【医療業界動向コラム】第162回 医療制度改革の一環としての薬剤給付のあり方の議論を確認する

2025.11.04

  令和7年10月16日、第200回社会保障審議会医療保険部会が開催された。この部会は、医療保険制度改革に関する議論を行う場で、伸び続ける医療費を国民が負担できる範囲に抑え込んでいくためのあり方を検討していくもの。今回は薬剤給付のあり方がテーマとなった。薬剤給付については、OTC類似薬の全額自己負担の検討が話題となり、自民党・公明党・日本維新の会による3党合意(図1)がまとめられ、実際に骨太の方針2025にも年内に結論を出すことが明記されたところだ。

図1 3党合意より(クリックして拡大表示)

 まだ議論はキックオフの段階であることから、現状と考えられる問題について整理をしている状況だが、患者の経済的負担も踏まえたうえで、年内にも方針は示される予定だ。

後発医薬品割合は長期収載品の選定療養の影響で大きく伸びるも頭打ちの状況

 後発医薬品のある長期収載品の選定療養がスタートし、後発医薬品の数量割合が伸びたことは間違いはない。ただ、注意して見ておかなければならないのは、もともと86%という割合に達しており、そこからの伸びは5ポイントにも満たない、ということだ(図2)。

図2 令和6年度 調剤医療費の動向より(クリックして拡大表示)

 本年4月に公表されている令和6年度診療報酬改定結果に関する調査では、患者に対して後発医薬品を選択する理由を尋ねた項目があり、自己負担割合が上がったら選択を検討する、という声があった。すでに天井に達しているともいえる後発医薬品割合だといえるが、ここからさらに割合を高めていくには、患者の自己負担割合を高めていくことや医療上の必要性に関する厳密な基準・審査などが必要になってくるように思われる。その一方で、未だ続く医薬品の安定供給問題がある。また、薬局薬剤師による説明の負担が重いとされ、本年4月には説明に対する評価を臨時改定したところ。医療現場の状況も確認しながら、自己負担割合の引き上げや医療上の必要性に関しての議論が進められていくこととなりそうだ。

バイオ後続品のある先行バイオ医薬品にも選定療養を?

 昨年9月30日、新たな後発医薬品使用促進に関するロードマップが公表され、バイオ後続品についても目標が設定された。その資料をよく見てみると、長期収載品の選定療養の動向を見て、先行バイオ医薬品に対しても対応を検討する方針が記されていることに気づく。

 また、新たなロードマップでは後発医薬品の数量割合が全都道府県で80%を超えたら、副次的目標として金額ベースで65%以上を目指す、というものも設定されている。そう考えると、後発医薬品に比べて金額のインパクトが大きいバイオ後続品の使用促進は金額ベースの目標を達成するには重要なポイントになるため、期待も大きい(図3)。

図3 バイオシミラーの使用率の推移と医療費適正効果額(クリックして拡大表示)

 しかしながら、バイオ後続品には虫食い効能と医療機器(デバイス)としての側面もあり、バイオ後続品のある先行バイオ医薬品を選定療養に加えるには課題がある。

 虫食い効能とは、先行バイオ医薬品のすべての効能をバイオ後続品がカバーしているわけではないということ。長期収載品の選定療養の対象としていくには、例えばインスリン製剤など対象を明確にすることなども考えられる。

 また、先に紹介した令和6年度診療報酬改定結果に関する調査の中では、バイオ後続品の院外処方割合が高くなっていることが確認されている。虫食い効能の観点から、対象となる薬剤を明確にしたうえでの一般名処方加算や分割調剤の対象とすることなど、診療報酬上での対応なども考えられる可能性がある。なお、現行の診療報酬・調剤報酬では、薬局薬剤師が関係することでバイオ後続品への変更が実現したとしても特別な評価はない。院外処方割合が高まっていることを考えると、薬局に対するバイオ後続品への切り替えに対する直接的評価は検討されてもよいのかもしれない。

OTC類似薬の保険外し?それとも、選定療養?

 ところで、OTC類似薬の保険給付の見直しは今年に入ってから起きた議論ではなく、数年前から議案となっていた。医療保険財政としてはよいのだろうが、患者にとってみれば負担割合が高まる可能性があり、とりわけ長期に渡って治療が必要な慢性疾患患者などにとっては打撃となる可能性がある。そう考えると、すべてのOTC類似薬の保険給付割合を見直すのではなく、風邪やアレルギーなどの一時的な症状に対するものに限定したり、OTC類似薬の種類によって自己負担割合を調節する、選定療養の対象とするなどが現実的にも見える。今後の議論に注目をしておきたい。

 

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