ケアマネの処遇改善はいつから?2026年改定の要件や給与への影響を徹底解説
2026.06.23
介護保険制度の中核を担うケアマネジャーですが、長年にわたり処遇改善加算の対象外とされてきました。そのため、給与面での不満や将来への不安を抱える職員は少なくありません。しかし、2026年度(令和8年度)の介護報酬改定において、ケアマネジャーも処遇改善の対象となります。
本記事では、経営者や管理者の皆様に向けて、ケアマネジャーの処遇改善が「いつから」「いくら」になるのかを解説します。さらに、事業所として加算を取得するために今から準備すべき算定要件や手続きの全体像をまとめました。制度変更を正確に理解することで、職員の離職防止と安定した事業所運営につなげることができます。
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目次
ケアマネの処遇改善はいつから?いくら増える?

まずは、現場の職員がもっとも気にかけている「正確な時期」と「具体的な金額」についての結論をお伝えします。
新設される加算の概要を把握し、事業所の収益や給与設計にどう影響するのかを確認してください。
2026年(令和8年)の介護報酬改定から新設見込み
これまで処遇改善加算の対象外だった「居宅介護支援」および「介護予防支援」ですが、2026年(令和8年)6月の介護報酬改定で新たに「介護職員等処遇改善加算」が設けられる方針が示されています。この改定により、介護職員だけでなく、ケアマネジャーを含む介護従事者全体の処遇改善と職場環境の向上が図られることになります。
また、2027年の介護保険改正に向けて、月額1万円をベースとした処遇改善を推進する方針も政府から示されています。そのため、2026年の介護報酬改定を待たず、臨時改定(期中改定)を実施して処遇改善を早期に実現しようとする議論も活発に行われています。今後の最新動向を注視し、制度の施行に向けて早期に準備を始めることが重要です。
加算率2.1%、月額7,000円〜10,000円アップの試算
新設される居宅介護支援の処遇改善加算の加算率は「2.1%」となる見込みです。給与が具体的にいくら増えるのかは、事業所の総報酬単位数や基本給、加算の配分方法によって異なります。たとえば、居宅介護支援事業所の月間総報酬単位数が10万単位の場合、2.1%の加算で2,100単位の増収となります。
地域区分単価を10円と仮定すると、事業所としては月額21,000円の増収です。この増収分を事業所に所属する複数名のケアマネジャーで分配することになります。試算上では、ケアマネジャー1人あたり月額7,000円から10,000円程度の給与アップが見込まれています。加算額の計算ロジックを理解し、自事業所における増収額のシミュレーションを行っておくことが求められます。
なぜ今まで対象外だったケアマネが処遇改善されるのか?背景と目的

これまで対象外とされてきたケアマネジャーが、なぜ今回の改定で処遇改善の対象に含まれることになったのでしょうか。その背景には、国が解決を急ぐ深刻な人材不足や業務負担の実態があります。
他の介護職種との広がる給与格差と深刻な人材不足
過去10年間で、他の介護職種の給与水準は10%台の半ばから後半の伸びを示しています。一方で、ケアマネジャーの給与上昇率は約5%に留まっており、大きな格差が生じています。高い専門性と実務経験が求められるにもかかわらず、給与水準が停滞していることは、人材確保において致命的な課題です。
実際に、ケアマネジャーの有効求人倍率は4.51倍にまで急伸しており、いくら募集しても採用できない状況が続いています。介護支援専門員実務研修受講試験の合格者数も減少傾向にあり、居宅介護支援事業所数は6年連続で減少しています。
このようにサービス提供体制の維持が困難になりつつある現状が、処遇改善を急ぐ最大の要因です。
シャドーワーク(法定外業務)による業務負荷の限界
ケアマネジャーは本来の法定業務に加えて、多岐にわたる「シャドーワーク(法定外業務)」を抱えています。ある調査では、ケアマネジャーの97.3%が介護保険外の相談対応や通院同行などの法定外業務を経験していると報告されています。利用者の安否確認や長時間の電話対応、書類作成の補助など、業務範囲は拡大する一方です。
これらの業務は心身の疲弊を招き、残業時間を増加させますが、事業所の収益や個人の評価には直結しにくいというジレンマがあります。多大な業務負荷と責任を負いながらも正当に金銭的評価がされていないという課題が浮き彫りになっています。こうした現場の苦労に報い、専門職としてのモチベーションを維持するためにも、処遇改善が必要不可欠と判断されました。
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居宅介護支援事業所における処遇改善加算の「算定要件」

事業所の管理者がもっとも注視すべきは、加算対象となるための具体的な要件です。新設される加算を算定するためには、主に2つのルートのいずれかを満たす必要があります。
令和8年度特例要件(ケアプランデータ連携システムの活用など)
算定要件の一つが「令和8年度特例要件」を満たすルートです。この要件では、「ケアプランデータ連携システム」への加入と利用実績の報告が求められます。2026年度中の誓約でも可とされる見込みですが、システムの利用実績を報告書に記載する必要があります。
あるいは、社会福祉連携推進法人への所属という選択肢も用意されています。特にケアプランデータ連携システムの導入は、転記作業や入力ミスを減らし、業務効率化に直結します。国としても介護DXを推進する狙いがあるため、早急にシステムの導入検討と運用準備を進めることが推奨されます。
処遇改善加算Ⅳに準ずる要件(キャリアパス・職場環境等要件)
もう一つの算定ルートが「介護職員等処遇改善加算Ⅳに準ずる要件」です。こちらを選択する場合、キャリアパス要件と職場環境等要件の両方を満たす必要があります。キャリアパス要件では、職位や職責に応じた賃金体系の整備や、資質向上のための研修計画の策定と実施が求められます。
職場環境等要件では、ICT活用による業務負担の軽減や、子育て・介護との両立支援など、指定された項目の中から一定数の取り組みを行う必要があります。居宅介護支援事業所においては、給付管理業務の一部を事務員へタスクシフトしたり、記録ソフトの入力ルールを明確化したりするなど、現実に回る形での業務改善が有効です。事業所の実態に合わせた無理のない計画を立てることが重要になります。
加算取得に向けた申請手順・手続きの流れ

処遇改善加算を取得するためには、定められた期限までに適切な手続きを行う必要があります。申請漏れを防ぐため、以下の4つのステップに沿って準備を進めてください。
| ステップ | 手続き内容 | 概要 |
|---|---|---|
| 手順1 | 体制等状況一覧表(体制届)の提出 | 自治体へ体制届を提出し、加算を算定する旨を申告します。 |
| 手順2 | 処遇改善計画書の作成と提出 | 賃金改善の見込み額や具体的な取り組み内容を記載した計画書を作成し、期日までに提出します。 |
| 手順3 | 改善施策の実施と賃金改善 | 計画書に記載したキャリアパス要件や職場環境等要件の施策を事業所内で実施し、スタッフへ手当等を支給します。 |
| 手順4 | 実績報告書の作成と提出 | 年度末を過ぎた後、実際の支給実績をまとめた報告書を作成し、提出期限までに自治体へ報告します。 |
計画書の作成から実績報告まで、年間を通じた管理が必要となるため、担当者を決めてスケジュールを管理することが確実な取得につながります。
処遇改善加算を活かすための実務と「出口戦略」

処遇改善加算は、単にスタッフへ手当を支給して終わりではありません。制度を最大限に活用し、職員の定着や事業所の安定経営につなげるための「出口戦略」が不可欠です。
トラブルを防ぐ賃金改善の配分設計(基本給か、手当か)
加算で得た収益をどのようにスタッフへ配分するかは、経営者の重要な判断となります。主な方法として、基本給に上乗せするベースアップと、毎月の手当や年度末の賞与として支給するパターンがあります。基本給のベースアップは、職員の安心感につながり採用や定着に有利に働きますが、業績が悪化しても下げられない固定費となるリスクがあります。
一方で、月次手当や年度末の精算による支給は、加算の入金状況に合わせた資金繰りの調整がしやすいという利点があります。どちらの方法を選択するにせよ、職員間で不公平感が出ないように支給基準を明確にする必要があります。就業規則や賃金規程を適切に見直し、評価制度と連動させた納得性の高い配分設計を構築してください。
加算による利用者負担への影響と適切な説明準備
処遇改善加算を算定することで事業所の収入は増加しますが、同時に利用者の自己負担額もわずかに増加する場合があります。居宅介護支援は原則として全額が介護保険給付となりますが、今後の制度改正の動向や、他のサービスと組み合わせて利用している場合の総単位数によっては影響が出る可能性があります。
加算の算定によって請求額が変動する場合、利用者やその家族から疑問や不満の声が上がることも想定されます。トラブルやクレームを未然に防ぐため、制度変更の趣旨が「介護人材の確保とサービスの質向上」にあることを正しく理解してもらう必要があります。
事前に案内文書を配布したり、面談時に丁寧に説明したりして、同意を得るための準備を整えておくことが事業所としての責務です。
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超高齢社会の要であるケアマネジャーの確保は、日本の介護戦線における最重要課題の一つです。本記事は、複雑な「処遇改善加算」の仕組みや2024年度の改定動向を、背景から具体策まで非常に分かりやすく整理しています。
注目すべきは、今まで対象外だった居宅介護支援事業所も処遇改善加算の対象となった2024年6月からの動向です。これにより「いつから、いくら上がるのか」という現場の疑問に対し、具体的な道筋が示されました。一方で、単独の居宅介護支援事業所は直接の対象外となるなど、経営努力による「間接的な処遇改善」が求められるシビアな現状にも的確に触れています。
単なる賃上げに留まらず、ICT活用やキャリアパス構築といった「職場環境の質的向上」へ繋げる視点こそ、これからの介護経営の鍵です。現場のモチベーションを高め、持続可能な地域包括ケアを築くための実践的な指南書として、ぜひご一読をおすすめします。
まとめ:処遇改善を機に、ケアマネが長く働き続けられる環境へ

2026年度の介護報酬改定は、ケアマネジャーの待遇を改善し、職業としての魅力を取り戻す大きな転換点となります。長年の課題であった給与水準の引き上げが実現すれば、職員のモチベーション向上や離職防止に大きく寄与するはずです。事業所の経営者や管理者の皆様は、新設される加算の要件を正確に把握し、算定に向けた準備を今すぐ始めることが求められます。
特に、ケアプランデータ連携システムの導入や賃金規程の見直しは、一朝一夕には完了しません。制度の施行直前になって慌てないよう、計画的に業務改善やICT化を進めていく必要があります。処遇改善加算の取得を単なる賃上げの手段と捉えるのではなく、ケアマネジャーがその専門性を十分に発揮し、長く働き続けられる職場環境を構築する契機として活用してください。
監修:斉藤 圭一
主任介護支援専門員、MBA(経営学修士)
神奈川県藤沢市出身。1988年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、第一生命保険相互会社(現・第一生命保険株式会社)に入社。その後、1999年に在宅介護業界大手の株式会社やさしい手へ転職。2007年には立教大学大学院(MBA)を卒業。 以降、高齢者や障がい者向けのさまざまなサービスの立ち上げや運営に携わる。具体的には、訪問介護・居宅介護支援・通所介護・訪問入浴などの在宅サービスや、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅といった居住系サービス、さらには障がい者向けの生活介護・居宅介護・入所施設の運営を手がける。 また、本社事業部長、有料老人ホーム支配人、介護事業本部長、障害サービス事業部長、経営企画部長など、経営やマネジメントの要職を歴任。現在は、株式会社スターフィッシュを起業し、介護・福祉分野の専門家として活動する傍ら、雑誌や書籍の執筆、講演会なども多数行っている。

