訪問看護を立ち上げた際の年収は?開業に必要な資金・成功させるコツを徹底解説!

2024.03.02

在宅介護・医療の需要増加に伴い、訪問看護ステーションの立ち上げをご検討中の方も多いはず。
ただそこで気になるのが、独立後の年収ではないでしょうか。

そこで本記事では、訪問看護ステーションを立ち上げた際の年収を解説します。
従業員の平均年収や開業資金も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

看護師資格を使って独立・開業できる仕事

余談として、看護師資格を使って独立できる業種を紹介します。
実は、看護師資格を活かせる業種は、訪問看護ステーション以外にも以下のものがあります。

  • デイサービス(通所介護)
  • 高齢者グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
  • ナーシングホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅・有料老人ホーム
  • 障がい者グループホーム(共同生活援助)
  • 生活介護(障害福祉サービス)
  • 放課後等デイサービス・児童発達支援

「看護師資格やこれまでのキャリアを活かして独立したい」とお考えの方は、上記の業種も検討してみてはいかがでしょうか。

訪問看護ステーションを立ち上げた際の年収は?

在宅医療の需要が高まっている現在では、訪問看護ステーションの需要が高く収支を上げやすい事業として注目されています。

看護師資格・経験を生かして、訪問看護ステーションを立ち上げた際の管理者の年収は400〜1,000万が目安です。
地域の需要や競合の有無で年収は大きく変動しますが、経営状況によっては1,000万以上を目指すことも可能です。

なお、訪問看護ステーションを立ち上げる際には、雇用する従業員の給料相場を把握しておかなければなりません。
ここでは訪問看護ステーションで働く従業員の年収も解説していきます。

看護師の平均年収

訪問看護ステーションで働く看護師の年収は、約543万5,412円が平均です。
厚生労働省の労務局が公表した令和4年度の概算調査「訪問看護の収差率等」を調査した結果によると、訪問看護ステーションで働く常勤換算職員1人当たり給与費は月額452,951円でした。

厚生労働省|訪問看護「訪問看護の収支差率等」

訪問看護ステーションを立ち上げる際には、看護師の平均年収を参考に募集をかける際の給与・待遇条件を検討しましょう。

准看護師の平均年収

訪問看護ステーションで働く従業員は、看護師だけでなく准看護師もいます。
准看護師の平均年収は462万8,556円です。

令和4年度の概算調査「訪問看護の収差率等」の調査結果によると、常勤換算職員1人当たり給与費は月額385,713円でした。
看護師と准看護師では、月額で約6,700円・年収で約80万円の差があります。

厚生労働省|訪問看護「訪問看護の収支差率等」

訪問看護ステーションを立ち上げる際に必要な開業資金

訪問看護ステーションの立ち上げにかかる費用は、800〜1,500万円と言われています。
この費用には、初期費用・約半年分の運転費用が含まれます。

もちろん、エリアや事業所の規模によっても異なりますが、それぞれの内訳は以下のとおり。

費用項目費用の目安
初期費用300〜600万円
運転費用(半年分)500〜900万円
合計(立ち上げ費用)800〜1,500万円

ここでは、初期費用・運転費用を細かく分類し、それぞれの内訳金額をシミュレーションします。
少しでも削れる部分がないか、ぜひチェックしてみてください。

初期費用

訪問看護ステーションの立ち上げ初期にかかる費用項目と目安金額は、以下のとおりです。

法人設立の費用約30万円
事務所の費用約50万円
設備・備品の費用約150万円
自動車等の費用約200万円
広告宣伝の費用約100万円
合計約530万円

法人設立の費用

訪問看護ステーションを立ち上げるには、法人格が必要です。
必要書類をまとめ、管轄の法務局で申請します。

なお、かかる費用は、株式会社・合同会社など、法人の種類で異なります。
仮に、税理士に依頼せず自分で申請した場合でも、約30万円が必要です。

この費用には、定款(ていかん)の収入印紙代や認証手数料、登録免許税などが含まれます。

事務所の費用

訪問看護ステーションを開業するには、以下の設備基準を満たした事務所を用意しなければなりません。

事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の事務室を設けるほか、指定訪問看護の提供に必要な設備及び備品等を備えなければならない。ただし、当該指定訪問看護ステーションの同一敷地内に他の事業所、施設等がある場合は、事業の運営を行うために必要な広さを有する専用の区画を設けることで足りるものとする。

引用:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|e-GOV

事業の性質上、事業所には個室・パーテーションで区切れる「相談スペース」や、衛生面を考慮した「独立洗面所」が必要です。
物件の規模や地域によって費用は異なりますが、敷金・礼金・管理費・前家賃などの初期費用で約50万円ほどかかります。

設備・備品の費用

前述した設備基準では、事業所以外にも備品等に関する規定がありました。
具体的な物品までは規定されていませんが、主に以下の備品が必要です。

  • パソコン
  • 携帯電話・タブレット
  • 電子機器・Wi-Fi・サーバーに関わる費用
  • デスクや椅子
  • 複合機
  • 書庫
  • 洗濯機
  • パーテンション
  • 訪問看護用のバック
  • 血圧計・聴診器などの携帯品
  • 制服

ここでは紹介しきれなかった細かな物も含めると、約150万円必要です。

自動車等の費用

訪問看護ステーションでは、利用者の自宅を訪問する移動手段が必要です。
都市部では、公共交通機関や自転車を使うケースもありますが、地方では自動車が一般的です。

今回のシミュレーションでは、事業用の自動車を購入したと仮定して約200万円を記載しています。

広告宣伝の費用

訪問看護ステーションを軌道に乗せるには、利用者を集客する広告宣伝費が必要です。
地域住民に周知するだけでなく、従業員を募集するための求人広告費用も発生します。

例えば、パンフレットやチラシ・看板を制作する場合は、約50万円ほどの費用が必要です。
また、ホームページを立ち上げる際は、約30万円ほどかかります。

こうした費用を合算すると、立ち上げ初期だけでも、約100万円の広告宣伝費が必要です。

運転費用

訪問看護ステーションを立ち上げる際には、開業後の運転費用も用意します。
運転費用の期間は、事業計画などによっても異なりますが、半年以上を想定するのが一般的です。

以下、6ヶ月分の運転費用の内訳をまとめています。

人件費約660万円
※以下、各1人
・管理者(看護師35万円/月)
・看護師30万円/月(常勤)
・准看護師25万円/月(常勤)
・准看護師20万円/月(非常勤)
家賃約90万円
水道光熱費約12万円
自動車の費用約24万円
ICT・通信費約24万円
諸経費約18万円
合計(6ヶ月分)約828万円

訪問看護ステーションを立ち上げても、すぐに利用者が集まるとは限りません。
万が一の事態も考えられるため、余裕をもって調達しておくと安心です。

人件費

訪問看護ステーションでは、以下の人員配置基準が定められています。

  • 管理者は常勤で1人配置(原則、保健師又は、看護師)
  • 看護師又は准看護師等が常勤換算方法で、2.5人以上
    上記の内、1人は常勤
  • 理学療法士等は適当数を配置(配置しないも可)

参照:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準|e-GOV

今回のシミュレーションでは、常勤の看護師が2名、准看護師は常勤と非常勤を1名ずつ雇用したと仮定しています。
6ヶ月分で約660万円です。

なお、人件費は事業所の規模や地域、従業員の能力などによって大きく変動します。
求人サイト等を確認し、いくらかかるのかを予測することが大切です。

家賃

訪問看護ステーションを立ち上げる際に借りた事務所の家賃を、運営資金として準備しなければなりません。
事業所の規模や立地によって家賃は異なりますが、月々15万円の家賃だと想定した場合、6ヶ月分の費用として約90万円必要です。

水道光熱費

訪問看護ステーションの運営資金には、事務所で使う水道光熱費が含まれます。
月々の水道光熱費が2万円の場合、6ヶ月分の運営資金として約12万円必要です。

自動車の費用

訪問看護を行う上で、従業員の移動手段である車の維持費用が発生します。
車の維持に必要な費用として、駐車場代やガソリン代がかかります。

駐車場代を月々1台1万円、ガソリン代を月々1台1万円と想定した場合、2台の車を維持するには6ヶ月間で約24万円の資金が必要です。

ICT・通信費

訪問看護ステーションを運営するには、ICT・通信費が発生します。
事務所の固定電話や従業員へ支給するスマートフォン・タブレットの通信費、各種請求に関する業務を行うための請求要ソフトの使用料が必要です。

ICTの利用料金を月々2万円、通信費が月々2万円の場合、6ヶ月間の運営資金で約24万円かかります。

諸経費

事務所で使用する消耗品や従業員との交際費など、事業を運営していく過程で諸経費が発生します。
月々の諸経費が3万円の場合、6ヶ月分で約18万円の運営資金が必要です。

従業員数が増えれば、消耗品を使うタイミングや食事会や親睦会など交際費を使う機会が増えるため、諸経費が増えます。
諸経費は事業を運営する上で必要な経費になるため、余裕を持って用意しておきましょう。

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗する主な理由

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗する要因として、次のような理由が挙げられます。

  • 人材を確保できていない
  • 稼働率が低い
  • コスト削減が不十分
  • 事業計画が不十分

それぞれの要因を確認して、事業を失敗させないための対策を実行しましょう。

人材を確保できていない

訪問看護ステーションの立ち上げで失敗する要因は、人材を確保できていないからです。
訪問看護ステーションを運営するには、看護師を常勤換算で2.5人以上を雇用し、1名は常勤で勤務しなければなりません。

しかし看護師は募集をかければすぐに見つかる職種でもなく、十分に人材を確保できない可能性があります。
実際に、厚生労働省が公表した「職業別労働市場関係指標」によると、看護師の有効求人倍率は2.47倍でした。

参照元|厚生労働省「職業別労働市場関係指標」

看護師1人につき2.47件の求人が用意されている計算であり、看護業界が深刻な人材不足に陥っていることがわかります。
人材採用では他の施設との競争を勝ち抜く必要があるため、職場環境や評価制度などを見直し自施設ならではの強みを見つけていきましょう。

稼働率が低い

訪問看護ステーションを立ち上げても、稼働率が低いと事業が失敗します。
介護報酬や診療報酬によって訪問看護1件あたりの報酬は異なりますが、8,000円程度が相場です。

訪問看護事業で収益を上げるには、1日あたりの訪問数を増やして、できるだけ多く報酬をもらう必要があります。
そのためにも、事務作業を効率化するなどして、本来着手すべき訪問介護へ注力できる環境を整備しましょう。

コスト削減が不十分

訪問看護ステーションを開業しても、コスト削減が不十分では失敗してしまいます。
事業を運営するためにパソコンやデスクなどの設備、アルコール消毒やマスクなどの衛生用品など消耗品を用意しなければなりません。

ただし、必要以上にコストをかけすぎると収支を圧迫してしまいます。
さらに従業員の残業時間が多いと、時間外手当がコストとしてかかり、人件費を多く支払わなければなりません。
前述のように、業務を効率化するなどの対策が必要です。

事業計画が不十分

訪問看護ステーションを立ち上げても廃業する要因として、事業計画の不十分さが関係しています。
開業資金や運転資金、地域の需要や利用者数の想定を適切にできていない場合、事業を開業しても運営資金が底をつく可能性があります。

エリアによって利用者数や需要は大きく異なるため、訪問看護ステーションを立ち上げる立地も重要です。
さらにエリアごとの平均給料や最低賃金・家賃相場は異なるため、開業する場所によっては人件費や事務所に関する費用で収支を圧迫してしまいます。

訪問看護ステーションの立ち上げを成功させるコツ

訪問看護ステーションを立ち上げる際には、失敗の要因を分析し対策を講じることが大切です。
具体的には、以下のポイントから対策を検討しましょう。

  • 従業員が働きやすい環境をつくる
  • ICTを導入して生産性を向上する

それぞれのコツを押さえて、訪問看護ステーションを黒字経営で事業拡大していきましょう。

従業員が働きやすい環境をつくる

人材不足が深刻な課題である訪問看護ステーションを運営するためには、従業員が働きやすい環境をつくる必要があります。
人材の採用や育成には多くのコストがかかるため、一度採用した従業員にはできるだけ長く働いてもらいたいものです。
従業員が働きやすい環境をつくることで、採用力の強化と定着率の向上が期待できます。

従業員が働きやすい環境をつくるためには、定期的なストレスチェックや福利厚生の充実・業務負担を軽減するための施策が必要です。
近隣の看護事業所に負けない魅力的な組織づくりを行うことが、訪問看護ステーション経営を成功へ導きます。

ICTを導入して生産性を向上する

訪問看護では、利用者や家族・医療関係者とコミュニケーションを取る機会が多く、連携に時間がかかってしまいます。
そこでおすすめなのが、看護・介護ソフトの導入です。

ICTツールを活用すれば、データの入力・管理・分析・共有を円滑化できます。

例えば、クラウド上で利用者情報や看護記録を確認できれば、従業員間の引き継ぎをスムーズに行い業務を効率的に進められます。
訪問看護ステーションの立ち上げ時に、ぜひICTツールの導入もご検討ください。

伊谷 俊宜氏
伊谷 俊宜氏

超高齢化社会を迎える我が国では、亡くなる方も年々増加し所謂「多死の時代」に突入しています。しかし、国は、病院のベッド数をこれ以上増やさない形で政策誘導しています。つまりは、現状約7割にのぼる病院での看取りをこれ以上増やさず、“看取りの場を病院から在宅(介護関連施設を含む)へ移行”させようとしているのです。
こうした流れの中でニーズも年々高まっているのが訪問看護です。一方、こうしたニーズの高まりに反して、訪問看護事業の収支差率は5.9%(令和4年度)と前年度と比較して1.3%減少しています。これは看護師の人件費高騰が主な要因です。訪問看護事業の人件費率は74.6%と非常に高い数値となっています。徹底的な効率化を図り、訪問スタッフ一人当たりの売上を向上させないとなかなか経営が厳しい業態なのです。

訪問看護ステーションの立ち上げにはワイズマンがおすすめ!

訪問看護ステーションを立ち上げるには、ワイズマンが提供する下記のサービスがおすすめです。

  • MeLL+(MeLL+community)
  • 訪問看護ステーション管理システムSP
  • すごろくHome

それぞれの機能を解説しますので、訪問看護ステーションを立ち上げる際に導入するべきか検討しましょう。

MeLL+(MeLL+community)

「MeLL+」は、法人内や地域での医療施設・介護事業所間の連携を実現する、医療・介護連携サービスです。
中でも地域と医療・介護のシームレスな連携をサポートする「MeLL+community」は、訪問看護ステーションの運営に効果的です。

「MeLL+community」は、関係者間のスケジュール調整をシステム上で行い、スムーズなオンライン会議を実現します。
さらに時間や場所を問わずに、スタッフ間の意見交換が可能になるため、業務の効率化が可能です。

訪問看護ステーション管理システムSP

「訪問看護ステーション管理システムSP」は、利用者管理や事務所での書類作成に活用できる看護シフトです。
特別指示書や難病認定などにより、医療保険に切り替えた利用者を判別できるように、対象の利用者をピンク色で判別できます。

また、利用実績表、訪問看護ステーション票、利用者一覧票などさまざまな集計帳票を出力する機能も備わっているため、訪問看護サービスにおける書類作成・管理業務に活用できます。

すぐろくHome

ワイズマンが提供する「すぐろくHome」を活用すれば、タブレットを使用して移動先や訪問先でもクラウド上でスムーズな情報共有を実現できします。

スキマ時間や移動時間に、訪問予定をチェックしたり、利用者の容態を記入したりできます。

訪問看護ステーションを立ち上げて年収アップするために開業準備を整えよう!

訪問看護ステーションを立ち上げた際の年収目安は400〜1,000万程度です。
事業を発展させ稼働率を上げれば、年収1,000万円超えも夢ではありません。

ただし、訪問看護ステーションの立ち上げには、相応の費用がかかります。
独立をお考えの方は、十分に準備し開業に取り組んでみてください。

監修:伊谷 俊宜

介護経営コンサルタント

千葉県佐倉市出身。大学卒業後、教育サービス業界に入社したが、障がい者との交流を機 に「高齢や障がいを理由に、不当な差別を受けることのない社会を作りたい」と、介護事業者の門をたたいた。これまで、数々の特別養護老人ホーム、 グループホーム、デイサービスの立ち上げ、運営に参画。現在は、“現場第一主義!”を旗印とし、高齢者住宅、デイサービスを中心に「人気の施 設づくり」を積極的にサポートしている。

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