【医療業界動向コラム】第148回 新たな地域医療構想に合わせて、急性期機能を2区分設定へ

2025.07.22

令和7年7月3日、令和7年度第6回入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催された。今回は、令和6年度診療報酬改定結果検証に基づく資料をもとに急性期入院医療と救急医療について議論されるとともに、DPCに関する分析をしているDPC/PDPS 等作業グループと、急性期の指標・高齢者の入院に関する指標・重症度、医療・看護必要度に関する分析をしている診療情報・指標等作業グループからの報告という、大きく3部構成で行われている。ここでは、急性期入院医療と重症度、医療・看護必要度に関する検討について紹介する。

急性期機能を「拠点的な急性期機能」と「一般的な急性期機能」として考える

新たな地域医療構想では、医療機関機能報告を新たに設け、医療機関そのものの機能を明確にすることとなる。そこで、今回の議論に当たって、厚生労働省から拠点的な急性期機能(急性期拠点機能と考えられる)と一般的な急性期機能(高齢者救急・地域急性期機能と考えられる)というように分類し、診療報酬の算定項目および算定実績での線引きについて、「救急搬送」・「全身麻酔手術」・「総合性(診療科のバラエティなど)」の3つの評価指標で示された(図1)。

図1 急性期機能の新たな評価指標 (※画像クリックで拡大表示)

救急搬送についてみてみると、単純に件数だけで考えているのではなく、地域の実状にあわせた柔軟な対応として、人口20万人以下の二次医療圏では地域シェア率を踏まえた評価の在り方などを検討することが考えられそうだ。例えば、人口20万人以下の二次医療圏で一定の地域シェア率があれば、急性期充実体制加算もしくは総合入院体制加算の算定を可能とする、など考えられるだろう。

また、人口20万人以上の二次医療圏にある医療機関においても同様に受入れ件数は少ないが、地域で高いシェア率を誇っている病院もある。しかし、こうした病院の場合は件数が少ないために急性期充実体制加算や総合入院体制加算を算定できていないこともある。地域に貢献していることは間違いないので、ここでも急性期充実体制加算等の算定を可能とすることも考えられるだろう。また、時間外対応の有無・実績についてもポイントとなりそうだ(図2)。

図2 時間外の救急搬送受入割合 (※画像クリックで拡大表示)

全身麻酔手術についてだが、件数について着目されている一方で、拠点的な急性期機能を有する医療機関に対しては、難易度の高い手術の実績について検討される模様だ(図3)。どういった手術などが該当するのかも含めて、これから検討が進められる。

図3 DPC対象病院における手術件数と外保連手術指数 (※画像クリックで拡大表示)

総合性については、拠点的な急性期機能と一般的な急性期機能のいずれにおいてもDPCのカバー率指数や地域医療係数を用いた基準値の設定が考えられそうだ(図4)。

図4 加算算定病院とカバー率指数 (※画像クリックで拡大表示)

他にも、医療機関の専門性や地域の特性をどのように反映させるか、救急搬送の地域シェア率は低いものの手術実績は多い傾向にあるこども病院に対してはどうするかなど、今後改めて検討されていくこととなる。

内科系疾患を適切に反映させる重症度、医療・看護必要度を検討へ

現行の重症度、医療・看護必要度では、内科疾病の場合、A・C項目が一定点数以上である割合が外科系疾病と比較して低く、B項目3点以上の割合が高くなる傾向にある。すなわち、内科系の救急搬送や緊急入院では入院初日から一定期間は患者の重症度を適切に評価できていないということになっている現状にある。

そこで今回、内科系疾患の重症度を適切に反映できるための重症度、医療・看護必要度の見直しについて考え方が示されたところだ(図5)。

図5 内科系疾患をより反映する重症度、医療・看護必要度の検討 (※画像クリックで拡大表示)

内科系疾患でA項目で割合の高い緊急入院の該当日数の延伸、免疫抑制剤の増点、呼吸ケアの定義の見直しといった修正をかけることなどが検討されている。また、検査の包括内出来高点数に対する加点も検討されているのがわかる。今後の議論に注目をしておきたい。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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