎の時間外・休日労働時間の上限基準の漸減について検討が進められていくものと考えられる。

また勤務医の働き方改革の観点からは、医師事務作業補助者による事務作業等の間接業務の支援は非常に効果が高いことが知られている。AIサービスが普及し、医師事務作業補助者の生産性もさらに大きく向上している(図3)。そうした実態から、厚生労働省からは「生成AIを活用した文書作成補助システム等が、作業効率の向上や労働時間の削減効果を示していることを踏まえ、生成AI等のICTを活用して医師事務業務の省力化の取組を進めるにあたり、その評価についてどのように考えるか」といった議論が要請されている。

加算そのものの引上げや上位区分の設定、AIサービスの導入による医師事務作業補助者の配置基準を緩和することなどが検討されそうだ。
病院薬剤師の評価の拡充と転院先へのポリファーマシー対策の継続を評価へ
医師の確保も課題だが、病院薬剤師の確保もまた大きな課題だ。薬剤師を養成する学部のない都道府県もあり、苦戦を強いられている病院は多い。令和6年度診療報酬改定では、病棟薬剤業務実施加算に対する加算として薬剤業務向上加算が新設され、薬剤師の採用に効果があったことが明らかにされた(図4)。

しかしながら、要件は厳しく、届出は特定機能病院がほとんどだ。そこで、要件を緩和し、算定できる病院を拡充する方針で検討されることとなりそうだ。
また、病院薬剤師に関して厚生労働省からは「病院薬剤師による施設間の薬剤情報連携について、診療報酬上の評価をどのように考えるか」といった議論の要請があった。
現行では、退院時薬剤情報連携加算など薬局との連携を評価する項目はあるが、転院先との連携に関する評価はない。また、包括期入院の病棟では評価は包括されている(図5)。

ポリファーマシー対策の効果を転院先でも継続できるように、医療機関間での評価をすること、包括されている点については包括外とすることなどが議論されることとなるだろう。
療養病棟に入院する医療的ケア児の医療区分の見直しについて
医療技術の進歩に伴い、救える命が増える一方で、医療的処置などが求められる医療的ケア児も増えている。そうした医療的ケア児が療養病棟にも一定数入院している。なお、医療区分1が多くなっている(図6)。

厚生労働省からは医療区分2・3として評価することについて議論が求められ、検討が進められていくこととなる。

