訪問看護の単位数｜加算・減算の単位数や請求の際の注意点などを解説

訪問看護は、 利用者の状態やサービス内容によって 単位数が細かく定められています。
適切なサービスを提供して収益を得るには、 単位の仕組みを理解することが不可欠です。

訪問看護は提供する場所によって単位数が変わるうえに、加算・減算も踏まえて計算する必要があります。

本記事では、 訪問看護の単位数について、 基本的な考え方から、単位数を算定する際の注意点などについて解説します。
単位数を正確に把握する際の参考にしてください。

訪問看護とは

訪問看護とは、病気や障がいを持った利用者が安心して療養生活を送れるように、看護師や理学療法士などが自宅に訪問し、看護ケアやリハビリテーションを提供するサービスです。
医師の指示に基づき、利用者の状態に応じた適切な医療を提供します。

ほかの介護サービスと異なり、訪問看護は性質上、医療サービスを提供する割合が高い点が特徴です。
そのため、介護保険だけでなく、医療保険も踏まえて請求を実施する必要があります。

訪問看護における単位とは

訪問看護における「単位」とは、サービスの種類や時間に応じて定められた、介護報酬または診療報酬を計算するための基準となる数値です。
訪問看護サービスを提供する事業者は、提供したサービス内容と時間に応じて単位数を算出し、その単位数に地域ごとの単価を乗じることで、請求額を計算します。

単位の理解は、適切なサービス提供と報酬請求に不可欠です。
訪問看護の単位は、サービスの種類・時間・訪問者の職種・加算や減算の適用などさまざまな要素によって細かく定められています。

主な要素は以下のとおりです。

サービスの種類	基本訪問看護費や精神訪問看護基本療養費など、サービスの種類によって単位数が異なります。
訪問時間	訪問時間に応じて単位数が変動します。例えば、20分未満・30分未満・30分以上1時間未満など、時間区分ごとに単位数が定められています。
訪問者の職種	看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など、訪問者の職種によって単位数が異なる場合があります。
加算・減算	初回加算・緊急時訪問看護加算・複数名訪問加算などの加算や、高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算などの減算が適用される場合、単位数が変動します。

訪問看護の単位を理解することは、利用者が適切なサービスを受け、事業者が適正な報酬を得るために非常に重要です。

訪問看護の単位数

本章では、以下のケースの単位数について解説します。

• 訪問看護ステーション
• 病院・診療所
• 精神科訪問看護

それぞれのケースの違いを正確に把握し、単位数の計算に役立てましょう。

訪問看護ステーションの単位数

訪問看護ステーションから提供される訪問看護の単位数は、訪問時間によって異なります。
2024年度以降の介護報酬改定後の単位数は以下のとおりです。

訪問時間	単位数
20分未満（週に1回以上、20分以上の保健師または看護師による訪問を行った場合算定可能）	314単位
30分未満	471単位
30分以上1時間未満	823単位
1時間以上1時間30分未満	1128単位
1時間30分以上の訪問看護を行う場合	1428単位
理学療法士、作業療法士または言語聴覚士の場合（1日に2回を超えて実施する場合は90/100）	294単位
定期巡回・随時対応訪問介護看護事業所と連携する場合	1月につき2,961単位

※上記は指定訪問看護ステーションの場合の単位数です。
※准看護師による訪問が1回でもある場合、上記の単位数に0.98を乗じた単位数となります。

病院・診療所による訪問看護の単位数

病院または診療所から提供される訪問看護の単位数も、訪問時間によって異なります。
2024年度以降の介護報酬改定後の単位数は以下のとおりです。

訪問時間	単位数
20分未満（週に1回以上、20分以上の保健師または看護師による訪問を行った場合算定可能）	313単位
30分未満	470単位
30分以上1時間未満	821単位
1時間以上1時間30分未満	1,125単位
1時間30分以上の訪問看護を行う場合	1,425単位
理学療法士、作業療法士または言語聴覚士の場合（1日に2回を超えて実施する場合は90/100）	293単位

※上記は病院または診療所の場合の単位数です。
※准看護師による訪問が1回でもある場合、上記の単位数に0.98を乗じた単位数となります。

精神科訪問看護の単位数

精神科訪問看護の単位数は、訪問看護ステーションまたは病院・診療所から提供されるかによって異なります。
さらに、訪問時間や提供する看護師の職種によっても細かく定められています。

単位数の詳細は以下のとおりです。

参照：精神科訪問看護の報酬体系見直しについて｜厚生労働省

なお、精神訪問看護は提供するサービスや単位数だけでなく、制度上でもさまざまな違いがあります。
加算・減算の算定方法も異なるため、単位数を計算する際は注意しましょう。

訪問看護の加算・減算の単位数

訪問看護サービスでは、利用者の状態やサービス内容に応じて、基本の単位数に加算、または減算が適用されます。

加算・減算を正しく理解し算定することは、適切な介護報酬を得るだけでなく、収益を維持するうえでも重要です。
本章では、訪問看護の加算と減算について、それぞれ詳しく解説していきます。

訪問看護の加算の単位数

訪問看護の加算は、サービスの質を向上させたり、特別な状況に対応した場合に、基本の単位数に上乗せされるものです。
加算の種類は多岐にわたり、算定要件もそれぞれ異なります。

本章では、代表的な加算の種類と単位数、算定要件について解説します。
訪問看護で算定可能な加算の単位数は以下のとおりです。

加算の種類	単位数	算定要件
初回加算（Ⅰ）	1月につき＋350単位	新規に訪問看護計画を作成した場合に算定
看護体制強化加算（Ⅰ）	1月につき＋550単位	24時間対応体制加算を届け出ている事業所が、質の高い看護体制を確保している場合に算定
複数名訪問加算（Ⅰ）30分未満の場合	＋254単位	複数名で訪問看護を行った場合に算定
複数名訪問加算（Ⅰ）30分以上の場合	＋402単位	複数名で訪問看護を行った場合に算定
複数名訪問加算（Ⅱ）30分未満の場合	201単位/1回	複数名で訪問看護を行った場合に算定
複数名訪問加算（Ⅱ）30分以上の場合	317単位/1回	複数名で訪問看護を行った場合に算定
遠隔死亡診断補助加算	＋150単位	遠隔での死亡診断を補助した場合に算定
定期巡回・随時対応訪問介護看護事業所と連携する場合	1月につき2,954単位	定期巡回・随時対応訪問介護看護事業所と連携して訪問看護を提供した場合に算定

上記以外にも、さまざまな加算が存在します。
加算の算定要件は複雑な場合もあるため、厚生労働省の告示や通知、関連情報を確認し、正確に理解することが重要です。

訪問看護の減算の単位数

訪問看護の減算は、サービスの質が低下した場合や、法令で定められた基準を満たしていない場合に、基本の単位数から差し引かれるものです。
減算の種類も複数あり、それぞれ適用される状況が異なります。

本章では代表的な減算の種類と単位数、適用される状況について解説します。
訪問看護の減算の単位数は以下のとおりです。

減算の種類	単位数	適用される状況
理学療法士等の訪問回数が超過している場合	-8単位／回	理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問が、一定回数を超えた場合に適用
高齢者虐待防止措置未実施減算	-1/100	高齢者虐待防止のための措置が講じられていない場合に適用
業務継続計画未策定減算	-1/100	業務継続計画（BCP）が策定されていない場合に適用

減算は、利用者に適切なサービスを提供するために設けられています。

一方で、減算は訪問看護ステーションの収益に影響を与えるため、算定要件に該当しないように注意する必要があります。
減算の対象とならないよう、法令や基準を遵守し、質の高いサービス提供を心がけることが重要です。

訪問看護の単位数を算定する際の注意点

訪問看護の単位数を算定する際には、以下のような注意点があります。

• 単位数は正確に計算する
• 介護報酬の請求作業を電子化する

正確な単位数算定は、適切な介護報酬の請求につながり、訪問看護サービスの安定的な運営を支えます。
注意点を意識し、正確な算定を実践しましょう。

単位数は正確に計算する

訪問看護の単位数は、サービス内容・時間・利用者の状態・地域区分など、さまざまな要素によって細かく定められています。
これらの要素を正確に把握し、最新の介護報酬算定基準に基づいて計算する必要があります。

単位数の計算ミスは、過剰請求や請求漏れにつながるだけでなく、監査での指摘を受ける可能性もあるため、注意が必要です。

訪問看護の料金は、基本単位に加算単位を足し、減算単位を引いたものに、地域区分ごとの単価を掛けて計算されます。
計算式は以下のとおりです。

訪問看護の料金 = （基本単位 + 加算単位 – 減算単位）× 地域区分単価

地域区分単価は、地域によって異なります。
例えば6級地では1単位あたり10.42円と定められています。

単位数計算を正確に行うためには、以下の点に注意しましょう。

最新の介護報酬算定基準を確認する	介護報酬は定期的に改定されるため、常に最新の情報を把握しておく必要があります。厚生労働省のホームページや介護保険関連の情報を参照し、変更点を確認しましょう。
サービスコードを正しく選択する	サービス内容に応じて、適切なサービスコードを選択する必要があります。サービスコード表を参照し、誤りのないように選択しましょう。
加算・減算の要件を確認する	加算・減算は、算定要件が細かく定められています。要件を満たしているかどうかを慎重に確認し、必要な書類を準備しましょう。
記録を正確に残す	訪問看護の実施記録、利用者の状態、サービス内容などを詳細に記録し、算定根拠を明確にしておくことが重要です。

単位数計算に不安がある場合は、介護報酬請求ソフトの利用や、専門家への相談を検討しましょう。
正確な単位数算定は、訪問看護サービスの適正な運営に不可欠です。

不正やミスを防止する

訪問看護の単位数を算定するうえで、不正やミスは必ず防止しましょう。
不正やミスを防ぐなら、算定に関わるすべてのスタッフが、最新の介護報酬改定の内容を理解し、正確に適用することが不可欠です。

加えて、単位数や加算の算定後、請求を行う前に、必ず複数人でダブルチェックを行いましょう。
目視による確認だけでなく、請求ソフトなどを活用して、自動的にエラーチェックを行うことも効果的です。

また、訪問看護記録書・指示書・計画書など、関連するすべての記録において、記載内容に矛盾がないように注意する必要があります。

記録に不備があると、監査の際に指摘を受けるだけでなく、報酬の返還請求につながる可能性があります。
不正やミスが重なると、報酬の返還によって損失が発生するだけでなく、訪問看護ステーションへの信頼を損なうリスクを高めます。

行政や利用者の信頼を守るためにも、不正やミスの防止は徹底しましょう。

介護報酬の請求作業を電子化する

正確な単位数の算定を目指すなら、介護報酬の請求作業の電子化を検討しましょう。

介護報酬の請求作業は、煩雑で時間のかかる作業です。
手作業で行う場合、計算ミスや入力ミスが発生しやすく、請求漏れや遅延につながる可能性もあります。

スムーズに単位数を計算するなら、一連の作業を電子化すれば、業務効率を大幅に改善し、正確性を高められます。

介護報酬請求を電子化するメリットは以下のとおりです。

業務効率の向上	請求データの作成・チェック・送信などが自動化されるため、手作業による時間と手間を大幅に削減できます。
正確性の向上	システムによる自動計算やチェック機能により、計算ミスや入力ミスを防止できます。
請求漏れの防止	請求データを一元管理することで、請求漏れを防ぎ、確実な収入確保につなげられます。
情報管理の強化	請求データを電子的に保存することで、紛失や破損のリスクを軽減し、安全な情報管理を実現できます。
ペーパーレス化	請求書や明細書などの書類を電子化することで、印刷コストや保管スペースを削減できます。

介護報酬請求を電子化するためには、介護報酬請求ソフトを導入する必要があります。
近年はさまざまなメーカーから多様なソフトが提供されており、機能や価格も異なります。

自施設の規模や業務内容に合わせて、最適なソフトを選びましょう。
導入にあたっては、操作研修やサポート体制が充実しているかどうかも確認することが重要です。

また、介護報酬請求を電子化するためには、インターネット環境やパソコンなどの設備も必要です。
設備投資も考慮に入れ、計画的に導入を進めましょう。

介護報酬請求の電子化は、訪問看護ステーションの業務効率化と経営改善に大きく貢献します。
まだ導入していない場合は、ぜひ検討してみてください。

単位数を正確に把握して請求するならワイズマンの介護ソフトを活用しよう

訪問看護の単位数を正確に把握したうえで請求書を作成するなら、ぜひ弊社ワイズマンの介護ソフトをご活用ください。

ワイズマンの訪問看護ステーション管理システムSPは、訪問看護ステーションに特化した介護ソフトです。
利用者の状況や利用したサービスを記録し、わかりやすく集計してくれるため、単位数の把握に必要な情報をスムーズに確認できます。

また、書類作成や情報の分類も簡単にできるため、請求作業時のミスや、煩雑な作業の削減も可能です。
正確に単位数を算定し、ミスを防止するうえでも、ワイズマンの訪問看護ステーション管理システムSPは非常に有用です。

もちろん、訪問看護ステーションを管理する際に役立つ機能も備わっています。
適切に運用すれば、訪問看護ステーションの業務の効率化や、コストの抑制を実現できます。

訪問看護の適切な単位数算定で質の高いサービス提供を

訪問看護の適切な単位数算定は、質の高いサービス提供と訪問看護ステーションの経営安定化に不可欠です。
本記事で解説した内容を参考に、正確な単位数算定を行い、利用者にとって最適な訪問看護サービスを提供しましょう。

より詳細な情報や具体的な事例については、厚生労働省や各都道府県の関連機関が提供する情報を参照してください。
また、訪問看護に関する専門家への相談も効果的です。