訪問看護ステーションの管理者とは?仕事内容から年収まで徹底解説

2025.06.15

「訪問看護ステーションの管理者は、どのような仕事をしているのだろうか」と疑問に感じる方は多いでしょう。

本記事では、訪問看護ステーションにおける管理者の役割や一日の流れを紹介します。年収アップの方法や管理者になるための具体的なステップも紹介しているので、併せて参考にしてください。

訪問看護ステーションの管理者とは

訪問看護ステーションの管理者は、ステーション全体の運営を統括する重要な役割を担っています。利用者が住み慣れた環境で安心して過ごせるよう、質の高い在宅看護ケアサービスを提供するためにさまざまな業務をこなしています。

役割や業務内容

訪問看護ステーションの管理者の役割は多岐にわたります。主な業務内容は以下のとおりです。

役割内容
ステーションの運営・管理予算管理や人員配置、設備管理など、ステーション全体の運営を円滑に進めるための業務を行う
スタッフの管理・育成スタッフの採用や教育、評価を行い、チーム全体のスキルアップを図る。また、スタッフが働きやすい環境を整備することも重要な役割である
利用者の獲得・管理新規利用者の獲得や既存の利用者の情報管理、サービス内容の調整などを行う
関係機関との連携医療機関や介護施設、行政機関など関係機関との連携を密に行い、利用者にとって最適なサービスを提供できるように努める
品質管理訪問看護ステーション内の品質管理体制を整備し、改善を行う。利用者が安心して利用できる環境を整える
法令遵守法令や規則に基づいた業務遂行が求められる

上記の業務を進めつつ管理者として組織を率いていくには、スタッフとの円滑なコミュニケーションが不可欠です。

一日の流れ

訪問看護ステーションの管理者の一日は、多忙を極めます。具体的な一日の流れは以下のとおりです。

時間業務内容
午前・朝礼:スタッフへの指示、情報共有
・訪問スケジュールの確認、調整
・利用者からの相談対応
・関係機関への連絡、調整
午後・会議:スタッフとの情報共有、課題解決
・書類作成:報告書、計画書など
・スタッフの教育、研修
・新規利用者の対応
夕方・一日の業務報告、確認
・明日の準備
・必要に応じて、緊急訪問対応

上記はあくまで一例であり、実際には突発的な対応や緊急の訪問などが入ることもあります。つまり、管理者には臨機応変に対応できる能力が不可欠です。

必要なスキル・資格

訪問看護ステーションの管理者になるためには、以下のスキル・資格が求められます。

資格・スキル詳細
看護師または保健師の資格訪問看護を行うための基本的な資格
臨床経験3~5年以上の臨床経験が望ましい
人材管理能力スタッフの管理や育成、評価を行うための能力
コミュニケーション能力スタッフや利用者、関係機関と円滑なコミュニケーションを図るための能力
問題解決能力予期せぬ問題が発生した場合に、冷静に解決策を見つけ出す能力
パソコンスキル電子カルテの入力や書類作成など、基本的なパソコンスキル

基本的に、看護師もしくは保健師の資格があれば管理者を目指すことは可能です。ただし、訪問看護を行うための知識や技能も必須であるため、訪問看護業務の経験は不可欠と言えるでしょう。

仕事のやりがい

訪問看護ステーションの管理者の仕事は大変ですが、その分やりがいも大きいです。具体的には、以下のような点でやりがいを感じられます。

 内容
利用者の生活を支える利用者が住み慣れた家で、安心して生活できるようサポートすることにやりがいを感じられる
スタッフの成長をサポートするスタッフのスキルアップを支援し、チームとして成長していく過程を見守ることに喜びを感じられる
地域医療に貢献する地域社会のニーズに応え、質の高い医療サービスを提供することで地域医療に貢献できる

仕事の厳しさ

訪問看護ステーションの管理者の仕事は責任が重く、精神的な負担も大きいです。具体的には、以下のような点に責任や負担を感じるでしょう。

デメリット詳細
責任の重さステーション全体の運営やスタッフの管理、利用者の安全など、多くの責任を負う
多忙な業務業務範囲が広く、時間に追われることがある
緊急対応夜間や休日でも、緊急の連絡に対応しなければいけない場合がある
人間関係の難しさスタッフ間や利用者との関係など、さまざまな人間関係に気を配る必要がある

しかし、上記の厳しさを乗り越え、利用者やスタッフの笑顔を見ることができたとき、大きな達成感を得られるでしょう。

訪問看護ステーション管理者の年収事情

訪問看護ステーションの管理者として働くうえで、気になるのが年収事情です。ここでは、訪問看護管理者の平均年収と年収アップのための具体的な方法について解説します。

訪問看護管理者の平均年収

訪問看護ステーションの管理者の年収は、正式には公表されていません。しかし、求人情報などを参考にすると、年収500~600万円前後が目安となるでしょう。

ただし、これはあくまで平均的な数字であり、ステーションの規模や業績、地域によって大きく異なります。管理職では年収600~750万円も目指せる場合もあり、ステーションの規模や業績によっては、さらに高額の収入を得ているケースも見られます。

年収アップのための3つの方法

訪問看護ステーションの管理者として年収を上げるためには、以下の3つの方法が挙げられます。

資格を取得する

認定看護師や専門看護師などの資格を取得すると専門知識やスキルを証明でき、給与アップにつながる可能性があります。訪問看護に関連する資格(ケアマネージャー、呼吸療法認定士など)も業務の幅を広げ、評価を高める要因です。

資格取得支援制度を設けている訪問看護ステーションもあるため、さまざまな制度を積極的に活用しましょう。

経験を積む

管理者としての経験年数を重ねるとマネジメント能力や問題解決能力が向上し、より高度な業務を任されます。経験豊富な管理者として評価されると、給与アップ交渉も有利に進められるでしょう。

また、経験を積む中で、他のステーションでは得られない独自のノウハウや知識を習得することも可能です。

役職を上げる

訪問看護ステーション内でのキャリアアップを目指すことも、年収アップの有効な手段です。例えば、複数のステーションを統括するエリアマネージャーや法人全体の運営に関わる幹部などの役職に就くと、大幅な年収アップが期待できます。

そのためには日々の業務で成果を上げ、上司や同僚からの信頼を得ることが重要です。また、キャリアアップに必要なスキルや知識を積極的に学び、自己研さんに励むことも大切です。

訪問看護ステーション管理者になる方法

訪問看護ステーションの管理者になるには必要な資格取得や経験の積み上げ、役立つ研修の受講など、いくつかのステップを踏む必要があります。ここでは、管理者になるための具体的な方法を解説します。

必要な資格

訪問看護ステーションの管理者になるためには、以下のいずれかの資格が必要です。

  • 看護師
  • 保健師

なお、医師や准看護師、理学療法士などの資格を取得しても、管理者として勤務することはできません。健康保険法の指定訪問看護ステーションであれば、助産師の資格を活かせます。

必要な経験

資格に加えて、訪問看護ステーションの管理者には実務経験が求められます。具体的には、以下の経験が役立ちます。

経験詳細
訪問看護の実務経験訪問看護の現場で実際に利用者のケアを行った経験は、管理者として現場を理解し、適切な指示や指導を行ううえで非常に重要である
管理職としての経験チームのマネジメントやステーション全体の運営に関わった経験は、管理者の業務をスムーズに行ううえで役立つ
リーダーシップ経験チームをまとめ、目標達成に向けて導くリーダーシップ経験は、管理者として不可欠なスキルである

訪問看護ステーションによっては管理者候補として、まずは現場での経験を積ませるケースもあります。経験が浅い場合は、積極的に研修に参加したり、先輩管理者の指導を受けたりすることでスキルアップを目指せます。

役立つ研修

訪問看護ステーションの管理者として活躍するためには、以下のような研修が役立ちます。

研修名内容
管理者研修訪問看護ステーションの運営や管理に関する知識、法律や制度に関する知識、労務管理、リスクマネジメントなどを体系的に学べる
マネジメント研修チームのマネジメントスキルやリーダーシップスキル、コミュニケーションスキルなどを向上できる
医療・介護に関する研修最新の医療・介護に関する知識や技術を習得し、質の高い訪問看護を提供するための知識を深められる

上記の研修は、都道府県看護協会や訪問看護ステーション協議会、民間企業などが開催しています。積極的に参加し、知識やスキルを向上させましょう。

管理者になるまでのキャリアステップ例

訪問看護ステーションの管理者になるまでのキャリアステップは、人によってさまざまです。一般的な例は以下のとおりです。

  1. 看護師もしくは保健師の資格を取得する
  2. 病院やクリニックなどで臨床経験を積む
  3. 訪問看護ステーションに就職し、訪問看護の実務経験を積む
  4. 主任やリーダーなどの役職に就き、マネジメント経験を積む
  5. 管理者研修などを受講し、管理に関する知識やスキルを習得する
  6. 訪問看護ステーションの管理者として就任する

上記はあくまで一例であり、経験やスキルによってはより短い期間で管理者になることも可能です。

訪問看護管理者のやりがいと厳しさ

訪問看護ステーションの管理者は利用者だけでなく、スタッフや地域全体を支える重要な役割を担っています。ここでは、管理者のやりがいと厳しさについて紹介します。

管理者が一般的に感じるやりがい

多岐にわたる業務をこなす管理者の仕事ですが、その分、やりがいも大きいようです。ここでは、特に多く挙げられる3つのやりがいについて解説します。

利用者の笑顔

訪問看護の現場で、利用者の笑顔を見ることが何よりのやりがいという声が多く聞かれます。

利用者の笑顔は、日々の業務のモチベーションにつながり、困難を乗り越える原動力です。利用者とその家族との信頼関係を築き、地域医療に貢献するという大きなやりがいに満ちています。

チームの成長

訪問看護ステーションは、多職種連携が不可欠なチームです。管理者はそのチームをまとめ、成長を促す役割を担います。したがってチームの成長は、ステーション全体の質の向上につながり、より多くの利用者へ貢献できる力となり得ます。その結果、管理者はやりがいを感じられるようになるでしょう。

地域貢献

訪問看護ステーションは地域に根ざした医療を提供することで、地域全体の健康と福祉に貢献しています。

つまり管理者は、地域全体の健康と福祉に貢献しているという使命感と自身の成長を感じられる仕事であり、そのやりがいは大きいでしょう。

管理者が一般的に感じる厳しさ

やりがいが大きい一方で、管理者にはさまざまな苦労や困難も伴います。ここでは、管理者が感じやすい3つの厳しさについて紹介します。

責任の重圧

管理者はステーション全体の運営や管理、スタッフの指導といった幅広い業務を担うため、責任の重圧を感じることが多いです。訪問看護の管理者は責任感の強い看護師が選ばれることが多く、責任感が強いがゆえに自身で抱えすぎてしまう傾向にあります。

多岐にわたる業務

管理者の業務は多岐にわたり、日々の業務に追われることも少なくありません。管理者になった場合は、他のスタッフに分担できる業務は任せて、指揮監督として見守るのも一つです。

スタッフのマネジメント

さまざまな価値観を持つスタッフをまとめ、育成していくことも管理者の重要な役割です。その結果、チーム全体をまとめるのに苦労し、日々の業務運営に厳しさを感じることもあるでしょう。

訪問看護ステーション管理者を辞めたいと感じる原因と解決策

訪問看護ステーションの管理者として働く中で「辞めたい」と感じる瞬間は誰にでもあるかもしれません。責任の重さや多岐にわたる業務、スタッフのマネジメントといった要因が重なり、負担を感じてしまうこともあるでしょう。

ここでは、管理者が辞めたいと感じる主な原因とその解決策について具体的に解説します。

辞めたいと感じる主な原因

訪問看護ステーションの管理者が「辞めたい」と感じる原因は、個人によって異なります。ここでは、主な例を紹介します。

原因詳細
責任の重圧ステーション全体の運営や利用者の安全、スタッフの管理など、管理者は非常に重い責任を担っている。常に気を張っている状態が続き、精神的に疲弊してしまうことがある
多岐にわたる業務管理者の業務は多岐にわたり、事務作業や人材育成、営業活動、緊急時の対応など、こなすべき仕事が山積みである。業務量が多く、時間内に終わらないこともある
スタッフのマネジメント訪問看護ステーションでは、さまざまな個性を持つスタッフをまとめ、チームとして機能させる必要がある。人間関係のトラブルやスキル不足のスタッフへの指導など、マネジメント業務は精神的な負担が大きい
オンコール体制の負担多くの訪問看護ステーションでは24時間体制を導入しており、管理者がオンコール対応を担うことがある。夜間や休日でも緊急の連絡に対応する必要があり、心身ともに休まらない状況が続くことがある
評価制度への不満自身の頑張りが正当に評価されていないと感じる場合、モチベーションが低下して「辞めたい」という気持ちにつながることがある

辞めたいと感じたときの解決策

「辞めたい」と感じたとしても、すぐに退職を決断するのではなく、まずは以下の解決策を試してみることがおすすめです。

解決策詳細
上司や同僚に相談するまずは、1人で抱え込まずに上司や信頼できる同僚に相談する。客観的な意見を聞くことで、解決の糸口が見つかるかもしれない
業務の効率化を図る業務内容を見直し、無駄な作業を省いたり、ツールを導入したりして業務の効率化を目指す
役割分担を見直すスタッフのスキルや経験に応じて役割分担を見直すことで、管理者の負担を軽減できる
休暇を取得する心身のリフレッシュのために、積極的に休暇を取得する。休息をとると新たな気持ちで仕事に取り組める
研修に参加するマネジメントスキルや業務に関する知識を深められる研修に参加すると、自信を持って仕事に取り組める
転職を検討するどうしても解決できない場合は、転職も視野に入れる。より自分に合った職場環境を見つけることで、再びやりがいを持って働ける可能性がある

訪問看護ステーションの管理者を「辞めたい」と感じた場合は原因を特定し、それに合った解決策を試してみることが大切です。

斉藤 圭一氏
斉藤 圭一氏

訪問看護ステーションの管理者には、医療知識や看護経験に加えて、チームのマネジメント能力や多職種・地域との連携力が求められます。スタッフの育成や利用者対応、行政とのやり取りまで幅広く担う役割は決して簡単ではありませんが、そのぶんやりがいも大きく、地域を支える重要な存在です。

私がケアマネジャーの立場から管理者と日々関わる中で感じるのは、現場を理解しながらも俯瞰的に事業を支える姿勢の大切さです。管理者は一人で全てを抱え込まず、信頼できる仲間と協力しながら業務を進めることが、無理なく継続していくための鍵になります。

また、制度やルールの変化にも柔軟に対応し、常に学び続ける姿勢も必要です。管理者を務めることに不安を感じる方もいると思いますが、「誰のために、何のために」という原点を大切に、仲間と支え合いながら歩んでいっていただく事が必要だと思われます。

訪問看護ステーションの管理者として活躍しよう

訪問看護ステーションの管理者は、利用者が住み慣れた地域で安心して生活できるよう、質の高い在宅看護ケアサービスを提供する重要な役割を担っています。責任は重いですが、その分やりがいも大きく、地域社会に貢献できる魅力的な仕事と言えるでしょう。

今回紹介した内容を参考に、ぜひ訪問看護ステーションの管理者を目指してみてください。

監修:斉藤 圭一

主任介護支援専門員、MBA(経営学修士)

神奈川県藤沢市出身。1988年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、第一生命保険相互会社(現・第一生命保険株式会社)に入社。その後、1999年に在宅介護業界大手の株式会社やさしい手へ転職。2007年には立教大学大学院(MBA)を卒業。 以降、高齢者や障がい者向けのさまざまなサービスの立ち上げや運営に携わる。具体的には、訪問介護・居宅介護支援・通所介護・訪問入浴などの在宅サービスや、有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅といった居住系サービス、さらには障がい者向けの生活介護・居宅介護・入所施設の運営を手がける。 また、本社事業部長、有料老人ホーム支配人、介護事業本部長、障害サービス事業部長、経営企画部長など、経営やマネジメントの要職を歴任。現在は、株式会社スターフィッシュを起業し、介護・福祉分野の専門家として活動する傍ら、雑誌や書籍の執筆、講演会なども多数行っている。

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