【医療業界動向コラム】第141回 令和6年度診療報酬改定後の入院医療の評価の現状を確認する

2025.06.03

令和7年5月22日、令和7年度第2回入院・外来医療等の調査・評価分科会が開催された 。これは、令和8年度診療報酬改定における入院医療及び外来医療に関する議論の素地を作るための議論である 。今回の分科会では、新たな地域医療構想における急性期拠点機能と診療報酬の連動・整合性について議論されているが、令和6年度入院・外来医療等における実態調査の速報も公表されている 。ここではその速報の中から、個人的に気になったポイントをピックアップして確認する 。

リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算は低調

図1_リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算について(※画像クリックで拡大表示)

骨太方針2024でも、リハビリテーション・栄養・口腔ケアに関する内容が盛り込まれ、注目を集めた評価だが、セラピストの確保や休日リハの提供が課題となっている 。令和8年度診療報酬改定で、こうしたボトルネックとなっている点が解消されるかが注目される 。

地域包括医療病棟での課題点

要求水準の高い地域包括医療病棟だが、実際に導入後の経営状況を見ると、経営的には安定していることが伺える 。また、患者の状態にあった機能となっていることを実感している様子である 。しかしその一方で、先のリハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算にも通じるが、休日リハの提供が課題となっている(図2) 。このあたりの実績などの見直しは焦点となるだろう 。

図2_地域包括医療病棟の施設基準の状況(※画像クリックで拡大表示)

地域包括ケア病棟入院料、令和6年度診療報酬改定後の平均在院日数に大きな変化は無し

令和6年度診療報酬改定で、地域包括ケア病棟の平均在院日数にテコ入れが入った 。では、令和6年度診療報酬改定後に変化はあったか確認すると、ほぼ変化は確認されなかった(図3) 。令和8年度診療報酬改定では、さらに平均在院日数の短縮化(30日?)が考えられる状況である 。

図3_地域包括ケア病棟の平均在院日数(※画像クリックで拡大表示)

療養病棟における経腸栄養管理加算、NSTの有無が課題

栄養を高めることで、ADLの低下を防ぎ、自立度を高めていくことにつながる 。そこで極力、中心静脈栄養から経腸栄養へ移行を促していくための経腸栄養管理加算が新設されたところだが、低調な状況である 。その理由としては、栄養サポートチーム(NST)がそもそも無い、というものがある(図4) 。なお、経腸栄養管理加算を算定している病院では、算定していない病院と比べて、中心静脈栄養の実施率が低いことが分かっており、加算を推進していくことが、患者の自立度をさらに加速させていくことになる 。

図4_療養病棟における経腸栄養管理加算の状況(※画像クリックで拡大表示)

また、摂食・嚥下機能の回復に向けた体制の有無を確認すると、3〜4割の病院で体制がないことも確認できている 。療養病棟単独での対応には限界があるともいえるため、安易な要件緩和というのではなく、近隣医療機関の協力とレビューを受けることによる体制整備なども議論されていくだろう 。

持参薬確認という負担

勤務医の負担軽減に病院薬剤師の役割が大きく貢献されていることは知られている 。では、病院薬剤師自身の負担軽減はできているだろうか 。今回の調査でクローズアップされているのが持参薬の確認である 。病床等の種類に関係なく、等しく負担が重いとのことである(図5) 。

図5_病棟薬剤師における持参薬確認について(※画像クリックで拡大表示)

持参薬確認については、予定入院患者のかかりつけ薬局と連携することで、入院までの期間の服薬調整を依頼し、服薬情報一覧を作成してもらう「服薬情報等提供料3(調剤報酬)」をうまく活用していくことがポイントである 。病院の薬剤師の負担軽減を図ることが、勤務医の負担軽減にもつながるといえることから、まずは、持参薬確認の面から今後の議論を注視していきたい 。

山口 聡 氏

HCナレッジ合同会社 代表社員

1997年3月に福岡大学法学部経営法学科を卒業後、出版社の勤務を経て、2008年7月より医業経営コンサルティング会社へ。 医業経営コンサルティング会社では医療政策情報の収集・分析業務の他、医療機関をはじめ、医療関連団体や医療周辺企業での医 療政策や病院経営に関する講演・研修を行う。 2021年10月、HCナレッジ合同会社を創業。

https://www.hckn.work

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