訪問看護 加算一覧|算定要件や算定時の注意点などを解説

2025.06.15

訪問看護ステーションの収益を向上させるうえで、加算は無視できない要素です。
また、訪問看護における加算は、 質の高い看護を提供するために重要な役割を果たします。

しかし、加算は算定要件が細かく、 最新情報に常にアンテナを張っておく必要があるものです。
算定にミスがあれば取得できなくなるうえに、訪問看護ステーションへの信頼が低下するリスクもあります。

本記事では、訪問看護における加算一覧に加え、 介護保険と医療保険それぞれの算定要件を紹介します。
さらに算定を成功させるためのポイントについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

訪問看護の加算とは

訪問看護における加算とは、基本の訪問看護料金に上乗せされる報酬のことです。
加算は、サービスの質を向上させたり、特定のニーズに対応したりする訪問看護ステーションを評価し、支援するために設けられています。

本章では訪問看護における加算の、基礎的な知識について解説します。

訪問看護における加算の重要性

訪問看護ステーションにとって、加算は経営を安定させ、質の高いサービスを提供するための重要な要素です。
加算を適切に算定することで、以下のようなメリットが期待できます。

経営の安定化加算によって収入の増加が可能です。その結果、経営基盤が安定します。
質の高い看護の提供加算によって得られた資金を、スタッフの教育や研修、設備投資などに充てることで、サービスの質を向上できます。
多様なニーズへの対応難病患者や重度な要介護者など、より専門的なケアを必要とする利用者への対応が可能です。
スタッフのモチベーション向上質の高い看護を提供することで、スタッフの達成感や満足度が向上し、モチベーションアップにつながります。

加算の取得は収益を増加させるだけでなく、厚生労働省や自治体の方針に沿った経営を実現し、施設の状況を改善するうえでも重要です。
利用者へのより良いサービスの提供もできるため、積極的に取得を目指しましょう。

加算を理解するための3つのポイント

訪問看護の加算は種類が多く、算定要件も複雑であるため、正しく理解することが重要です。
加算を理解するうえでも、以下のポイントを意識しましょう。

介護保険と医療保険の区別訪問看護の加算には、介護保険と医療保険の2種類があります。それぞれの保険制度で算定できる加算が異なるため、注意が必要です。
算定要件の確認各加算には、算定するための具体的な要件が定められています。算定要件を満たしているかどうかを正確に確認しましょう。
最新情報のキャッチアップ介護保険・診療保険は定期的に改定されます。加算の種類や算定要件も変更される可能性があるため、常に最新情報を確認するようにしましょう。

上記のポイントを踏まえ、加算に関する知識を深めることで、適切な算定と質の高い看護の提供につなげられます。
訪問看護の場合、通常の介護施設とは違って介護保険・医療保険双方の加算をチェックする必要があります。

訪問看護の加算一覧

訪問看護の加算は、サービスの質を向上させ、多様なニーズに対応するために設けられているものです。
加算を適切に算定することで、訪問看護ステーションの運営を安定させれば、より質の高い看護の提供が可能です。

本章では介護保険・医療保険それぞれの加算一覧を紹介します。

介護保険の加算一覧

介護保険における訪問看護の加算は、利用者の状態やサービス内容に応じて多岐にわたります。
代表的な加算の一覧は以下のとおりです。

加算名概要
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)・(Ⅱ)24時間連絡体制を確保し、緊急時訪問を実施した場合に算定。ⅠとⅡで単位数と算定要件が異なります。
特別管理加算特別な管理を必要とする利用者に対し、計画的な管理を行った場合に算定。
ターミナルケア加算ターミナルケアを実施した場合に算定。
看護体制強化加算緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算の実績が一定以上ある事業所を評価するための加算。
退院時共同指導加算医療機関と連携し、退院後の療養について共同で指導を行った場合に算定。
初回加算新規に訪問看護を開始した際に算定。
中山間地域等における小規模事業所加算中山間地域等に所在する小規模な訪問看護ステーションが、質の高いサービスを提供していることを評価する加算。
参照:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省

介護保険に類する加算は3年に1回の介護報酬改定によって変更される場合があります。
改定によって算定要件が変更されるケースも珍しくないため、定期的な確認が必須です。

加算が新設された際は、サービス内容や経営体制などが算定要件に合致しているかをチェックしましょう。
算定要件によっては、新たなサービスの提供や設備の導入などをする場合があります。

医療保険の加算一覧

医療保険における訪問看護の加算も、介護保険と同様に利用者の状態やサービス内容に応じてさまざまな種類があります。
診療報酬の代表的な加算の一覧は以下のとおりです。

加算名概要
訪問看護基本療養費Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ訪問看護の基本となる費用。利用者の状態や訪問時間によって異なります。
在宅患者連携指導加算医療機関と連携し、在宅での療養について指導を行った場合に算定。
退院支援指導加算医療機関と連携し、退院後の療養について支援を行った場合に算定。
参照:令和6年度診療報酬改定【全体概要版】|厚生労働省

上記の加算は、訪問看護ステーションが質の高い看護を提供するための重要な要素です。
各加算の算定要件を正確に理解し、適切に算定することで、訪問看護サービスの充実を図りましょう。

なお、診療報酬の改定は介護報酬と違って2年に1回のペースで実施されます。
当然、加算の新設や廃止・算定要件の変更が実施される可能性があるため、定期的なチェックが不可欠です。

訪問看護の加算の算定要件

訪問看護の加算を算定するには、それぞれ細かく定められた要件を満たす必要があります。
介護保険と医療保険では加算の種類も要件も異なるため、注意が必要です。

本章では、それぞれの算定要件について詳しく解説していきます。

介護保険の加算の算定要件

介護保険の加算は、利用者の状態やサービス内容、事業所の体制などに応じて算定されます。
代表的な加算の算定要件を以下にまとめました。

加算名算定要件
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)緊急時訪問看護加算(Ⅰ)次に掲げる基準のいずれにも適合すること。(1)利用者またはその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあること。(2)緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備が行われていること。
緊急時訪問看護加算(Ⅱ)緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の(1)に該当するものであること。訪問看護における24 時間対応について、看護師等に速やかに連絡できる体制等、サービス提供体制が確保されている場合は看護師等以外の職員も利用者または家族等からの電話連絡を受けられるよう、見直しを行う。
特別管理加算次に掲げる基準のいずれかに該当すること当該訪問看護事業所における前年度の理学療法士、作業療法士または言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること。 緊急時訪問看護加算、特別管理加算および看護体制強化加算をいずれも算定していないこと。
看護体制強化加算緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算の実績が一定以上あること
ターミナルケア加算ターミナルケアに関する計画書を作成し、内容について利用者または家族等に説明し、同意を得ていること24時間連絡体制を確保し、必要に応じて訪問看護を提供できる体制にあること
退院時共同指導加算病院または診療所に入院中の者が退院するにあたり、訪問リハビリテーション事業所の医師または理学療法士、作業療法士若しくは言語聴覚士が、退院前カンファレンスに参加し、退院時共同指導※を行った後に、当該者に対する初回の訪問リハビリテーションを行った場合に、当該退院につき1回に限り、所定単位数を加算する。
初回加算(Ⅰ)新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所または介護保険施設から退院又は退所した日に指定訪問看護事業所の看護師が初回の指定訪問看護を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。ただし、(Ⅱ)を算定している場合は、算定しない。
初回加算(Ⅱ)新規に訪問看護計画書を作成した利用者に対して、病院、診療所または介護保険施設から退院または退所した日の翌日以降に初回の指定訪問看護を行った場合は、1月につき所定単位数を加算する。ただし、(Ⅰ)を算定している場合は、算定しない。 
中山間地域等における小規模事業所加算居宅介護支援と同様に、特別地域加算、中山間地域等における小規模事業所加算および中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算の対象とする。
参照:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省

上記以外にも、さまざまな加算が存在し、それぞれに細かな算定要件が定められています。
最新の情報を確認し、算定漏れがないように注意しましょう。

医療保険の加算の算定要件

医療保険の加算も、介護保険と同様に、利用者の状態やサービス内容、事業所の体制などに応じて算定されます。
代表的な加算の算定要件を以下にまとめました。

加算名算定要件
在宅患者連携指導加算利用者・その家族から同意を得て、訪問診療を実施している医療機関、訪問歯科診療を実施している医療機関、訪問薬剤管理指導を実施している調剤薬局等の医療関係職種間で、月2回以上、文書により情報共有を行っていること共有された情報を基に、利用者・その家族に対して指導を行っていること訪問看護記録書に、他の医療関係職種から受けた情報の内容、情報提供日、その情報を基に行った指導の内容の要点、指導日を記録していること
訪問看護ターミナルケア療養費在宅または特別養護老人ホーム等で死亡した利用者(ターミナルケアを行った後、24時間以内に在宅以外で死亡した者を含む)に対して、ターミナルケアを実施していること死亡日および死亡日前14日以内の計15日間に2回以上、訪問看護基本療養費または精神科訪問看護基本療養費を算定していること訪問看護ステーションの連絡担当者の氏名、連絡先電話番号、緊急時の注意事項等について利用者およびその家族に説明した上でターミナルケアを行っていること利用者が死亡した場所、死亡時刻等を訪問看護記録書に記録すること
退院支援指導加算病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院から退院・退所する利用者やその看護にあたる者に対して、病院等の主治医、その他従業者と共同して在宅での療養上の指導を行うこと退院時共同指導の内容を文書によって提供すること退院・退所後に訪問看護を行うこと退院時共同指導の内容を訪問看護記録書に記録すること
参照:診療報酬の改定等について|厚生労働省
   訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法|厚生労働省
   早期の在宅療養への円滑な移行や地域生活への復帰に向けた取組の促進④|厚生労働省

医療保険の加算は算定要件が複雑なものもあるため、正確に把握することが重要です。

加算算定を成功させるポイント

訪問看護の加算算定を成功させるためには、以下の3つのポイントが重要です。

  • チーム全体での情報共有と意識向上に務める
  • 正確な記録を徹底する
  • 最新情報を常に確認する

上記のポイントを意識することで、加算の取りこぼしを防ぎ、適正な運営につなげられます。

チーム全体での情報共有と意識向上に努める

加算を取得する際は、チーム全体で要件の情報共有やスタッフの意識向上に努めましょう。

加算算定は、訪問看護ステーション全体で取り組むべき課題です。
そのため、確実に算定するうえでも以下の対策を実施しましょう。

定期的な研修の実施加算に関する最新情報を共有し、算定要件の理解を深めるための研修を定期的に実施しましょう。
事例検討会の開催実際の事例を基に、加算算定の可否や注意点について検討する機会を設けましょう。
情報共有の徹底加算に関する変更点や重要な情報を、スタッフ全員が共有できる体制を構築しましょう。

加算の種類によっては、新たなサービスの提供などが要件に含まれている場合があります。
確実に取得するためにも、訪問看護ステーションのスタッフが加算を理解し、適切に対応できる体制を構築しましょう。

正確な記録を徹底する

加算を取得するなら、正確な記録を徹底しましょう。

加算算定の根拠となるのは、訪問看護記録書などの記録です。
正確な記録は、算定要件を満たしていることを証明するために不可欠です。

訪問看護の加算に関する情報を記録する際は、以下のポイントを意識しましょう。

記録項目の確認算定に必要な記録項目を事前に確認し、漏れがないように記録しましょう。
具体的な記載誰が・いつ・どこで・何をしたのかを具体的に記載しましょう。
客観的な情報主観的な判断だけでなく、客観的な情報を記載するように心がけましょう。

正確な記録を目指すなら、書類作成や記録作成の電子化がおすすめです。
手書きによるミスを防げるうえに、必要な数値の集計や情報の整理を効率化できます。

最新情報を常に確認する

加算の種類や算定要件も変更されることがあるため、常に最新情報を確認することが重要です。
特に介護報酬・診療報酬の改定時は以下の対策を実施しましょう。

厚生労働省の情報を確認厚生労働省のウェブサイトや関連通知を定期的に確認しましょう。
介護保険最新情報のチェック介護保険最新情報などをチェックし、最新の情報を把握しましょう。
関係団体からの情報収集訪問看護に関する関係団体(訪問看護ステーション協会など)からの情報を収集しましょう。

加算の算定要件によっては、経営体制の変更や新たなサービスの提供など、大がかりな対策を実施するケースがあります。
正確な情報をチェックし、適切に対応しましょう。

ワイズマンの介護ソフトを加算の取得に役立てよう

加算の取得を目指すなら、ぜひ弊社ワイズマンの介護ソフトをご活用ください。

ワイズマンが提供している訪問看護ステーション管理システムSPは、加算の取得に必要な情報の記録・集計などを効率的に実践できます。
また、訪問看護計画書をはじめとする医療文書の作成や管理なども可能です。

訪問看護ステーション管理システムSPを活用すれば、加算の取得に必要な情報をスムーズに確認できるため、ミスをするリスクが減ります。
もちろん、請求作業の電子化もできるので、事務作業の負担を軽減できます。

梅沢 佳裕 氏
梅沢 佳裕 氏

加算は基本報酬に上乗せされる評価であり、ステーションの経営を安定させ、スタッフの教育や設備投資による質の高いサービス提供、多様なニーズへの対応、医療従事者であるスタッフ自身のモチベーション向上に直接繋がる要素です。加算には介護保険と医療保険で異なる種類があり、その算定要件は非常に細かく複雑です。これらの要件を正確に理解し、適切に算定することが、収入を確保し、算定ミスによる機会損失や行政・利用者からの信頼低下を防ぐ上で極めて重要となります。記事では、正確な算定を成功させるための具体的なポイントとして、最新情報の常時確認、正確な記録の徹底、そしてチーム全体での情報共有と意識向上を挙げており、これは日々の業務で必ず意識すべき点です。本記事が、加算の正しい理解と適正な算定を通じ、皆様の事業運営と利用者様への質の高いケア実現の一助となることを期待します。

訪問看護の加算を理解して質の高い看護を提供しよう

訪問看護の加算制度は、質の高い看護ケアを評価し、より良質な看護サービスの提供を促進するための重要な仕組みです。
加算を適切に算定し、質の高い看護を提供することは、利用者の満足度向上、ひいては訪問看護ステーションの信頼性向上や経営の安定化につながります。

訪問看護の現場では、介護保険・医療保険の2種類の保険制度が適用されるため、加算の種類や算定要件もそれぞれ異なります。
本記事で紹介したポイントを意識するだけでなく、弊社ワイズマンの介護ソフトを活用し、確実な取得を目指しましょう。

監修:梅沢 佳裕

人材開発アドバイザー

介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

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