【医療業界動向コラム】第160回 急性期一般入院料1の施設基準に救急搬送受入実績等の追加を検討へ。急性期入院医療の論点を整理

2025.10.21

令和7年10月8日、第619回中央社会保険医療協議会 総会が開催されている。令和8年度診療報酬改定に向けて、入院医療に関する2回目となる議論が行われている。あわせて、診療報酬への消費税補填率について、過去のデータで間違いがあったことなどが報告されている(全体で98.9%)。そのため、令和6年度診療報酬改定において基本診療料への消費税増税分の評価上乗せをしていなかった。令和8年度診療報酬改定での補填対応に注目が集まる。

DPC標準病院群にも救急搬送受入件数を踏まえた基礎係数の新たな区分も検討か?

 これまでの入院・外来医療の調査・評価分科会で検討の方針が示されているように、新たな地域医療構想における医療機関機能の新たな区分と診療報酬上の評価の整合性を図るための整理が進んでいるところだ。

 そこで診療報酬では救急搬送受入件数と全身麻酔手術件数の実績で基準を設け、手厚い医師の配置等を行っている急性期一般入院料1の新たな施設基準を設けて、評価を手厚くしていく方向になる見通しだ(図1、図2)。

図1 急性期一般入院料算定病院における救急搬送受入件数別施設数(クリックして拡大表示)

図2 全身麻酔手術件数別の病院数(クリックして拡大表示)

 今回の議論では、DPCの標準病院群においても救急搬送受入件数等によって基礎係数で新たに区分を設けることが検討される見通しだ。令和6年度診療報酬改定ではデータ数が90件/月以下の場合の減額される区分が基礎係数に設けられたが、その対応と似たものとなると考えられる。データ数が90件/月以下の場合はDPCからの強制退出となるが、今回の新たな区分を設ける可能性が強制退出にまでつながるかまではわからないが、注意して見ておく必要があるだろう。DPCの要件をより高度急性期に向けて見直し、要件を満たすことが困難な急性期病院の中から地域包括医療病棟を創り出していくというストーリーが描かれているように見える。

医療機関機能と診療報酬の整合性を関連図で理解する

 入院・外来医療等の調査・評価分科会でも議論された内科症例の評価を底上げすることを目的とした重症度、医療・看護必要度の見直しについて、今回の中医協で議論されている。A・C項目の新たな追加項目などが注目されるところだ。また、B項目の測定については看護業務の負担軽減の観点から、手術の有無、要介護認定の有無など患者状態に合わせて測定頻度を見直すことなどが検討されそうだ。

 一方、拠点的な急性期機能については、入院・外来医療調査・評価分科会の議論でもあったように、急性期充実体制加算と総合入院体制加算を一本化すること(図3)人口20万人以下の地域や医療資源が限られた地域では総合入院体制加算3をベースにして救急搬送受入件数の地域シェア率やへき地診療所の支援機能を考慮した拠点機能の評価を設けることで議論が進みそうだ。

図3 総合入院体制加算・急性期充実体制加算届出病院の所属二次医療圏と病院属性(クリックして拡大表示)

 新たな地域医療構想との整合性を図るべく、入院医療の考え方や点数の配分も大きく変わることが考えられ、思っていた以上に大きな診療報酬改定となりそうだ。まだ議論は始まったばかりだが、急性期入院医療について、新たな地域医療構想と診療報酬の関係を関連図として整理してみた(図4、図5)。

図4 拠点的な急性期機能に関する診療報酬改定の主な論点(クリックして拡大表示)

図5 一般的な急性期機能に関する診療報酬改定の主な論点(クリックして拡大表示)

 救急搬送の受入件数など、病棟単位ではなく、病院としてしっかりと実績を積み上げることが重要になってくることとなる。地域との対話(地域医療構想調整会議や平時の連携)を通じて自院が果たすべき役割を見つけること、基幹病院(拠点的機能)が近隣医療機関の支援をする仕組みを構築することが新たな地域医療構想と診療報酬改定への合理的な対応となること、包括期入院においては下り搬送と在宅・施設からの積極的な受入対応をするための地域医療連携がますます必要となるだろう。

 

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