訪問看護ターミナルケア加算とは?算定要件・同意書・金額を徹底解説

2025.06.15

「最期まで住み慣れた家で過ごしたい」と考える方は多いです。

訪問看護におけるターミナルケアは、そのような願いを実現するために欠かせないものです。ターミナルケア加算は質の高いケアを支える重要な制度ですが、算定要件が複雑でどのように利用すれば良いのかと悩む方も多いでしょう。

本記事では、訪問看護ターミナルケア加算の概要や算定要件を解説します。ぜひ、質の高いターミナルケアの提供に役立ててください。

訪問看護ターミナルケア加算とは

訪問看護ターミナルケア加算は、終末期の利用者が可能な限り住み慣れた自宅で、安心して療養生活を送れるように支援するための制度です。質の高いターミナルケアを提供している訪問看護ステーションに対して、保険給付として加算されます。

ターミナルケア加算の目的と重要性

ターミナルケア加算の主な目的は以下のとおりです。

目標説明
利用者のQOL(生活の質)の向上痛みや苦痛を緩和し、精神的なサポートを行い、利用者が尊厳を持って最期まで自分らしく過ごせるように支援する
家族の精神的・身体的負担の軽減家族に対して、介護方法の指導や相談援助を行い、精神的なサポートを行うことで負担を軽減しながら安心して療養生活を送れるように支援する
多職種連携の推進医師やケアマネージャー、その他の医療・介護関係者と連携し、利用者にとって最適なケアを提供する

高齢化が進む日本では、自宅で最期を迎えたいと希望する方が増えています。訪問看護におけるターミナルケアは、このようなニーズに応えるうえで極めて重要です。

つまり、ターミナルケア加算は質の高いターミナルケアを推進し、利用者とその家族が安心して最期の日々を過ごせるようにするために不可欠なものと言えるでしょう。

訪問看護におけるターミナルケアの役割

訪問看護におけるターミナルケアは、利用者の身体的な苦痛の緩和だけでなく、精神的なケアや家族へのサポートも重要な役割を担います。具体的には、以下のようなケアを提供します。

ケアの種類詳細
症状緩和痛みや呼吸困難、倦怠感などのつらい症状を緩和するためのケア
清潔ケア体の清拭や入浴介助など、清潔を保つためのケア
栄養管理食欲不振や嚥下困難がある場合、栄養状態を維持するための食事の工夫や経管栄養などのサポート
排せつケア排せつに関する悩みに対する適切なケアやアドバイスの提供
精神的なサポート不安や孤独感など、精神的な苦痛を抱える利用者や家族の心のケア
家族への介護指導・相談家族に対して、介護方法の指導や療養生活に関する相談援助
看取りの支援最期のときを安心して迎えられるように、家族とともに寄り添う

訪問看護師は利用者や家族の意向を尊重しながら多職種と連携し、それぞれの専門性を活かしてきめ細やかなケアを提供します。

訪問看護ステーションがターミナルケア加算を適切に算定すると、利用者はより質の高いケアを受けることができ、住み慣れた家で安心して最期を迎えられます。

【2025年最新】訪問看護ターミナルケア加算の算定要件

訪問看護ターミナルケア加算を算定するためには、厚生労働省が定めるいくつかの要件を満たす必要があります。ここでは、2025年最新の算定要件を詳しく解説します。これらの要件を理解し、質の高いターミナルケアを提供しましょう。

算定要件1:算定対象となる利用者

ターミナルケア加算の対象となるのは、末期の悪性腫瘍や厚生労働大臣が定める疾病などにより、医学的な管理が必要と認められた利用者です。具体的には、以下の状態にある方が対象です。

  • 末期の悪性腫瘍
  • 後天性免疫不全症候群
  • 脊髄損傷
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 進行性筋ジストロフィー症
  • 多発性硬化症
  • 重症筋無力症
  • スモン
  • サルコイドーシス
  • 慢性呼吸器不全
  • 慢性心不全
  • 慢性腎不全
  • 肝硬変
  • 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症およびパーキンソン病
  • その他厚生労働大臣が定める疾病

なお、要介護者が対象であり、要支援者は算定対象外です。

参考:厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等

算定要件2:ターミナルケア計画書の作成と同意

ターミナルケア加算を算定するためには、利用者またはその家族に対してターミナルケアに関する計画書を作成し、内容を十分に説明したうえで同意を得る必要があります。計画書には、以下の内容を記載することが求められます。

  • 利用者の状態とターミナルケアの目標
  • 具体的なケアの内容とスケジュール
  • 緊急時の対応方法
  • 多職種連携に関する情報
  • 利用者と家族の意向

計画書は利用者と家族が十分に理解できるように、わかりやすい言葉で記載することが重要です。また、同意を得る際にはターミナルケアの内容やリスク、費用などについて十分に説明する必要があります。

算定要件3:24時間連絡体制の確保

ターミナルケア加算を算定するためには、24時間連絡が取れる体制を確保していなければいけません。これは、利用者の状態が急変した場合や、緊急の相談に対応できるようにするためです。具体的には、以下の体制を整備する必要があります。

  • 24時間対応可能な電話番号の設置
  • 連絡を受けた際に、適切な対応ができる看護師などの配置
  • 必要に応じて、緊急訪問ができる体制の整備

24時間連絡体制については利用者や家族に周知し、緊急時の連絡方法を明確に伝えることが重要です。

算定要件4:多職種連携の実施

ターミナルケア加算を算定するためには、多職種連携を積極的に実施しなければいけません。これは、利用者の状態やニーズに応じてさまざまな専門職が連携し、包括的なケアを提供するためです。具体的には、以下の職種との連携が求められます。

  • 医師(主治医、協力医)
  • 薬剤師
  • 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
  • 管理栄養士
  • ケアマネジャー
  • 介護職員

多職種連携においては、定期的なカンファレンスの開催や情報共有の仕組みを構築することが重要です。また、それぞれの専門職が利用者の状態やニーズを理解し、役割分担を明確にすることが求められます。

訪問看護ターミナルケア加算の同意書:書式と記載例

訪問看護におけるターミナルケア加算の算定には、利用者またはその家族からの同意が不可欠です。この同意は単なる形式的なものではなく、利用者の意思を尊重し、質の高いターミナルケアを提供するための重要なプロセスです。

同意書の重要性と法的根拠

ターミナルケア加算における同意書の取得は、以下の点で重要です。

ルール説明
利用者の意思の尊重ターミナルケアは利用者のQOL(生活の質)を重視し、その方らしい最期を迎えるための支援である。同意書は、利用者が自身の意思でターミナルケアを選択したことを明確にする
インフォームド・コンセントターミナルケアの内容や期待される効果、起こり得るリスクなどを十分に説明し、利用者が理解したうえで同意することが求められる
法的根拠介護保険法および医療保険法に基づき、適切なターミナルケアを提供し、その費用を算定するためには同意書の取得が要件である

同意書の書式と記載例のポイント

同意書の書式は各訪問看護ステーションで独自に作成できますが、以下の項目を含むことが望ましいです。

項目記載例ポイント
タイトル訪問看護ターミナルケアに関する同意書ターミナルケアに関する同意であることが明確にわかるように記載する
同意者氏名、住所、生年月日、利用者との続柄利用者本人が署名・押印できない場合は、家族(原則としてキーパーソン)が代筆する
被同意者氏名、住所、生年月日ターミナルケアを受ける利用者の情報を記載する
同意内容・ターミナルケアの内容に関する説明を受けたこと
・24時間連絡体制に関する説明を受けたこと
・緊急時訪問看護に関する説明を受けたこと
・多職種連携に関する説明を受けたこと
・ターミナルケア計画書の内容に同意すること
各項目について、具体的に説明を受けた内容を記載し、同意する旨を明記する
署名・押印同意者本人の署名・押印自署が難しい場合は、代筆者の氏名と続柄を記載する
日付同意日同意を得た日付を記載する
訪問看護ステーション情報名称、所在地、連絡先訪問看護ステーションの情報を記載する

同意を得る際の注意点と説明義務

同意を得る際には以下の点に注意し、利用者に十分な説明を行う必要があります。

項目内容
丁寧な説明専門用語を避け、わかりやすい言葉でターミナルケアの内容や目的、期待される効果、起こり得るリスクなどを説明する
十分な時間利用者が質問や疑問を自由に話せるように、十分な時間を確保する
選択肢の提示ターミナルケア以外の選択肢(入院治療など)も提示し、利用者が自由に選択できるようにする
記録の徹底説明内容や利用者の反応、同意の経緯などを詳細に記録する
同意能力の確認利用者に十分な判断能力があることを確認する。判断能力が不十分な場合は、家族などキーパーソンに説明し、同意を得る必要がある

同意を得ることは、訪問看護師にとって重要な責務です。利用者の意思を尊重し、質の高いターミナルケアを提供するために丁寧な説明と記録を心がけましょう。

訪問看護ターミナルケア加算の金額と算定日

ここでは、訪問看護ターミナルケア加算の金額と算定日について詳しく解説します。

ターミナルケア加算の金額

令和6年度の改定で、ターミナルケア加算は2,000単位から2,500単位へと増額されました。この引き上げは、医療保険における同様の評価額(主に25,000円)とのバランスを取ることを意図しています。

つまり、介護保険と医療保険の間で、ターミナルケアに対する評価額の差を縮め、より一貫性のある評価体系を目指したものです。

算定日に関するルール

ターミナルケア加算の算定日には、いくつかのルールがあります。以下のルールを理解しておくと、正確な算定が実現します。

項目内容
算定のタイミングターミナルケア加算は、利用者が死亡した月に算定する
死亡日および死亡日前14日死亡日と、その前14日間の訪問看護の実績を確認する
同一日に複数の事業所が訪問した場合同一日に複数の訪問看護事業所がターミナルケアを実施した場合、原則として主となる訪問看護事業所が加算を算定する

上記のルールを遵守し、適切な算定を行うようにしましょう。

Q&A:訪問看護ターミナルケア加算に関するよくある質問

最後に、訪問看護のターミナルケア加算に関するよくある質問を紹介します。それぞれの回答を参考に、制度を適切に活用しましょう。

Q1:末期の悪性腫瘍以外での算定方法

A.ターミナルケア加算は、原則として「終末期」の方が利用対象です。疾患に関わらず終末期であると医師が判断した場合は、先ほど紹介した要件を満たすことで制度を利用できます。

なお、終末期の状態は個々の病態や心身状態によって異なるため、医師との連携が重要です。

Q2:死亡日および死亡日前14日以内の算定方法

A.ターミナルケア加算は、死亡日および死亡日前の14日以内に2日以上ターミナルケアを行った場合に算定できます。具体的な算定方法や算定要件については、厚生労働省が発表している最新の診療報酬情報や先ほど紹介した内容を確認してください。

また、各都道府県の国民健康保険団体連合会や、訪問看護ステーション協会などに問い合わせることも有効です。

Q3:同一日に複数の訪問看護事業所がターミナルケアを実施した場合の算定

A.同一日に複数の訪問看護事業所がターミナルケアを行った場合、原則として、いずれか一つの事業所のみがターミナルケア加算を算定できます。

どの事業所が算定するかは、利用者または家族の意向を尊重し、関係機関と連携して決定する必要があります。算定に関する詳細なルールは、各都道府県の指導に従ってください。

Q4:緊急時訪問看護加算との関係

A.ターミナルケア加算と緊急時訪問看護加算は、同時に算定できる場合があります。ただし、それぞれの加算の算定要件を満たしていなければいけません。

緊急時訪問看護加算は24時間連絡体制を確保し、必要に応じて緊急訪問を行う体制を評価するものであり、ターミナルケア加算と合わせてより手厚い在宅ケアを提供することを目的としています。

Q5:ターミナルケア加算の記録方法

A.ターミナルケア加算を算定するためには、適切な記録が必要です。具体的にはターミナルケア計画書や訪問看護記録、多職種連携に関する記録などを詳細に記録しなければいけません。

これらの記録は算定要件を満たしていることを証明するだけでなく、質の高いターミナルケアを提供するための重要な情報源です。記録様式は各訪問看護ステーションで統一されたものを使用し、必要事項を漏れなく記載しましょう。

梅沢 佳裕氏
梅沢 佳裕氏

「最期まで住み慣れた家で」という願いを支える重要な制度が、訪問看護ターミナルケア加算です。これは、終末期の利用者様が、住み慣れたご自宅で安心して療養生活を送れるよう、質の高いターミナルケアを提供している訪問看護ステーションを評価・支援するものです。目的は利用者QOL向上、家族負担軽減、多職種連携推進。身体的苦痛緩和、精神的ケア、家族支援含む包括的ケア提供を可能とします。算定・質向上には、十分な説明に基づく計画書作成・同意、24時間体制確保、医師やケアマネージャー等との多職種連携実践が不可欠です。令和6年度改定で単位数が増額され、評価の高まりが示されました。本加算の理解・活用は、利用者・家族が安心して穏やかな最期を過ごせるよう支える、訪問看護師の重要な責務です。制度理解・実践を通じ、住み慣れた場所での「その方らしい最期」を尊厳をもって支えていきたいところです。

訪問看護ターミナルケア加算を理解して質の高いケアを提供しよう

訪問看護におけるターミナルケア加算は、利用者が可能な限り住み慣れた場所で安心して最期を迎えられるように支援するための重要な制度です。本加算を適切に理解し活用することで、訪問看護ステーションはより質の高いターミナルケアを提供できます。

ターミナルケアは単に身体的な苦痛を和らげるだけでなく、精神的なサポートや家族への支援も含む包括的なケアです。利用者と家族の意向を尊重し、多職種と連携しながらその方らしい最期を支えることが求められます。

訪問看護ステーション全体でターミナルケア加算に関する知識を共有し、定期的な研修などを実施すればより質の高いターミナルケアを提供できる体制を構築できます。

監修:梅沢 佳裕

人材開発アドバイザー

介護福祉士養成校の助教員を経て、特養、在宅介護支援センター相談員を歴任。その後、デイサービスやグループホーム等の立ち上げに関わり、自らもケアマネジャー、施設長となる。2008年に介護コンサルティング事業を立ち上げ、介護職・生活相談員・ケアマネジャーなど実務者への人材育成に携わる。その後、日本福祉大学助教、健康科学大学 准教授を経て、ベラガイア17 人材開発総合研究所 代表として多数の研修講師を務める。社会福祉士、介護支援専門員、アンガーマネジメント・ファシリテーターほか。

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